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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.05.27
thinnda-rianotane.jpg藤村あゆみ「ティンダーリアの種」(1)


アリアの歌は アリアの言葉
森と繋がるための歌
アリアは歌を アリアと呼び
アリアは命を 歌と呼ぶ



■「アリア」という恐ろしい魔物が棲む森から、人々の生活に必要な資源を採取する人間たち。採取は危険を伴うとされるため、選ばれた者だけが隊員として任務に向かう。そんな採取隊の新人隊員・ソルト。ある日仲間とはぐれたソルトは、森の奥で不思議な歌声を聞く。吸い寄せられるように向かっていくと、そこには一人の少女が。彼女は人間ではなく、アリアだという。噂とは似ても似つかない可愛らしく優しげな彼女に、すっかり惹き込まれたソルトは、そのアリアをパセリと名付け、仕事の旅に抜け出して、会うようになっていった…

 霜月はるかさんという方のボーカルアルバムが元になっているようです。その際ジャケットを手がけたのが、藤村あゆみさんだそうで、そのままコミカライズも担当されたみたいですね。お話の舞台は、アリアという妖精の一種(?)と人間が住む世界で、アリアは森を護るため生き、人間は生きるために森で食料を採取しながら暮らしています。アリアは森を荒らす人間の事を良く思っておらず、また人間も、過去に森で隊員が亡くなるという事故が起きて以来、アリアのことを憎んでおり、お互いに敵対視しているという状態にあります。そんな中で、偶然アリアの少女・パセリと出会った青年・ソルト。やがて二人は度々待ち合わせ、会話を楽しむように。そして、人間とアリアが共存できないかどうか、道を探りはじめます。


ティンダーリアの種
この想いは、果たして叶うのか…。


 ファンタジーですが、一迅社スタンダードな、魔法でバトルみたいな展開はありません。イメージとしては、ヨーロッパの民話や伝承。おとぎ話のように、優しくも、大切なメッセージが込められているような、そんな作品になっています。今後多少のバトル展開もありそうですが、基本的には対話や交流といった部分で進みそう。オーソドックスな設定・展開ではありますが、こういった毛色のファンタジー作品を、一迅社で読めるってのはなかなか貴重な気も。こういう世界観の作品は、個人的に大好きですね。
 
 最近ゼロサムWARDが良いですね。久米田夏緒さんの「ボクラノキセキ」(→レビュー)といい、乾みくさんの「緋の纏」(→レビュー)といい、ZERO-SUMとは一味違った作品を送り込んできてます。今後もこのスタンスで進んで欲しいなぁ。


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→伝承とかが好きな人は。そういうのダメって人はそうはいないと思うんですけど。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→個人的に気に入りました。優しい気持ちになれるファンタジーです。マンガで読むおとぎ話としてひとつ。


作品DATA
■著者:藤村あゆみ,霜月はるか,日山尚
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ゼロサムWARD(平成20年No.003~連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税

■購入する→Amazonbk1
 限定版はこちら→ティンダーリアの種 限定版 (1)

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