
私はもう
今まで通りの普通の笑顔で笑えない
もっと
触れあいたい つながりたい
って思ってるのに
■表題作他読切り2編を収録。
結婚3年目の茅子。結婚生活は、順調な方だとは思う。夫が浮気をしているということもない。ただ、仕事が忙しく最近はどうもすれ違い気味。そんな時、美大時代の後輩・八田くんに再会。それをきっかけに、彼のデザイン事務所の仕事を手伝うようになる。「なんでそんな寂しそうな顔してんですか」ある日突然彼にそう言われ、頭が真っ白になった。そして真っ白になったところに、彼の唇が触れた・・・
不倫…と言えるものなのだろうか。夫とのすれ違いの日々の中に現れた、かつての後輩。夫への不満や不安を、彼でまぎらわす。夫への愛情と、後輩からの愛情の間で揺れる女性の心を、細やかに描き出します。構図は非常にわかりやすいでしょう。後輩の八田くんは、学生時代から茅子に好意を持っており、結婚しているとはいえ、念願叶った状況。茅子は夫の関係に悩む中、すっぽり開いた心の穴に八田くんが入ってきてしまい、どうすれば良いか悩み中。そして夫は、妻に男の影を感じつつも、ただひたすらに日常を保ち続けます。

セックス描写は出てこない。これは作者さんの意図?それもドロドロ感を出さない要因になっているのかもしれません。
誰が悪いってわけでもないんですよね。で、正しい人も誰もいない。みんなが必死で、だけどどうする事も出来ないというか。こういう関係性は結構リアルなんじゃないでしょうか。多かれ少なかれ、身につまされるものはあります。しかしラストはこう来るかぁ。こうなるのなら結婚という設定は必要はなかったんじゃ、と思いつつも、結婚して誓いの言葉を言っているからこそ、こういう選択しかできないのか。いやぁ、これは切ない。ただ不倫の話の割に、ドロドロしないですし、後味も悪くないですよ。
同時収録の短編は、新社会人の青年と女子高生の、幼なじみ同士の恋模様を描いた「まぶたのおさら」と、偶然出会った少女の思い出巡りに付き合わされる「Wエスケープ」を収録。どちらも大人の男×少女という組み合わせのお話で、表題作に比べより“物語”感が強くなっています。どちらも非常に雰囲気の良い作品で、ラストの描き方も上手い。さすがと言ったところでしょうか。
【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→このぐらいだと男性にも読みやすい。男性側の視点がしっかり描かれているので、ある程度感情移入しやすいんじゃないんでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→こういう空気感の作品は大好き。話の作りも熟れていて面白い。オススメです。
作品DATA
■著者:斉藤倫
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:コーラス(平成20年9月号~10月号)
■全1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon