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Tag [オススメ] [新作レビュー] [読み切り/短編] 2009.05.28
husiginahito.jpg安藤ゆき「不思議なひと」


なんてーか
普通のことが特別になったりさー
なんかしてあげたくなったり
なんか知んないけど
一生懸命んなったりするわけよ



■読切り6編を収録。とりあえず表題作をご紹介。
 女子高生の留可が想いを寄せるのは、時緒先生39歳。猛アタックする留可だったが、時緒先生は相手にしてくれない。結婚していて、今度子供が生まれるのだから当然だ。生まれてくるのが遅すぎた。そう悔しがる時緒の前に現れたのは、ひとりの不思議な男の子。なにやら時緒先生と親しげで、なんとなく雰囲気が似ている。「アンタ誰?」留可の問いかけに、その男の子は、自分は高校生の頃の時緒で、過去からやってきたと答えた。突拍子もない答えに、信用しない留可だったが、彼の手には時緒先生と全く同じ火傷の跡があり…!?

 作者さんのオリジナルデビュー作品です。読切り6編が収録されているのですが、どれもレベルが高く驚きです。描かれるのは、10代の女の子の恋。ただどれも少し変わった設定や展開をしているので、なかなか面白いです。中には見つめた相手が不幸になるという、悪魔の女の子がヒロインになっている、ファンタジックなお話も。独特の絵柄と、独特の間合いで繰り広げられる物語は、オーソドックスな少女マンガとは一味違った印象を与えますが、帰結するところはやっぱり女の子の恋心。一歩間違えれば少女マンガの枠から外れそうな所を、上手いこと枠内に収めてきます。


不思議な人
コマ割りやアングルにも工夫が見られます。


 この絵柄や話の展開のさせ方は、なんとなくろびこさんと被るイメージ。良い意味で少女マンガらしくないというか。絵柄といい、雰囲気といい、「やや気どった作りだな…」なんて最初は思っていたのですが、最終的には等身大の恋心を落とし込み、しっかり少女マンガにしてしまう。すごい。これは大化けもあるんじゃないでしょうか?雰囲気に流されただけかもしれませんが、チェックしておいて損はない作家さんだと思います。青田買い推奨。


【オトコ向け度:☆☆☆  】
→敢えて男性にオススメする要素はないかな、と。チェックはして欲しいですけど。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→うーん、5個はつけ過ぎかもしれませんが、今後への期待も込めて。作風に惑わされているだけかもしれんけど、ここは自分の眼を信じよう。追いかけ続けますよ、私は。今後絶対ブレイクするハズ!


作品DATA
■著者:安藤ゆき
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:デラックスマーガレット(平成16年7月号,11月号,平成17年3月号,平成20年11月号,平成21年1月号),ザマーガレット(平成19年3月号)
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1


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