
粕谷以外の
周りが全部見えなかった
そのうち粕谷もぼやけたけど
目にやきついた
手に
赤い傘だけが残った
■「誓いの言葉」(→レビュー)と同時発売。表題作ともう一遍が収録されています。今回は表題作ではなく、同時収録の「ひとつぶの雫より」をご紹介しようと思います。ちょうど雨ですしね。
中学2年の6月。部活中に捻挫をした一果は、たまたま近くにいた粕谷くんに送ってもらうことに。その日は丁度雨。人生初の相合い傘は、全然しゃべったことのない相手。それがきっかけで、以来一緒にいることが増えた。無口で無愛想だけど、自分の言葉に崩れた表情を見ると、なんだか嬉しくなる。一緒にいたい、二人でいたい。しかし、一果には時間が残されていなかった。田舎から、神奈川への転校。そして、それから5年の月日が経ち
敢えて「ひとつぶの雫より」を選んだのは他でもありません。だって大好きなんだもの。また表題作の「宙返りヘヴン」が、かなりガチャガチャした印象を受けたというのもあります。さすがにこの設定・展開は無理があるんじゃない?と。やっぱり斉藤倫さんは少女を描いてなんぼです。幼く、どこか儚げな佇まいの女の子を描くと、ものすごくハマります。

田舎の雰囲気とか、雨の日の匂いとか、思春期の瑞々しい想いとか、個人的にたまらん要素たっぷり。ただこのシーンで不覚にも、「となりのトトロ」のあの場面を思い出してしまったのは私だけではないハズ。
「ひとつぶの雫より」ですが、なんとなく惹かれあっていた二人が、何度もあるすれ違いを乗り越え、結ばれようとするというお話です。話の時間軸は、小学校(回想のみ)→中学校→大学と移り変わります。時を越えてと言うと壮大すぎますね、なんとなく「秒速5センチメートル」を、少女マンガアレンジしたようなイメージ。現実的に見るならば、出来すぎた話。けれど物語として楽しむのなら、最高。というか、ラストがズルい。ベタだとか、ありえないとか、そんなのもうどうでも良くなるくらいあの手法は好き。あの手の作品は、どんなにベタでも安っぽくても、ついつい感動してしまうんですよ、私は。青春夢物語として楽しんでもらえれば。おすすめです。
【オトコ向け度:☆☆ 】
→根底に流れるものは男性にも繋がってきそうですが、表題作&ラストをどう受けとめるか、そこが問題かな、と。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→「宙返りヘヴン」→☆☆☆。「ひとつぶの雫より」→☆☆☆☆☆。間をとって4つで。同時発売の「誓いの言葉」共々オススメです。この機会に是非チェックしてみてください。
作品DATA
■著者:斉藤倫
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:クッキー(平成21年1月号~2月号,5月号~6月号)
■全1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon