
どんなに望んでも
手に入らないものはある
私がその一つに
なってあげる
■北のセナン、南のベクルート。一つの島に二つの国があることから、この200年、両国の間で戦火が絶えることはなかった。そして戦火が苛烈を極める度に、両国の王族同士の、婚姻という名の束の間の和平条約が結ばれた。そしてまたも懲りずに、不毛な和平条約が結ばれることになった。ベルクートの第2王子・シーザの元に、セナンの第一王女・ナカバが輿入れ。束の間の平和が訪れたのだ。しかしこの王女、少し変わったところがあった。従者はたった1人で、しかも亜人。そして何より、黒髪しかないはずの王族において、ナカバは赤髪を持っていたのだ…
政略結婚によって敵国へ嫁がされた赤毛のヒロインと、その周囲の面々を描いたロマンスファンタジーです。黒髪の王が国を支配し、赤や金、茶髪の者は平民、そして獣の耳や尾を持つ者は亜人として蔑まれ奴隷階級として支配されている世界。長い間争い続ける二国間で、何度目かの政略結婚が行われた。その姫が、ナカバ。王族にも関わらず赤毛をしている彼女は、自国でもぞんざいな扱いを受けており、嫁ぐ際にも従者がひとり、それも亜人という状況。そんな彼女を見て王子・シーザは無礼の限りを尽くすのですが、ヒロインはそれにめげずに王女として毅然とした振る舞いをしていきます。

こういう話のヒロインは、基本こういう性格。真っ直ぐというか、素直というか。
メインキャラは3人。まずは赤毛のヒロイン・ナカバ。そして第二王子・シーザ。最後に、ナカバの従者で亜人のロキ。ヒロインとロキは、ベクルートの王と因縁があり、物語の後半にスパイスとして効いてきます(多分)。ナカバはその風貌から、そしてロキは亜人という立場から、そしてシーザは第二王子という地位から、それぞれコンプレックスを感じて育ってきました。したがって根底に流れるものは同じ。各人、その立場に甘んじる事なく、毅然とした態度で生活をしていますが、やがりどこかでその影が見え隠れし、各人が触れあうことによって、「傷」から立ち直っていく…というお話だと思います。いや、結局はラブロマンスなんでしょうけど。その過程としてね。
しかしこれ、ナカバとシーザのラブロマンスと考えると、ロキの存在が邪魔になってきます。いや、キライとかじゃなく、彼がずっとナカバの側にいるのは状況としてありえない、と。平和に3人仲良く…なんてシナリオは考えにくいよなぁ。この舞台設定ですし、最悪死も…なんて先読みしすぎですかね。でもこれあながち間違ってない気がします。
赤髪で王族と…なんていうと「赤髪の白雪姫」(→レビュー)を思い出させますが、たしかに白雪とナカバには似たところがあるかもしれません。ただナカバの方がより大きな「傷」を持っている。またシチュエーション的に「絶対平和大作戦」のような話を想像していたのですが、シリアス度が格段に違います。そこはレーベルの違いによる差でしょうか。Cheese!に歴史ファンタジーってことで注目していたのですが、良い出来です。驚きました。ベツコミでいう「女王の花」的ポジションになれると良いですね。
【オトコ向け度:☆☆ 】
→まぁ読めないこともないとは思いますが、恋愛要素に関しては少女マンガのソレですし。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→作品の出来もさることながら、1話目が100ページ超と、編集部の期待の高さが表れています。それだけ推すからには、それだけの自信があるってことでしょう。当然オススメ。
作品DATA
■著者:藤間麗
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!('09年3月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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