小椋アカネ「絶対平和大作戦」(1)
私がこの人の側にいるのは平和のため
好きだからではないけれど
もう少し
歩み寄る努力をしてもてもいいのかもしれない■2巻発売しました。
国境を巡って争う北のメテオラと、南のカナン。そんな争いにも、ついに終止符が。メテオラの王子・ヨハネと、カナンの王女・ユーダが恋に落ち、婚約。二人の訴えに押し負けて、両国が和平を締結したのだ。二人の愛が、国に平和をもたらした…はずが、両者の仲は険悪!?実はこの二人、愛しあってなどおらず、ただ平和をもたらすためだけに、恋人同士になったのだった。はたしてこの作戦、上手くいくのだろうか…!?
国境を巡る戦争を終わらせ、平和をもたらすため、恋人になった二人を描いたラブコメです。一つ前に紹介した可歌まと「ひみつの姫君 うわさの王子」(→
レビュー)とは真逆の出発点にあります。とにかく二人の仲は険悪…といっても、その空気を作り出しているのは王女・ユーダのほう。王子・ヨハネは、せっかく婚約したのだから、もっと歩み寄ろうというスタンス。しかし異性との距離の取り方がわかっていないユーダには、どうしたらよいかわかりません。結局ヨハネの歩み寄りを全力で跳ね返すというパターンに陥ってしまいます。それでも愛想を尽かさず、歩み寄ってくるヨハネに対し、ユーダもだんだんと心を開いていくように。しかしそこにはわけのわからない意地があって、なかなか素直になれない。そんなユーダの様子を楽しむお話だと個人的には捉えております。

普段は自分から冷たくするのに、いざ向こうから冷たくされると、寂しくなって話しかけてしまうユーダ。子供みたいでかわいいです。
背景が背景だけに、シリアスな展開もあるにはあるのですが、基本はラブコメと考えてよいでしょう。素直になれないユーダと、ややお調子者のヨハネ。ふたりが少しずつ相手のことを理解し、歩み寄っていく。その様子が、もうたまらんのです。特にユーダ、お前小学生か!?と。ちょっかいを出して、追いかけられれば逃げ、逆に離れられると寂しくなって近づいてくる。交換日記に一喜一憂するシーンはニヤニヤが止まりませんでした。
今後は二人の仲を、国民に認めてもらうという方向で話が進むのでしょう。和平が結ばれたとはいえ、両国にはまだ反対勢力が多数おり、それらがくすぶっている状態。ゆえに治安も決して良いというわけではありません。そこから事件が起こってくるわけですが、そうしたことを通してこそ、相手の本質が垣間見えるもの。相手の魅力を見出し、絆を深めます。日常の何気ない行為でコミカルに、そして大きな出来事を通してドラマチックに、二人の愛を描き出す、このスイッチングはお見事。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】→ユーダかわいいよユーダ。テンポが良く、読みやすい作品に仕上がっていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→一応停戦中という背景があり、それもストーリーで使われるものの、描かれるのは基本二人の関係について。その関係が実に微笑ましいです。ラブコメ好きの方に。また、がっつりラブロマンスが読みたいならば
「黎明のアルカナ」がオススメです。
作品DATA■著者:小椋アカネ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa DX(平成19年9月号~連載中)
■既刊2巻
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