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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2009.06.10
hebiichigonokandume.jpg河内遙「へび苺の缶詰」


未知との遭遇は
恋ともいえる
ぼくらは性懲りもなく
恋に酔っぱらい続ける



■表題は「へび苺の缶詰」ですが、同作は同時収録の「空の箱庭」のスピンオフ作品。今回は「空の箱庭」のあらましをご紹介します。
 大学時代から7年付き合った男にフラれたOL・コマちゃん。傷心の彼女は、勢いから絵本作家の友人・チャコの所に転がり込む。しかし図ったように彼女は家出、鍵と地図だけ手渡され、去っていった。とりあえずチャコの家に向かうが、そこにはチャコの親類と名乗る男・池ノ上が。にっちもさっちもいかなくなった時、ふいに彼が優しい言葉をかける。そしてそれから、ふたりの奇妙な同居生活が始まった   

 4社同時デビューという異例のキャンペーンが行われている話題の新人さん・河内遙先生の、各所で掲載されたタイトルを集めた作品集です。すでに3冊がリリース済みで、今作が一番最後。ウチのブログでは「ラブメイク」(→レビュー)をご紹介しましたが、あちらは原案モノ。今回は完全オリジナルということで、その魅力をいうものが、大いに発揮されていると思います。のっけから何?と思われるかもしれませんが、スゴいですよ、と。読後、「なるほど、これが河内遥の神髄か」という感想を持ちました。


へび苺の缶詰
「へび苺の缶詰」より。言葉のひとつ一つが、心地よく響き渡る。


 皆さんがどう思われているのかは分からないのですが、個人的に魅力に感じるのが、その台詞回しと、男性キャラ描写。「空の箱庭」もさることながら、スピンオフの「へび苺の缶詰」が特に好きだなぁ、と。これは「空の箱庭」の池ノ上くんの元に、突然かつての後輩・浜田山くんが訪れてくるというお話なのですが、この二人の会話がすごく良いんです。「腐ったヒヨコですから」っていきなり出されてもわからんと思いますが、この例えが実に絶妙。狙ったようにハズしているというか、多分もっとキレイで物語然としたフレーズがあるはずなんですが、敢えてこのフレーズを用いることで、なんだかとっても人間臭く愛おしい感情が呼び起こされる感じ。素敵です。
 
 出版社は祥伝社ですが、収録作品は祥伝社以外での掲載作品ばかり。じゃあなんで祥伝社なの!?と思ったら、ヤングフィールで「夏雪ランデブー」という作品を連載中だそうで。これも期待できそうですね。ってかフィール連載陣の充実っぷりはハンパないっすね。定期購読しようか迷うじゃないですか。


【オトコ向け度:☆☆☆  】
→男性にも読んでもらいたい。向いてるかなんて知らないです。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→4つと迷ったんですが、いいや5つで。テーマに特化してない分“素”の河内遙さんが覗けるんじゃないでしょうか…


作品DATA
■著者:河内遙
■出版社:祥伝社
■レーベル:FEEL COMICS
■掲載誌:コーラス(2006年9月号~11月号,2007年3月号),別冊コーラス(2008年spring),マリカ(2008年6月号),アックス(2004年Vol.42)
■全1巻
■価格:933円+税

■購入する→Amazonbk1

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かくかくしかじか
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期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。