渡辺あゆ「L・DK」(1)


「…あの、友人の家って……？」
「アンタの部屋。」


■転校を回避するため、必死の思いで一人暮らしを決めた葵。最近になって、アパートにお隣さんが越してきた。そして、挨拶にきた青年の顔を見てビックリ。なんと新しいお隣さんは、学校の王子・久我山柊聖だったのだ。親友の告白を一蹴した、冷血漢で嫌なヤツ…だったはずが、ハプニングから同居することに!!果たして葵の運命は!?

　王道同居モノラブコメでございます。親友の告白を無下に断り、文句を言いに行った葵にまで冷たい言葉を放った、学校の王子・柊聖。そんな経緯があったため、お互いの印象は最悪。そんな二人が、あろうことかお隣さんになってしまいます。しかし、いざじっくり接してみると、案外悪いヤツじゃない。そしていつしか、常に金欠腹ぺこの柊聖に、ご飯を作ってあげるように。そしてハプニングが起こり、同居するようになるのですが、ハプニングってのは、料理を作ろうとした葵がボヤ騒ぎを起こしてしまい、スプリンクラーが作動、結果がダメになってしまうという流れ。部屋をダメにされた柊聖は、部屋の修繕が済むまで、葵の部屋に居座るようになります。ボヤ騒ぎを起こした葵は、逆らうことが出来ず、挙げ句弁当まで作らされるように。



この近さでの就寝。ありえないっちゃありえないんですが、私は好きですよ、こういうシチュ。


　うーん、同居という状況を作りたいとはいえ、この流れはどうなのだろう。柊聖ならば他の友達の家に行けたんじゃない？これじゃあもう「葵に気があります」って宣言しているようなものじゃないか、と思いつつも、高校生だしそう融通も利かんのか、と納得させてみます。パターンとしては、Sっ気のある柊聖に、ヒロイン葵が振り回されるという形。ちょっとからかいすぎな気もしますが、Mっ気のある読者からすると、これぐらいが丁度良いのかもしれませんね。新キャラの登場で、２巻への繋げ方も上手。今後１巻では謎だった、柊聖の一人暮らしの理由と、そこから発生する、二人の仲をより深めるイベント（乗り越えるべき壁）が明らかになっていくのでしょう。

　渡辺あゆ先生は「キミがスキ」「オトメゴゴロ」と、オーソドックスな少女漫画のスタイルを貫いた良作を送り込んできたのですが、今度も同居モノと、王道路線。実績も積んできたことだし、そろそろ５巻以上続くような長期連載が欲しい所。しかし今作も５巻以上は厳しい気が。部屋の修繕が終わるまでという、期間限定の同居に加え、お互いの気持ちは１巻でほぼ明らかに。“同居モノ”という枠に囚われず、早い段階でこの状況から脱却できれば続くことはありそうですが、さすがに無いですよね。安定はしてるものの、今ひとつ突き抜けられないのはどうしてなんでしょう。これは個人的な印象なのですが、大ゴマが他の作家さんに比べて多い気がするんですが。これもうちょっと詰めて描いても良いんじゃないかな、と思います。ずば抜けて画力が高いワケではないですし、スピード感のある話を得意としているワケでもないので。


【オトコ向け度：☆　　　　】
→ザ・少女漫画。男性向けの要素は薄め。
【私的お薦め度：☆☆☆　　】
→もう一押し欲しい所。別フレの王道路線はこの人が担っていくと期待しているのですが、果たしてどうなるものか…。安定して楽しめるので、少女漫画が好きな方にはオススメです。


作品DATA
■著者：渡辺あゆ
■出版社：講談社
■レーベル：KC別フレ
■掲載誌：別冊フレンド(09年３月号～連載中)
■既刊１巻
■価格：419円＋税

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