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Tag [オススメ] 2009.06.15
07212871.jpg海野つなみ「回転銀河」(1)


…誰にも内緒で
一瞬の視線を
心をこめて 受けとめる



■6巻発売しました。
 とある高校が舞台の中心となる、恋愛オムニバスシリーズです。その発端となるお話が、1巻の最初に収録されている「イノセント・インセスト」。とりあえず、そのあらましをご紹介しましょう。
 
 病気療養で2年ぶりに家族の元に戻った衿子。前と変わらない家に、両親。しかし2年前とは大きく変わったことがひとつ。中2から高1に成長した弟が、見違えるような男の子になっていたのだ。離れる前は、本当に頼りない子供だったのに、今は思わずドキドキしてしまうほど。この気持ちは一体…?別人のように成長した弟を前に、衿子がとった行動とは…

 スタートは、姉と弟の危うい恋愛を描いたストーリー。その他にも、女子に恋してしまう女の子や、父×娘というカップリングを扱ったお話もあります。これだけピックアップすると、タブー恋愛がテーマの作品のように思われるかもしれませんが、そうではないと言っておきます。スタンスは、あくまで「高校生の恋愛模様を綴ったオムニバス」であって、タブー云々ありきではありません。ただしオーソドックスな少女漫画のように、恋愛のキレイな部分だけをすくいとって描くといったことはなく、かなり深い部分にまで突っ込んでくるようなお話を描き上げてきます(あくまで印象ですが)。恋愛マンガではあるものの、少女漫画ではない。そういった捉え方で読んでいただければ良いのかな、と。


回転銀河
寝ている姉に対する弟の欲情(?)、胸を触り、その後キス。こういうシーンもがっつり組み込んでくるあたりも、魅力のひとつ。でもドロドロ感はないですよ。


 少女漫画とは違う。何かが足りなくて、同時に少女マンガには無いものを持っている。そんな印象を受けるのですが、その理由は判然とせず。結構生々しい要素(設定ではなく)を落とし込んできているので、そのせいなのかなぁなんて思ったのですが、それもこの作品の特徴のひとつにしか過ぎないような。でもやっぱりそこなのか?そういった要素がありながらも、根底にあるのは恋愛に対する「イノセンス」さ。そのギャップに、若干の違和感とイライラを重ねつつも、最後にはきっちり感動させられてしまう。イライラ感やもやっと感は、読後も少しだけ残るのですが、それが一種の快感のように自分の中に残り、いつまでも印象づけられているというか。うーん、なんでか読んでしまうんですよね。絵も話もインパクトがあるようなものでは無いんですが…。


【オトコ向け度:☆☆☆  】
→人によるとしか。重苦しい作品というわけではありませんが、明るいわけでもありませんので。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→どうしようか迷ったのですが、なんだかんだで読んでいますし。ポンポン単行本が出るような作品でもないので、オススメにしておきます。そういう方が買いやすいでしょ?


作品DATA
■著者:海野つなみ
■出版社:講談社
■レーベル:KC Kiss
■掲載誌:Kiss Plus(08年3月号~連載中)
■既刊6巻

■購入する→Amazonbk1

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
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稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
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期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。