もとなおこ「コルセットに翼」(1)
クリスティン・ラングトンはここに誓います
幸を分け合い
互いの秘密をわかち合い
永遠の友たらんことを ■育ての父を亡くしたクリスは、その存在をやっかまれ、親類たちにより寄宿学校に送られることになる。生まれ育った島を離れ、向かった先は、ヨークシャーにあるデスデモーナ女子寄宿学校。8歳から15歳までの良家の子女が25名ほど学ぶその学校は、魔女のような経営者が支配する、まるで刑務所のような場所だった…
舞台は19世紀末のイギリス、ヨークシャーにあるデスデモーナ女子寄宿学校。外出は週に一度日曜の教会に行くときだけ、専門の授業を受けられるのは特別コースの3人のみ、与えられる部屋は汚く、食事はもっぱらおかゆのみ、少しでも経営者・デスデモーナの機嫌を損ねようものなら、反省房へ閉じこめられる…そんな監獄さながらの学校で、決して腐る事無く団結し、凛として生きる女生徒たちを描きます。ヒロインは、育ての父を亡くし、親類から放り出されるようにここに流れ着いたクリス。自由奔放に育ったクリスは、入学当初からデスデモーナに反抗し、目をつけられてしまいます。最初は威勢が良かったものの、度重なるひどい仕打ちに、意気消沈。そこに手を差し伸べたのが、特別コースの生徒・ジェシカ。彼女に導かれるようにやってきたその場所では、月光荘の学び舎。普通に生活していては、絶対に知識など身につけることが出来ない。そう感じた生徒達が団結。大人達が眠りについた後密かに集まり、特別生は上級生に、上級生は下級生に必要な知識を教えていく、特別授業を開いているのだ。…とまぁそんな感じです。

タイトルと表紙だけだと伝わらないかも知れないですが、こういう仄かに百合の匂いがするシーンもあるのですよ。
これだけだと、不条理な支配から反抗する、ありがちな物語ですが(まぁそれだけでも十分面白いんですが)、この物語ではさらに違ったストーリーを用意しています。それがヒロイン・クリスの出自に関するお話。クリスは実の父が不明で、別の父親に育てられたという過去を持ちます(クリスの母親が育ての父と結婚した時、すでに母親は別の男の子ども=クリスを身ごもっており、育ての父はそれを知った上で結婚した)。そのためクリスは、親戚連中から疎まれて育ちました。そんな彼女にはあるひとつの宝物が。それが、母親の形見である“鍵”。その鍵に関する詳細は一切不明であり、また彼女のルーツを探る唯一の手がかりでもあります。その鍵で繋がるのが、表紙の男性・Mr.バード。学園生活と、鍵をめぐる2つの物語が、同時進行していきます。
最近よくある学園モノとは違う感じ。作品の雰囲気を伝えるには、どういった言葉が一番しっくり来るか考えたのですが、「世界名作劇場」っぽいと言うのが一番かな、と。最近の名作劇場がどんな感じなのか知らないんですが、そうイメージが変わるもんでもないでしょうし。ベテランらしい安定感ある良作に仕上がっています。
【オトコ向け度:☆☆ 】→百合的に見ても楽しめる…か?女性向けだとは思うのですが、男性が嫌うって感じもないです。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→抜群の安定感。どこか懐かしさを感じながら読むことが出来ます(私だけ?)。話の展開のさせ方も上手。
作品DATA■著者:もとなおこ
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(07年9月号~連載中)
■既刊4巻
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