山田南平「オレンジチョコレート」(1)
「ちろ
りっちゃんになりたい」
「じゃ おれも
ちろになりたい」■呼水千尋(ちろ)と、姫野律(りっちゃん)は、お隣さん同士の幼なじみ。ごくありふれた一般家庭に生まれ育ったちろとは違い、律は日舞の家元育ち。幼くしてその才能を見出された律は、まだ16歳という若さでありながら行谷流の名取になり、また天才女形として大ブレイク中。小さい時からずっと律に憧れてきたちろの願いはただひとつ「りっちゃんになりたい」。その願いが、まさかあんな事態を引き起こすなんて…!?
幼なじみの純和風LOVEライフ♡なんて裏表紙に書いてありますが、説明不足っすよ。さて、ちろの“願い”が引き起こした出来事とは…なんとちろと律の入れ替わり。男女の体が入れ替わる話ってのは結構使い古された手法なんですが、まさかそれを使ってくるとは…完全に裏をかかれました。しかしこの機能、ずっと入れ替わっているというわけではなく、一定時間経つともとに戻ります。ではどうすると入れ替わるのか、それはちろと律のどちらかが「相手(ちろなら律、律ならちろ)になりたい」と願うことがきっかけとなります。ちろは中学生で、律は高校生。学校自体は同じでも、校舎は違います。ましてや律は売れっ子芸能人。度々起こる入れ替わりに何とか対応するため、今まで以上に一緒に行動するようになります。

この展開には度肝を抜かれた。
結局落としたいのは入れ替わりを使ったラブコメってことなんですかね。ただ律視点での、売れっ子女形としての苦悩や意識の描写が丁寧だったので、ここでの展開にも注目。ちろを妹のように慕う律ですが、そこに恋愛感情があるのかは不明。ま、それはちろも同じですが…。ただ“憧れ”の感情があるのはお互いに確か。ちろは律を、お金持ちの家に育って売れっ子女形でなんでもできるスターのような存在として。一方律は、ちろを妹のように慕うと同時に、女形で踊る際の手本(イメージ)として捉えており、その延長で「ちろになりたい」という発言をしています。ここをきっかけに恋愛に発展していくのですが、脇を固める人物が結構多いので、話は長めに続きそう。『紅茶王子』(25巻)までとは言いませんが、『空色海岸』(6巻)ぐらいまでは余裕で続くんじゃないですか?
【オトコ向け度:☆☆ 】→男性向きって感じは受けないです。ただベテラン作家さんの作品は総じて読みやすいですから。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】→果たしてこの「入れ替わり」の設定を上手く使いこなせるのか。別に律メインで「3月のライオン」のようなガチンコスタイルでも良かったと思うんですが、ラブコメ描いてこそ活きるって感じもあるし、良いのか。唐突に「3月のライオン」が出てきたのは、ちろが『ハチクロ』のはぐちゃんに似てたから、羽海野繋がりで。
作品DATA■著者:山田南平
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:別冊花とゆめ(平成21年2月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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