
マルサンビル302号室
「オフィス とりだまり」
部屋からステキな屋上へ出られます
■様々な職業の人が集まる雑居ビル・マルサンビル。その302号室に事務所を構えたのが、デザイナーの鳥田まり(トリさん)と潮田茅子(ウシちゃん)。決め手は開放感と風通しの良さ。屋上への出入り口からは、猫が顔を覗かせ、こちらが屋上に出てみれば、そこには隣の隣のビルの持ち主・本間さんがいたりする。そんな緩~く心地よいビルを舞台に、なんともビミョーな恋愛模様が始まったり…!?
とある雑居ビルを中心に繰り広げる、ご近所さんオムニバスシリーズです。最初に言っておきます、これスゴく面白い。いやココまで私のツボにはまるとは…ビックリしました。ではこのお話を彩る登場人物達をご紹介いたしましょう。まずは302号室のデザイナー二人、トリさんとウシちゃん。トリちゃんは若く見えるもすでに42歳、ウシちゃんももう良い歳ですが、二人とも独身。将来の身を案じるウシちゃんに比べ、この歳になっても恋愛にシフトできず、もっぱらの興味は猫にあるトリさん。そんな二人と屋上でしばしば交流しているのが、隣の隣のビルの持ち主・本間さん。結構なオッサン面ですが、一応41歳で、こちらも独身。そんな彼が想いを寄せる相手は、恋愛に疎いトリさん。もうね、トリさん相手に年甲斐もなく健気に頑張る本間さんが可愛いのなんの。

本間さんとトリさんの噛み合ないやりとりがたまらない。本間さんだけでご飯3杯いけますよ。
この物語の主役は間違いなく本間さんでしょう。表紙はメインヒロイン2名が描かれていますが、タイトル自体は本間さん視点。君(=トリさん)の天井は僕(=本間さん)の床。なんか詩的で、気どってるでしょ?でも41歳のオッサンがこれを考えてると思うと、途端に愛おしくなるから不思議。40過ぎてもこんな人でありたいなぁと、密かに憧れる管理人でした。てか40にもなって何やってんだ、と。登場人物達は軒並み40前後ですよ、でもそれがいい。
ストーリーはオムニバス形式で進みます。メインキャラ3人と、雑居ビルに軒を連ねる面々との触れ合いを通し、それぞれの生活と想いを描き出していきます。スタンスはホームコメディかな。ラブコメって捉え方でも良いですが、日常色が非常に強く出ているので。それぞれのキャラが非常に立っている…というよりも味があるので、普通のやりとりですら面白い。
日曜の夕方に東京FMで「あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE」というラジオドラマがあるのですが、私大好きなんですよ(最近は微妙ですが…)。この作品もそんな感覚で楽しんでいるように思います。まだ20代なんですが、若さと渋さの間で揺れる心情というのは、下の世代にも伝わってきますよ。そんな歳になっても恋愛は全然ダメで、一生懸命で。その辺がスゴく笑るのですが、同時に心に響くというかね。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→この描き方なら男性もいけるはず。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→個人的にはホームラン。面白かったです。40代の日常に、初心者のような恋愛という、ギャップのある要素を落とし込んだ所がスゴいというか、素敵。
作品DATA
■著者:鴨居まさね
■出版社:集英社
■レーベル:クイーンズコミックスYOU
■掲載誌:YOU(2008年No.17~連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
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