
その血が死を以てしか
捨てられないものである以上
貴方は
自分の信じた意志を
惑うことなく持ち続けるべきだ
■父・義朝の平治の乱での敗走により、息子・頼朝は平清盛に捕らえられ、島流しにされる。父や兄たちは死に、世は平家が繁栄。大人しく、この辺鄙な場所で暮らしていれば、問題ない。そう考えていた頼朝の前に、かつての友人・文覚上人が訪ねてくる。平家を討つために、頼朝に源氏の棟梁になってもらいたいと言うのだ。己の無力さを、前の戦で嫌というほど知らされた、ましてや自分は流人の身。「平家に抗う気などないし、自分には無理だ」そう言ってのらりくらり躱す頼朝だったが…!?
源頼朝の生涯をファンタジックに彩った、新感覚源平絵巻です。描くのは、平治の乱以降の源氏と平氏の戦い。歴史の流れ、主要な登場人物などは現実に即して描かれていますが、それ以外の部分ではオリジナルの要素をふんだんに盛り込み、非常にファンタジックな作品に仕上がっています。主人公となるのは源頼朝。史実では「鬼武者」など、冷酷なイメージのある人物ですが、本作では甘い物好きの事なかれ主義な少年になっています。とはいえ元々このような性格だったのではなく、平治の乱での敗走→平清盛に捕らえられる→島流しという課程を経る中で、生き残る術として身に付いたもの。そうしたことから、今の状況を甘んじて受け入れ、平穏無事に暮らそうとします。しかし彼の考えとは裏腹に、血の宿命がそうはさせません。文覚上人を始め、打倒平家に燃える人々が彼の元を訪れ、また同時に平家が源氏の追討を決定。彼の周囲は慌ただしく動いていきます。

まさか“尼将軍”北条政子を、「カワイイ」だなんて思う時が来ようとは思いもしませんでした。いやね、ほんとカワイイんですよ、これが。漫画の力ってスゴい!
史実に沿っているので、恐らくこの後平家打倒に続いていくのでしょう。物語のミソは、その課程がどう描かれるかということ。和風ファンタジーということで、天狗をはじめとした魔物や、妖術などの要素が取り入れられております。メインで使われるってことはないでしょうが、物語を彩る一つの重要なファクターになることは明白、果たしてどのようにミックスさせてくるのでしょうか。あとキャラ設定はそこまで史実に沿っている感じではなさそうですね、ってそりゃそうか。
登場人物の数が序盤からスゴく多いです。これ読んでて分かんなくなる人もいるかもしれません。とはいえ各々一迅社らしく非常にスタイリッシュで、描き分け自体はしっかりできています。描き分け重視の結果かわかりませんが、中には「現代風すぎじゃない!?」という服装のキャラも。メガネ、煙草、ブーツが当然のように出てきます。いやでも、やるんだったらこうでなくちゃ。
【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→バランス良いです。腐女子向けって感じもあんまりしないですし。今後どうなるかはわかりませんが。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→「あまつき」(→レビュー)っぽいかなぁ、一迅社の和風ファンタジーってこともそうですが、華があるというか。これ、結構期待できると思うんですがね。展開次第ではアニメ化も…なんて言い過ぎ?
作品DATA
■著者:酒巻行里
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUM
■掲載誌:ZERO-SUM(平成20年11月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税
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