
たとえば
昨日よりちょっと
自分を好きになれたり
新しい自分に出会えたら
今日の私は なんだか素敵
■1巻表記ありますが、読切りシリーズということで、とりあえず表題作をご紹介。
美術部の久保桂は、同じ部にいる都築笑がちょっと苦手。いつも周りに合わせて過ごしている自分と比べて、いつも一人で堂々としている笑が、なんだかとても羨ましく思えたからだ。そんなある日、たまたま美術室で二人きりになり、思い切って笑に話しかけてみると、思いの外普通の人で拍子抜けする。それから二人はよく話すようになるが、最近なんだか笑の様子がおかしい。彼女にも、どうやら苦手な人がいるようで…!?
昨年珠玉の読切り集『イロドリミドリ』(→レビュー)で話題をさらった羽柴麻央先生の最新作です。1巻表記のあるシリーズ物ですが、あくまでスタンスは読切りで、イメージも連作というよりは独立型という感じが強いです。各話の登場人物たちが、少しだけ繋がっている程度の関係性で、物語に直接影響してくるということはありません。今回もクオリティの高い、優しいお話たちが詰め込まれていますよ。

そういえば、羽柴先生の作品には涙を流すシーンが結構多く登場する気がする。感情の揺れ動きの細やかな描き出しが、少女漫画のひとつの醍醐味なのですが、それゆえに涙という“武器”は簡単に使って欲しくないという想いがあります。「なぜ泣く?」という作品が最近やたら多い。しかし羽柴作品は、どの涙にも納得できてしまいます。それだけ物語を描くのが上手いんでしょうが、無駄遣い感を出さないってのは、結構すごいこと。
テーマというかスタイルとしては、2人の登場人物が配されて、その関係性や対比を描き出すことで物語を展開していくという感じ。それは男女の場合もあるし、女の子同士の場合もあり。個人的には女の子同士のお話の方が好きですね。少女の心情を描き出すのが本当に上手いんですよ。友情と百合の境界のようなものが垣間見えるというか、何とも言えない優しい関係性が描かれているんですよね。そこには確かな“感情”が詰まっていて、温度や匂いを感じさせてくれます。だから先に挙げた“涙”が出てきても、安っぽさを感じさせない。非常に後味の良い作品群でございますよ。もちろんおすすめ致します。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→このぐらい素朴な方が読みやすいのではないでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→優しさ溢れる良作読切り集。買って損はさせません。
■作者他作品レビュー
【名作ライブラリ】 羽柴麻央「イロドリミドリ」
作品DATA
■著者:羽柴麻央
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:ザマーガレット(平成20年8月号,平成21年1月号),デラックスマーガレット(平成21年3月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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