
"知りたい"なんて
思ったのが間違いだったんだ
その言動の裏側を
彼を構成する
パーツを 色を 成分を
ほんの欠片でも
■2巻発売しました。
高校を卒業して数年、水帆の元に突然、高校時代の同級生・折口はるかの訃報が舞い込む。地味で目立たないはるかとは、さして仲が良いわけではなかった。しかし葬式で、はるかの母親から、なぜか自分がはるかと仲良しだったことになっており、さらには彼女が妊娠していたという事実を知らされる。「その子の父親を探してほしい」そう母親に頼まれ面食らう水帆だったが、気まぐれから引き受けてしまう。とはいえ手がかりはほとんどない。心当たりのある人物と言えば、成海皓ぐらい。しかし彼女は恐れていた。、高校時代キスを交わした彼に、再び関わることを…
層の厚いベツコミの連載陣ですが、4番を選べと言われたら、間違いなく芦原妃名子先生だと思います。和泉かねよし、小畑友紀、桜小路かのこといった実力派の作家さんもいらっしゃいますが、ここまで確実に長距離打を量産できる先生はそうはいないんじゃないかな、と。3ヶ月に一度の掲載ですが、その存在感は圧倒的。今作も、「砂時計」に引けをとらない中身の詰まった良作になっています。
さてお話ですが、かなり冷めた性格(異様なほどに冷静)なヒロイン・水帆が、亡くなったかつての級友の過去を探ることを通して、自分自身を見つめなおすという、サスペンス要素のあるラブロマンスです。物語の中心となるのが、ヒロイン・水帆と、高校時代のクラスメイト・成海皓。人間観察には自信のある水帆が、唯一全く理解できなかった人物で、同時に最も興味を引かれた人物でもあります。とにかく食えない彼は、すんなり水帆にパーソナルスペースに入り込み、彼女の心をかき回します。まぁ高校時代に色々あったらしいのですが、その辺はまだ明らかになっていないという状況。タイトルの「Piece」があらわすように、物語が進むにつれ、折口はるかや、水帆、成海、さらには脇役たちの過去と想いが明らかになり、パズルが完成されていくという構成になっています。

軸は「折口はるかの死」ですが、最終的にはこの二人についての物語になると思われる。
ヒロインの水帆が思考型のキャラということもあり、物語が非常にわかりやすくなっています。全体を見ると、パズルのピースは全く埋まっていないという状況なのですが、ヒロインの心情がかなりわかりやすく描かれるので、物語にすんなりと入り込むことができます。またサイドを固める人物たちの描写も秀逸。ある程度重要なキャラに関しては、しっかりと心情描写がなされるので、一層物語の説得力を強めることになります。なんというか、各人物が「ルール」に従って動いている感覚があり、それを読者はなんとなく感じることができるので、安心して読めるという。そんな中にひとりいる、とにかく読めないキャラ・成海。この対比が実に際立っていて、面白い。なんかラブストーリーっぽくないですが、作者さん曰く全力でラブストーリーだそうで、これから一気恋愛色が強くなってくるのでしょう。折口はるかの死を通して、最終的には水帆と成海の恋愛模様に持っていくのかな、と。しかし当たり前ながら、明るい話ではないよね、この展開だと。

瀬戸内円さん。以下説明・・・
さて、2巻に登場する瀬戸内円というキャラについてひとつ。いやね、すごいんですよ、この子。位置づけはクラスのアイドル。カワイイのはもちろんなのだけどほかのかわいい子を差し置いて圧倒的に男子に人気があり、同時に女子からも好かれるという存在。かわいさの上に、周りを明るくするような、不思議な魅力があるキャラとして描かれるのですが、こういう存在、確かにいたなぁ、と。もうね、作り出す空気が違うというか。見た目だけじゃなくて、雰囲気にやられてしまうんですよね。少女マンガではあんまりこういう子が描かれないので、ちょっと取り上げてみた次第。こういうキャラを描けるってのも、芦原先生の魅力。各人物が本当に説得力に溢れてる。いや、単純に私がこういう子好きってのもあるんですけどね。
【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→「砂時計」もそうですが、芦原先生の作品は理路整然としているので、男性にも結構読みやすいんじゃないでしょうか。ま、好き嫌いはあるとは思いますが。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→読み応え抜群。明るい話ではないですが、ドロドロした感じもなく、適度な重さのある作品に仕上がっています。途中で話が緩まないのがすごい。ぜひチェックしていただきたい作品です。
作品DATA
■著者:芦原妃名子
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ('08年5月号~連載中)
■既刊2巻
■価格:各400円+税
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