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Tag [名作ライブラリ] 2008.12.28
ふじつか雪「金魚奏」ふじつか雪「金魚奏」

水の中でなら私たち
聞こえる人たちよりも会話できるじゃない
それってすごいラッキーだよね!



■高2になりたての春、街の小さなお祭りで太鼓の演舞を披露する青年に、主人公は一瞬で恋してしまう。そのことをクラスメイトに話すと、その青年はクラスメイトの兄であることがわかる。クラスメイトに頼み込んで会わせてもらうことになるが、その青年は耳が聞こえず、心を閉ざしていた。それでも青年に近づきたくて、主人公は同じ太鼓を始めたりと、徐々にその距離を縮めていく。青年も、そんな主人公の姿をみてだんだんと心を開いていくが…。

 白泉社系には珍しい、ストレートな恋愛もの。聴覚を失った青年との恋という、なかなか難しい題材を扱っています。恋に落ちるまでの過程や、付き合うまでの過程はほどほどに、描かれているのは付き合ってからのお話が中心。こういう場合って付き合うまでが結構大変なんじゃなかろーかとも思ったのですが、なるほど、1話目は読み切りとして描かれたお話だったのですね。とはいえ読んでるぶんには違和感ないですし、付き合ってからも二人の間には超えるべき障害は数々アリ。それでもめげずにがんばる主人公の姿には、なかなか心うたれるものがあります。
 こういう題材を扱いながらも、話が暗くなりすぎないのは、快活な主人公や、キャラ立ちした周囲の面々によるところが大きいのでしょう。上記のセリフが出てきた時なんか思わず目頭が…。
 全2巻。主人公が高校2年から大学2年になるまでの4年間を描いていますが、そこまで忙しさは感じさせません。特に2巻の電話のくだりはなかなかに泣かせてくれますよ、もう。。

【オトコ向け度:☆☆☆  】
→こういう題材ですが基本的には恋愛モノの少女マンガ。ただサブキャラたちが少女マンガ的なキャラではなく、どちらかというと地に足着いたキャラですし、展開も決して甘々ではないので、男性でも読める下地は十分にあると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→個人的には大満足でした。でも星5つけないのは、多少の粗さや、もうちょっとゆっくりでもいいと思ったのと、今後の期待も込めて。でも作者さんの初コミックスですからね…すごいと思います。

作品DATA
■著者:ふじつか雪 公式サイト→「*FLOWER KING*
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成17年9月号~平成19年3月号)  
■全2巻
■定価:各390円+税

■アマゾンで購入→金魚奏 (花とゆめCOMICS)
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