このエントリーをはてなブックマークに追加
2009.07.03
ousamanogakkou.jpg夏目ココロ「王様の学校」(1)


アンタが俺をこの学校に入れたんだ
俺は…
アンタが自分で望んで作った弱みなんだ
だったら
アンタが俺を護れよ!



■3巻発売しました。
 巨大な王国エルドラにある、王立キングスホーク校。この学校は俗に「王様の学校」と呼ばれており、各国の王及び王位継承者は、この学校で王になるための教育を受ける。そんな学園にひとり、異端な存在が…。彼の名前はヤマト。平民の出で、育ての親である祖父に先立たれた彼は、国の援助を受けて教育を受けさせてもらっている。それぞれ割りふられた学校にそれぞれ通うことになるのだが、何故か彼が割り振られたのはキングスホーク校。普通であればまず通えない学校であるものの、この学校の生徒でありエルドラの王でもあるレッドに気に入られ、特例で通えることになったのだ。セレブな生徒達に囲まれて、今日もヤマトは右往左往…

 平民の少年が、ひょんなことからセレブな学園に紛れ込んでしまい、右往左往しながらも、彼らと仲を深めていくという、学園物語です。セレブに庶民というのは結構見られがちな設定ですが、こちらはセレブといっても全員王様。それぞれ抱えている事情は異なり、お気楽に毎日を送っているというわけではありません。そんな王様揃いの学園においても一目置かれているのが、この学園のあるエルドラの国王・レッド。自由奔放という言葉がよく似合う彼は、平民であるヤマトに興味を持ち、何かにつけて一緒に過ごすようになります。軸となるのは二人のやりとり。そこを通じて、王様の学校という独特の世界を描き上げていきます。


王様の学校
ヤマトを良く思わない者も当然いるが、あからさまに嫌ってくるというキャラはいない。むしろ周囲と上手くやり、意外なほど溶け込んでいる。


 雰囲気自体は悪くないです。この作品独自の空気感というのが出ており、かといってクセがあるわけではないので、読みやすさもあり。しかしながら、どういう方向に持っていきたいのかがよくわからない。コメディなのか、ど真ん中青春群像なのか、はたまた何か大きなストーリーを回したいのか…。どれもこれもパンチ不足で、もうちょっとメリハリを出して欲しいなぁというのが正直なところ。この感じのまま流れるのであれば、キャラにイレ込めない限り読み続けるのはしんどいかもしれません。一つ変われば大きく上向く可能性を秘めていると思うのですが、それだけに余計残念という感じ。

 しかしながらアカシアのサンちゃんはかわいいですね。こういうボーッとした感じのキャラは大好き。ただ彼女がいることで逆にこの作品の良い芽を潰しちゃっている気がしなくもない。ヤマトとレッドだけにフォーカスしちゃっても良いと思うんですが、彼女がなまじっか友達として絡んでくるために、青春群像的な作風が混じるという。うーん、難しいなぁ。


【男性へのガイド】
→これがダメって要素はないものの、決して男性向けという感じはしない。サンちゃんに一縷の望みを懸けるか。『ゼロの使い魔』から、女の子たちとのニヤケちゃうようなやりとりを排除した感じとでも言いましょうかね。
【私的お薦め度:☆☆   】
→どっちつかずの気持ち悪さ。持ってるポテンシャルはこんなものじゃ無さそうなんですが…。


作品DATA
■著者:夏目ココロ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOG COMICS
■掲載誌:B's-LOG(2006年9月号~連載中)
■既刊3巻

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「B's LOG」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。