
16歳
今のあたしは
余生を送っている
■青山恵都、16歳。かつて天才子役として話題をさらったものの、9歳のときに大抜擢されたミュージカル「サニーデイズ」の舞台上で一言も喋れず立ち尽くしてしまい、そのまま芸能界を引退。以来学校にも通わず、半引きこもりの生活を送っている。そんなある日、気まぐれで外出した先で、一人の男に声をかけられる。不審に思いつつも彼の後をついていくと、エル・リストンという場所に連れて行かれる。そこは、何らかの事情で学校に通えない子供たちが集まるフリースクールだった・・・
「花より男子」でメガヒットを飛ばし、現在「まつりスペシャル」を好評連載中の神尾葉子先生。これは「花男」連載終了後の作品で、NHKでドラマ化もされています。お話は、幼くしてすべてを失った少女が、フリースクールに通うことをきっかけに、再生・成長していくというもの。学校にも行かず、家族との会話もない恵都は、自分の居場所を見つけ出せないまま、ただ毎日を部屋にこもって過ごしていました。そんな中誘われたフリースクール。そこで、かけがえのない友達と出会い、それをきっかけに、止まったままの人生を再び歩み始めていきます。

エルリストンで出会った仲間たち。やがて各々の道を進み、離れ離れになるものの、絆だけは変わらず彼・彼女たちの間にあった。
エルリストンの生徒で、恵都の親友となるのが次の3人。天才サッカー少年の玲に、IQ200で巧みにC言語を操る浩一、 そしてゴスロリ少女・紅葉。やがてエルリストンを飛び出し、それぞれの道を進んでいく彼らですが、その絆は不変。恵都の再生・成長を描くこの物語は、常に彼らとの関わりと共にあります。もちろん恋愛展開もあり。恵都が想う相手は、「花より男子」ばりに変化していきますが、精神の成長と共に描かれるので、嫌な感じは全くせず、実に自然。「NANA」のハチとは違うのよ。
結局みんな天才なんじゃん。なんてつっこみがありそうですが、別にこの物語は天才揃いじゃなくても成り立ったと思います。その辺は、そんなに大切な要素じゃない。例えば4人の中では唯一平凡な才能の紅葉は、天才の3人を相手にしても全く気後れしません。自分のできること、やりたいことを見出し、全力で向き合っている彼女は、4人の中でも特別輝いて映ります。 なんていうんですかね、経済学でいう、リカードの比較優位じゃないですけど、どんな人にも勝負できるものってあると思うんですよね、それが派手か地味かの違いはあれど。物語を通して神尾先生は、そういったメッセージを伝えようとしてたんじゃないでしょうか。「花より男子」ばかりがクローズアップされがちですが、「キャットストリート」もなかなかの良作。ぜひ読んでもらいたい作品の一つです。
【男性へのガイド】
→実績のある作家さんの作品というのは、基本的に読みやすいもの。30巻以上ある「花より男子」
を読むのは・・・という方は、こちらから入ってもよろしいんじゃないでしょうか。また登場人物のひとり・峰浩一は、少女マンガでは珍しいタイプの、フツメンで無口なキャラ。ネタではなくガチで描かれているので、人によってはより感情移入しやすいかも。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→オススメです。キッチリ計算された…という感じは薄いものの(神尾先生の作品はこれがデフォ)、淀みない展開から、最後にはしっかりまとめ上げてくるので、読みやすさは抜群。
作品DATA
■著者:神尾葉子
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成16年8月号~平成19年10月号)
■全8巻
■価格:各390円+税
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