
知らなかった
見たくなんてなかった
世の中にはこんなにも
ウソがあふれてる
■高校生の沙希は、嘘が大嫌い。小さい頃に父親が「すぐにまた会える」と言い残し、出ていってしまったことが、いつまでも心の傷となって残っているのだ。けれど今は、すごく楽しい毎日を送っている。女手一つで自分を育ててくれた母親がいて、唯一無二の親友がいて、それに最近彼氏もできた。全てが順調。ところがある日、親友の嘘によって、彼氏とのデートを邪魔されそうになってしまう。「なんで嘘をついたんだろう…」そんな想いを抱えつつ、母親に頼み込み、待ち合わせの場所まで車で急行してもらう。そしてその途中、飛び出してきた子供をよけようとして、電柱に衝突してしまう…
気がつくと、そこは病院のベッドの上。母親は他界し、彼女は一人ぼっちに。それと同時に、「嘘を吐いている人間が、黒く反転して見える」能力が彼女に宿ります。病院で、その能力を自覚し、親戚が会した引き取り手の相談の際に、人間の業の深さを目の当たりに。絶望に飲み込まれそうになる中、彼女の目の前に、突然一人の若い男が表れます。翠と名乗るその男は、どうやら過去に別れた父親の息子、つまり腹違いの兄らしく、紗希をひきとるために訪れたとのこと。彼だけからは嘘を感じなかった紗希は、迷わず翠のもとへ。…という感じで展開していきます。1巻は、事故に遭う直前、ヒロインに嘘をついた親友との話がメイン。

2巻以降はこの二人の関係がメインになるはず。さてどんな展開が用意されているのやら。
この能力を広いフィールドで使って、大規模な物語に…という方向にはいきません。あくまで「嘘」と「人と人の繋がり」をテーマに描いていきます。1巻でメインとなるのは、虚言癖のある親友とのお話。それ自体は1巻で一段落し、2巻以降は、引き取り手である翠くんとの関係について、主に描かれていくと思われます。お話のイメージとしては、「サトラレ」を、良い意味で二周りくらいスケールダウンさせたような感じ。能力の差というよりは、ヒロインの行動・交遊範囲の差じゃないかな、と思います。この後どういう展開になるかはわかりませんが、この能力を持て余すような流れにはならないでしょう。2巻への繫ぎ方が実に絶妙で、こりゃ次も読みたくなるよね。
【男性へのガイド】
→この能力ありきで読みはじめてしまうと、男性読者には少々退屈かもしれません。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→ワンパンチ欠ける印象も、話の展開がスムーズで、設定を持て余している感もなく、上手くまとまった良作となっています。追いかける価値はあるんじゃないでしょうか。
作品DATA
■著者:寄田みゆき
■出版社:講談社
■レーベル:KDデザート
■掲載誌:デザート(平成21年4月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
■購入する→Amazon