
彼女の手の温もり
今でも夢に見る
ぼくは なぜ あの手を
放してしまったのか
■アメリカに住む少女・黒城みちるは、フィギュアの選手だった両親の影響で、幼い頃からフィギュアスケートを習っていた。シングルスケーターとしての練習を重ねる彼女だったが、心のうちではアイスダンスに憧れていた。そんなみちると一緒にスケートを習っていたのが、ハーフの少年・礼音。みちるのわがままに付き合わされるように、練習の合間を縫ってアイスダンスを習い始める。そんなある夜、みちるの身にとある出来事が降りかかり…
「君はペット」でおなじみの小川彌生先生の連載作品です。物語は、あらまし紹介にあるように、アメリカから始まります。そこで出会った、みちると礼音。まだ小学生のふたりは、無邪気に少年・少女時代を過ごします。しかし突然決まった、みちるの帰国。それを嫌がったみちるは、家出を決行。周囲の人間たちは、彼女の失踪に慌てふためきます。その後無事みちるは発見されるのですが、どうにも様子がおかしい。あんなにも快活だった彼女が、まるで感情を失ったかのように大人しくなってしまっていたのです。さらに翌日、彼女達を教えていたコーチが、変死体となって発見。混乱のままに、みちるの帰国の日は訪れます。そして時は流れ、6年後…みちるは新進気鋭のスケーターに、一方の礼音は、バレエダンサーとして日々練習を重ねる毎日を送っていた…という流れ

このシーンが描かれて以降、どんなことがあってもみちる擁護派にまわった私。ラブコメすぎだろーが!
さて、ここまでの説明でわかるかと思うのですが、単純なスポーツ作品ではありません。スケートに打ち込むヒロインと、それを支える人間たちとの関係、そしてトラウマとして残るヒロインの過去…この3つが交錯し、さまざまな味わい方のできる美味しい作品になっています。ちなみにスケートの種目は、シングルスではなく、アイスダンス。どうにもシングルススケーティングが嫌になってしまったみちるに、母親がアイスダンスを薦めたことがきっかけになります。礼音はスケートを止めているので、側から支えるという立ち位置。バレエのスキルアップのためにアメリカから日本へ渡り、そこでみちると再会することから物語は本格始動していきます。
過去のトラウマによって、かなり不安定で取っつきづらいヒロインのみちる。こりゃ好き嫌い別れるだろうなぁ…。ただ個人的には好きですね。心に傷があるとはいえ、ちょっと節操がないとは思いますが、この甘え方をリアルでされたら結構くるものがあるんじゃないですかね?見ためも良いって設定ですし、なにより久々に再会した幼なじみですし。ってこれはあくまで礼音的な立場から語っているわけなんですが…。
この作品、スポ根・ラブコメ・ミステリーで3分割するならば、4:4:2ぐらいの魅力じゃないでしょうか。引っぱり具合はミステリーで大きい気がしますが、何があったかなんて明々白々。で、それを恋愛・スポーツにどう生かすかが大切なわけで、やっぱり結果として効いてくるのはそこの2つなんじゃないかな、と。あ、小川先生らしく、笑わせるとこはしっかり笑わせてきますよ。その辺も、安心の小川クオリティ。
【男性へのガイド】
→描かれるのはみちるについてですが、視点自体はその多くが礼音なので、男性は入りこみやすいはず。笑いの混ぜ方も上手いですし、読みやすいんじゃないでしょうか。ヒロインがネックっちゃあネックですけど。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→さすがお上手。物語を面白くする方法を知っています。当然オススメ。
作品DATA
■著者:小川彌生
■出版社:講談社
■レーベル:KC Kiss
■掲載誌:Kiss(2006年No.7~連載中)
■既刊6巻
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