
吸血鬼の僕でも
願いはいつか
叶うだろうか
君の心を
手に入れられるだろうか?
■平凡な女子高生・奈波十久子の幼なじみ、安倍マリアは、世界最後の純血種吸血鬼。しかしその仰々しい肩書きとは裏腹に、マリアは地域密着型吸血鬼を目指す、とっても素直で善良な吸血鬼なのだ。加えて純血というのが裏目に出て、本人はいたって軟弱。太陽にあたれば倒れ、ニンニクを少しでも摂取すれば倒れ、十字架や聖書を見れば倒れるといった調子で、その度十久子に介抱されている。種族をこえた2人の、世界で一番優しい吸血鬼コメディ、ここに開幕!
ちょっとだけ力持ちだけど、他は至って普通の女子高生・十久子。容姿端麗、頭脳明晰、性格は至って善良、けれど実は世界最後の純血種吸血鬼・安倍マリア。そんな幼なじみ2人を描いた、ラブコメディです。いや、ラブ要素はまだ薄いかな…。さて、主人公のひとりであるマリアくんですが、世界で確認されている、最後の純血種吸血鬼の一家・安倍家のひとり息子として、非常に有名。絶滅危惧種指定はもちろんのこと、世界中にマリアファンが存在しており、彼の身はいつでも狙われています。単純に物珍しさから彼を捕らえようとする者もいれば、彼を心から崇拝している者、またその容姿からミーハーなファンまで、その層は様々。そんな輩たちからマリアを守るのが、幼なじみの十久子。マリア自身で守れれば良いのですが、純血というのが祟って非常にうたれ弱い上に、十久子が異常な身体能力の持ち主ということで、いつも守るのは十久子という感じ。

むちゃくちゃ真面目で素直でお人好しな性格。とにかく押しが弱いので、損することもしばしば。
一応ラブコメに分類されるのですが、ヒロイン・十久子が恋愛に恐ろしいほど鈍感で、なかなか恋物語は進行しません。マリアは出会ったとき(5歳)から十久子が好きで、以降ずっと一方通行に想い続けているという状況。本当であれば人間のサイクルに合わせた生活などしなくても良いのですが、十久子とずっと一緒にいたいという願いがあるため、頑に人間界に固執します。その想いの強さは時に、断血しさらには弱点克服を目指すなんて暴走まで呼び起こします。要は種族の違いというコンプレックスをどう乗り越えるかというところに焦点が当てられており、その想いは、幼なじみという強い絆の中に、ひっそりと影を落とします。基本的には明るく楽しいコメディなのですが、マリアの優しくも切実な想いが要所要所で差し込まれることで、一辺倒にならず物語に深みを与えるという感じ。なんにせよ、気持ちの良い作品でございます。
ってなんだか激弱な吸血鬼みたいな印象になってしまいましたが、マリアの持ちたる力はなかなかのもの。純血故に、強みも弱みも二倍みたいな認識で良いと思います。ただ生活スタイルがもっぱら人型なので、弱点ばかりが浮き彫りになるという。今後はラブコメな感じがどんどん出てくるんでしょうね。
【男性へのガイド】
→第3者視点で楽しめるコメディ。読みやすさは保証しますが、作品に入り込めるかはその人次第。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→オススメしても良い水準だとは思いますが、吸血鬼物語は人から隠れてこそっていう考え…というか好みがあるので。ただ同じレーベルの「ヴァンパイア騎士」(→レビュー)よかは断然好き。
作品DATA
■著者:椎名橙
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:ザ花とゆめ(平成20年1/25号~5/25号),花とゆめ(平成20年22号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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