
「好き」
それは心が強くなれる魔法。
■中2の春、新学期と共に新しい学校へ入り直した橘聖姫(ひじき)。新たな環境に、不安と期待に押しつぶされそうになりながらも、努めて明るく振る舞う。そして気がつけば、新しい友達もたくさん出来て、クラスにも溶け込めた。今度の学校では、毎日楽しく過ごせそう。けれど時折、不安な心が顔を覗かせ、くじけそうになる…。そんなとき、なぜかいつもそばにいるのは、1人の男子・宝来空木。無愛想だから、最初は敬遠していた聖姫だったけど…!?
台詞抜粋ですが、帯のフレーズがあまりにもしっくり来ていたので、そちらを使わせてもらいました。ヒロインは、中2の春に転入してきた橘聖姫。根は非常に明るく活発な子なのですが、前にいた学校でイジメに遭ったことから不登校に。その影響から、他人からの視線を感じると発作が起きてしまうという状態。そんな状態から抜け出すため、心機一転転校を決意したという流れ。その先で出会うのが、クラスでも一匹狼的な存在の隣の席の男子・宝来空木。非常に頭がよく、無愛想。そのため、クラスメイトからは敬遠されがちの彼ですが、なぜか聖姫が不安定になりそうな時にいつも近くにおり、彼女を助けてくれます。根は優しいんですよ。ただ人付き合いが面倒くさいってだけで。

二人だけの場所、二人だけの時間。長い時間大人数の中にいるのが辛い彼女にとって、この場所は安らぎの空間となる。やがて“この場所”ではなく、“彼の隣”という場所が、安らぎの空間に変わっていくのですが。
中学1年生の一年間をまるまる棒に振った聖姫にとっては、友達がいて、一緒に行事に参加するというだけでも感動できる出来事。単純に恋愛だけを追い求める作品ではなく、クラスメイトとの関わりあいの部分にも焦点を当てた内容になっています。とはいえ最後は空木くんがかっさらってくんですけどね。馴染んだ弊害ではないですが、1巻終盤ではクラスメイトとの間に確執が(確執といっても些細なことではありますが)。再びイジメの憂き目に遭いそうになっています。2巻以降、空木くんとの恋模様と同時並行に、この出来事について描かれていく予定。さてどういう風に絡めていくのやら。楽しみですね。中学が舞台なので、こうしたイジメは往々にしてありえると思われ、それなりにリアリティもあるのかな。最終的には「友達ごっこ」(→レビュー)と「ココにいるよ!」(→レビュー)を足して2で割ったような雰囲気の作品になっていくんじゃないでしょうか。
前作「ギリコイ」(→レビュー)は、クラスの中心的存在の二人の恋物語でしたが、今作はどちらかというとクラスの中心からは外れたポジションの二人の恋物語。故に派手さは落ちますが、その分、より等身大の恋心が描かれているように思います。核になる部分は同じかも知れませんが、こういう形で触れ幅を持たせてくる辺はなかなか立派。作者さん共々、これは期待したいですね。
【男性へのガイド】
→小中学生向けですが、大人でも楽しめる下地はあります。恋愛モノの少女漫画が好きな方へ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→少女向けの良作恋愛マンガ。☆4つぐらいが妥当かもしれませんが、こういう作品は、私の少女マンガ体験の原点でもあるので、必要以上に肩入れしてしまいます。全力でプッシュします。
■作者他作品レビュー
山田デイジ―「ギリコイ」
作品DATA
■著者:山田デイジー
■出版社:講談社
■レーベル:KCなかよし
■掲載誌:なかよし(2009年4月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
■購入する→Amazon