高須賀由枝「グッドモーニング・キス」(1)


吉川
結婚しよう…か


■4巻発売しました。
　中学時代の同居生活を経て、今は大学に通いながら半同棲中の、菜緒と上原くん。このことをずっと両親に秘密にしていた菜緒だったが、ある日突然なんの連絡もナシに父親が訪れてきた。さらに運悪く、その場に上原くんが居合わせ、全てバレてしまう。激怒した父親は、菜緒を田舎に連れ帰ってしまうが…!?

　りぼんで人気を博した同居ものラブコメ「グッド・モーニングコール」(→レビュー)の続編です。連載開始時中学3年生だった二人が、大学生になって帰ってきました。掲載誌も、りぼんからクッキーに替わり、ちょっぴり大人の恋愛模様を描いていきます。二人の馴れ初めについては、「グッドモーニング・コール」のレビューに譲るとして、ここでは既読を前提としてお話をしていこうと思います。前作未読の方でも楽しめるようには出来ていますが、やはり前作を読んでいたほうが良いのではないかな、と。
　
　大学生になった二人ですが、今回のテーマはどーんとでっかく「結婚」でございます。本気かどうかはわかりませんが、書店のPOPかポスターかに「二人を結婚させたくて、戻ってきました」的な高須賀先生のメッセージが書いてあったので、最終的にはそこに向かうと思われます。とはいえ中身はなんにも変わっていない二人。菜緒は相変わらずの能天気ですし、上原くんは相変わらず食と金にウルサい貧乏苦学生。「結婚」というワードは出てくるものの、そこまでの道のりは果てしなく長そうです。ちなみにお互い大学は別ですが、道を挟んで向かいという立地。これ絶対上原くんの志望校を聞いて、菜緒が狙ったに決まってますよ。恋愛本位な菜緒ならやりかねないですよ、うん。



『～キス』では、脇役たちが今まで以上に輝いている。視点の切り替えなども上手で、高須賀先生のキャリアの積み重ねが強く感じられるようになっています。菜緒と上原くんはもちろんのこと、まりなとみっちゃんの恋の行方についてちゃんとした結末を用意してくれると、個人的は嬉しい。


　続編をここまで読んでの感想なんですが「なぜ再開した」という思いが強いです。いや、別に再開自体はいいんですよ。ただメインの二人が全く成長していないってのが、どうなの、と。りぼん時代の雰囲気をそのまま…というのも良いかもしれませんが、せっかく大学生にしたのだから、その分は成長していて欲しかったし、二人の関係にも多少の変化が生まれていて欲しかったです。中身がそのままなのに、突然「結婚」なんてワードが出てきても、あまりに現実感が無いというか。夢見がちな中学生が、初めての恋愛成就に舞い上がって「結婚」なんて言葉を口走っちゃう感じ、わかりますか？要は稚拙な感じ。菜緒のキャラだったらそれでもアリなんですけど、それに引きずられるように上原くんが…。別に「結婚」をぶち上げなくても良かったんじゃないかなぁ。菜緒だったら、別にもっと小さいことでも、事を大きくして話を盛り上げてくれると思うんですけど、どうでしょう。
　
　話が逸れますが、稚拙さからくる「結婚しよう」発言が許されるのは、中学生までだと個人的には思っているんですよね。だから『耳をすませば』は「青いなぁ…(笑)」と全然受け入れられるんですが、『とらドラ!』の結婚発言では一気に冷めてしまうという（あ、でも『とらドラ！』は大好きですよ、はい）。それを大学生が言ったりしたらもうね…。って、なんか文句ばかりになってしまったなぁ…。


【男性へのガイド】
→『～コール』をご参照ください。
【私的お薦め度：☆☆☆　　】
→据え置きで展開するのであれば、評価を下げざるを得ないです。どうしたってあの二人だけでは食傷気味。ただそれに反比例するように、脇役たちのサイドストーリーがなかなか面白い。そちらに期待しつつという感じでしょうか。


作品DATA
■著者：高須賀由枝
■出版社：集英社
■レーベル：りぼんマスコットコミックス
■掲載誌：クッキーボックス(平成18年初夏号～連載中)
■既刊４巻

■購入する→Amazon／bk1