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2009.08.07
31791999.jpg茶屋町勝呂「咎狗の血」(1)


お前の仕事はイグラに勝ち
麻薬組織ヴィスキオの支配者   王(イル・レ)を倒すことだ



■7巻発売しました。
 戦後退廃した国・ニホンのかつての首都・トシマ。復興のために東西に分断されたこの国の、中間地点にあるこの都市は、かつての栄華が見る影もないほどなくなり、流れ者が集まる無法地帯と化していた。そんなトシマを象徴するのが「イグラ」。巨大麻薬組織が開催するそのゲームは、殺人OKのストリートファイト。優勝すると、大金と共に支配者の座につくことが出来る。そんなイグラに参加する青年が一人。彼の名前はアキラ。殺人の罪で拘束された彼は、イグラに優勝することを条件に、無罪放免となることが約束されている。負ければ死だけが待っている。生き残るためには、勝ち抜くしかない。果たしてアキラの運命は…!?

 読むのにありえないぐらい時間がかかってしまいました。BLゲームが原作。退廃した世界舞台に繰り広げられる、殺人ゲームの模様を描いたお話。舞台背景を説明するためだけに1話まるまる使うなど、かなり複雑な設定がされているのですが、詰まるところ、スラムで開催されているストリートファイトで優勝して、開催している麻薬組織をぶっ潰して、無罪放免を勝ち取るというのが軸。主人公は、殺人罪で投獄されていた青年・アキラ。殺し無しのストリートファイトで優勝した過去が買われ、この条件が提示されたという形。しかし一筋縄でいかないのがイグラ。何でもアリのバトルが繰り広げられ、また参加者達も狂気に満ちた者達が大半を占めます。BLゲームが原作ですが、テイスト的にBLが感じられるだけで、あからさまな方向には行きません、御心配なく。


咎狗の血
独特の絵柄。舞台設定と非常にマッチしていると思います。


 一応大筋はあるものの、脇を固めるサイドストーリーもまた複雑。参加者達の過去や、麻薬組織の裏など、描こうと思えばいくらでも描けまっせという状況。なんとかそれをセーブしているものの、さすがに抑えきれないのか少しずつ漏れていっており、状況把握はなかなかに難解。スタイリッシュだとは思いますが、かなり読み手を絞るだろうなぁという感じ。バトルメインですが、バトルのシーンを売りにしているのかと言われると、それは違う。かなり血なまぐさいシーンも多いのですが、肝心のバトルシーンはいまいちスピード感に欠ける気が。悪趣味とか言ったら怒られそうですが、そういうものが好きではない人には「誰得…」という感が強くなりそう。魅せる部分はあくまでストーリー展開と人間模様。その辺はやっぱり女性向けレーベルという感じで、妙に納得してしまいました。これバトルメインだったら、ちょっとクセのある少年マンガですもんね。


【男性へのガイド】
→女性は出てこないですけど、いいですか?こういう状況に心躍る男性ってのは、少なからずいそう。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→作品としての出来の良さは言うことないのですが、絵柄といいストーリーといい、全体的にクセが強めでかなり読み手を選びそう。読み応えは抜群ですけど。


作品DATA
■著者:茶屋町勝呂
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOG COMICS
■掲載誌:B's-LOG(2006年3月号~連載中)
■既刊7巻

■購入する→Amazonbk1

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