
そうだった
ぼくは少女に
“天使”を見たんだ
■“名人”の称号を持つ職人達が、丹誠込めて作り上げた“生きる人形”それが観用少女。日に3度温めた上質のミルクを飲み、肥料として週に1度砂糖菓子を食べる。トイレ・着替え・入浴も自力で可能だが、言葉を発することはほとんどなく、意思の疎通は表情とジェスチャーで取る。そして品質維持の際に、一番重要な要素となるのが、持ち主の愛情、愛情を感じることが出来ないと、途端に元気がなくなり、やがて枯れてしまう。しかしたっぷりの愛情を注いであげると、極上の微笑みを返してくれる。その微笑みのために人々は、ありえないほどのお金を使い、彼女に愛情を注ぎ続けるのだ
各所で評判が良く気になっていたのですが、今回完全版が出たということで購入してみました。なるほど、これは面白いですね。極上の環境と、持ち主の愛情を糧に生きる観用少女。そんな観用少女たちをめぐる、持ち主たちの人間模様を描いたオムニバス作品となっております。最初はロリコンチックな方面で、少女の美しさに溺れていく男達の悲哀を描いていく作品なのかな、なんてイメージしていたのですが、後半に進むに連れてそういった要素は薄くなってきて、むしろ人間同士の感情の触れ合いに重きを置いて描かれるようになっていきます。この使い方がまた絶妙。独特の世界観でありながら、描かれる核となるのは非常に身近な感情で、そういった舞台設定を用意するからこそ際立つのかな、という気も。ってまだ1巻しか読んでいないので何も言えないのですが。

美しさだけじゃない。与えた分だけ、笑顔を、愛情を返してくれる。だからこそ人々は彼女達に夢中になる…と思うんです。
この観用少女、人間のようで人間でないという設定がある時点で、すでに夢物語のような存在なのですが、その性質がまた、人間達の欲求を具現化したような存在だなぁ、と。観用少女は持ち主の愛情を糧にして生きるのですが、それに足るほどの愛情を持ち主に還元してくれます。この関係が、実に理想的な夢物語。自分の注いだ愛情が全て受け取られ、それが形となって100%返ってくる。人間相手の実生活では、まずありえないシチュエーションです。愛情を注いでも、それを受け取ってくれるとは限らないし、それを返してくれるとは限らない。そんな世知辛い世の中で、自分の注いだ愛情を、そのまま全額返してくれる観用少女の存在というのは、まさに天使のような理想の存在。彼らが観用少女に大枚をはたくのは、なにもその見ための美しさだけではないのだな、という風に感じました。だからこそ、観用少女と人間、1対1の物語だと、優しくも残酷なお話になってしまうわけで、そうならないために人間を複数用意して、様々な感情を描くのだな、と勝手に納得してしまったのです、はい。なんかよくわからない説明ですね、すみません。とりあえず一読の価値はありますよ、ということです。
【男性へのガイド】
→マンガ好きに贈る作品って感じかな。好き嫌いは別として、男性でも読めると思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→評判の良さに納得。なかなかボリューミーな内容になっていますし、800円でもお買い得感があります。
作品DATA
■著者:川原由美子
■出版社:朝日新聞社
■レーベル:ソノラマコミックス
■掲載誌:眠れぬ夜の奇妙な話(1992年Vol.10,1994年Vol.18),ネムキ(1995年Vol.23~)
■既刊1巻(全3巻の予定)
■価格:800円+税
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