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2009.08.16
07207185.jpg藤原晶「恋がヘタでも生きてます」(1)


好きになったその男性と
バラ色の未来が待ってると思ってた   



■3巻発売しました。
 茅ヶ崎美沙25歳。某総合商社で働く、バリバリの営業ウーマン。男性顔負けの、エネルギッシュな働きぶりで、所属する営業部ではいつも売り上げナンバーワン。次期主任候補との噂も出てきた。また仕事だけでなく、顔良しスタイル良しと、なかなかの美人さん。しかし恋愛スキルはまるでなし。甘えられない、誘えない、プライドが高い…。そんな彼女の前に、ある日素敵な男性が。毎朝犬の散歩をしているサワヤカイケメンで、相手も満更でもなさそう。ところが後日、衝撃の展開が…なんとその彼、彼女の会社に転勤してきて、さらに彼女が就く予定だった主任のポストに代わりにおさまることになったのだ。理想の相手が、自分の一番大切なものを奪っていった…恋と仕事、順風満帆だったはずが一転…!?

 一方美沙の大親友で、一緒にルームシェアをしている榎本千尋は、結婚の話が出た矢先、彼氏の浮気が発覚。このまま別れるか、それとも彼を許すか…。美沙と違い、子供好きの家事好きで、とっても女の子らしい彼女は、いまだにどちらにも踏み出せずにいたが…!?

 読んでいると、美沙だけがヒロインのように思えるのですが、これ美沙と千尋のダブルヒロインなんですかね。裏表紙の説明を見るとそんな感じが。お話は、恋がヘタな女性・美沙と千尋の涙あり笑いありの恋愛模様を描いたラブコメディーとなっています。美沙のお相手となるのが、偶然街中で出会い、後日まさかの再会を果たすやり手営業マン・雄島佳介27歳。おあつらえ向きに、社長の甥だったりします。美沙と違いガツガツせず、スマートに物事をこなす佳介に、彼女のフラストレーションは上昇。ところがそんな彼女の気持ちはお構いなしに、積極アプローチをかけてくる佳介。気に食わないけど気になる…そんなやきもきした気持ちを抱えたまま、毎日を過ごしていくようになります。
 一方の千尋は、婚約者の浮気に悩みます。基本お人よしのバカなので、彼の嘘をついつい信じてしまい、挙句全く悪くないのに、自分を責めてしまうという感じ。そんな中出会う、少しぶっきらぼうな男の人。彼が実は美沙のライバルだったりと、人間関係はある程度狭い中での展開。個人的にはこの二人のやりとりを見ているほうが好きなのですが、なかなかシーンは増えないという状況。

 佳介は、プチコミスタンダードの、強引系ヒーローではなく、どちらかというと物腰は柔らか。但し肝心なときはビシッと攻めてくるので、今ひとつよくわからん。たぶん変人という言葉が一番しっくり来るんじゃないでしょうか。こういうキャラは予想外の動きを見せてくるので読んでて飽きることがなくて良いですね。多分一緒にいたらすごくイラつくんでしょうけど。また美沙は、「仕事がデキル」という触れ込みのようですが、デキルというよりは、仕事バカという感じ。男性が、「仕事がデキル」という構えで読むと、その辺で若干の違和感を覚えるかも。基本的にプチコミのお仕事ものは、お仕事の部分に面白いほどリアリティがないわけですが、この作品も多聞にもれず。あくまで仕事は、ヒーローの魅力を描くだけの道具なので(誤解を生みそうな表現ですけど)。だからそんなにリアルじゃなくて良いのです、こういう場合は。良いことも言ってるんですけどね、いかんせんそれを描くだけの舞台設定にないという。


【男性へのガイド】
→男性が読むのであれば、このヒロインを受け入れられるかがひとつのキー。ノリの部分では問題なさそうですが、楽しむまではなかなか…。
【私的お薦め度:☆☆   】
→ヒロインが二人である上に、お仕事と恋愛の比率が半々程度で、今ひとつのめりこめない感じが。ただそれぞれの要素がしっかりと形作られているので、読んでいて齟齬が気になるということはないです。巻を重ねれば馴染むのかな。



作品DATA
■著者:藤原晶
■出版社:小学館
■レーベル:プチコミフラワーコミックス
■掲載誌:(2008年3月号~連載中)
■既刊3巻


■購入する→Amazon

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