
思い出したのは
あの日出逢った
優しく暖かい星
■女子高生の真琴は、自分の「男顔」にコンプレックスを持っている。それに加え、身長は180センチ。小学校の演劇ではなぜかロミオの役を射止め、中学校ではファンクラブができ、高校では王子と呼ばれ女子からモテモテ。先日中学校のときから好きだった男の子に告白したら、「女じゃないから」とフられました。自分のこの顔が、この身長が疎ましい。涙に暮れる真琴だったが、見麗しい王子が彼女の前に現れ、名刺とハンカチを差し出し去っていった。彼に再び会いたいと、名刺の住所を訪ねてみると、そこは「男装喫茶」…!?
男顔と高身長にコンプレックスのある女子高生が、男装喫茶で働くことによってコンプレックスを克服していくというお話。一応「喫茶」ではあるのですが、夜間も営業しており、その時間にはショーも開くなど、夜のお店的な面も強いです。カフェの名前は「エトワール」。コンセプトはフランスと宝塚。それゆえ従業員は、ことあるごとにフランス語を使い、それぞれ“組”に所属しています。ヒロイン・真琴をスカウトしてきたのは、オーナーの子どもで、お店で唯一どの組にも属さない事実上のトップ・優雅。女の子らしくなりたい真琴は当然最初は嫌がる(男装は理想と逆行するものだから)のですが、優雅の罠にはまり働かざるを得ない状況になってしまいます(バカラのグラスを割っちゃうように仕組んだ)。素質は一流だが、気持ちは最悪という地点からのスタート。そこから従業員たちとの触れ合いを通して、自分のコンプレックスを、個性・長所として捉えていくようになります。
「桜蘭高校ホスト部」(→レビュー)に似た感じのお話と言えば、想像しやすいかもしれません。ただこちらはお店のコンセプトがよりハッキリしている上に、緩さよりも耽美さを追求するような作風なので、とっつきにくさはこちらのほうが上でしょうね。また、この設定だと男がいないじゃないかという指摘があると思うのですが、実はオーナーの子ども・優雅が男で、お店の手伝いをするために「男装女」のフリをしているという設定があります。1巻の時点では恋愛云々という展開はありませんが、ゆくゆくは優雅と真琴とで展開していくのでしょう(現時点ではまだ「憧れ」の感情が強い)。読んでいて、パリジェンヌでタカラジェンヌという細かいコンセプト設定は必要なのか?なんて思ったりはするものの、恋愛に関しては優雅一本でスッキリした構図ですし、一貫したテーマとして「コンプレックスの克服」が見えているというのは、非常に分かりやすくて好印象。また各話の入りと引きで、劇調のモノローグを挟み込むあたりなどからは、この作品に対する作者さんのこだわりと愛が伝わってきます。
【男性へのガイド】
→ほとばしる耽美さは、男性にとって高いハードルとなって立ちはだかる。タカラヅカ的なものがOKという方であれば、まず問題なく読めると思いますが。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ホスト部に比べれば、楽しさも受け皿の広さも劣る。とはいえ一貫してテーマが見えているのはとても印象が良いし、ストーリー的な広がりも期待できそうなので。男性には向かんかもしれないですが、女性には結構人気するんじゃないかという予想も込めて。
作品DATA
■著者:宇野紗菜
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(2008年11月号~連載中)
■既刊1巻
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