このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2009.08.27
07226225.jpg碧門たかね「しろがねの王-Fenrir Craft」(1)


だったら   
お前が俺の『右目』になれ



■命を宿した毛皮・フェンリルによって国王が選ばれるこの国・カトルディーナ。その第41代国王に新たに選出された王は、自ら犠牲にして庇った傭兵を『右目』として召し抱えた。この国が中立国家としてあり続けられる理由…王が頑に玉座にあり続ける理由…そして、『右目』が持つ、隠された過去とは…。様々な思いが交錯する中、大国・ゼフィルがカトルディーナ征服を目論んでいるとの噂が…。彼らが今進むべき道が今、明らかにされる   !!

 読み終えてから気づいたのですが、どうやら続編らしいですね。前の巻は、同名のタイトル『しろがねの王』で、そこでは王と右目の出会いについて描かれているそうです。そのため今作では、その辺の説明はまるまるカットされています。
 
 さて、どんなお話なのかと言いますと、戦乱の世を生きる、命を宿した毛皮(オオカミみたいな姿)によって選出された国王と、その護衛の姿を描いたファンタジー。幾つもの国がうごめく中、中立国家としてその地位を築いてきたカトルディーナ。中立国家であるためには、それなりの理由があるものですが、カトルディーナの場合は、ナウシカの巨神兵的な威力を持つ巨大な力の存在が大きく効いています。その力を使えるのは、国王のみで、その国王を選ぶのが、フェンリル。それ故に侵略できない、侵略しても選ばれなければ力を使えないというわけ。ところがその力を、王を人質にとることで得ようとする国が現れます。それが大国・ゼフィル。実は第40代の王はまだ存命しており、どこかに捉えられているという状態。しかし玉座を空けたままにしておくのはまずいということで、急遽擁立されたのが今の王というわけ(もちろんフェンリルには認められている)。


しろがねの王
王城閣下・イセル。彼女自身が城の本体であるという不思議な存在。一迅社の作品の女性は、数が少ないながらも、魅力的な女性である確率が高いです。彼女も素敵。何歳とかそういうのは抜きにしてね。


 とまぁここまで背景を説明したのですが、これらはあくまで背景にすぎないというか。このお話の核となるのは、あくまで王と右目の関係・生き様についてなんじゃないかと思われます。41代目の王は、40代目の王の側近?護衛?で、王が連れ去られた責任を感じ、自ら仮の王に立候補します。彼の目的は、40代目の王の奪還。そしてそんな彼を護衛する右目にも、ちょっとした過去が。ここまで話すとネタバレになってしまうので控えますが、国の情勢というよりは、個々人の関係に響いてくるような問題で、こちらからストーリーが広がるということはあまりなさそうです。とりあえずその二つが軸として動いていくわけですが、要は男たちの“忠誠”についてのお話で、そういったものに魅力を見出せない人にとっては、あまり美味しくないお話になってしまうかもしれませんね。


【男性へのガイド】
→ファンタジー好きだから大丈夫というわけではない。女性向け感が強いです。
【私的お薦め度:☆☆   】
→ストーリー的に齟齬があるわけではないのですが、人間関係に重きを置いているため、現時点では設定の割に話がこじんまりした感じが拭えないというか。主人公たちにハマれるかどうかが鍵。


作品DATA
■著者:碧門たかね
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:XERO-SUM
■既刊1巻
■価格:552円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「ZERO-SUM」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。