
その出会いを ひとりは運命だと直感し
ひとりは ただの偶然にすぎないと直感した
■5巻発売しました。
はるかな昔、争いの絶えなかった二つの種族、人間と幻獣の間で不可侵の誓約が交わされ、それぞれ陽と陰の別々の世界に住む事になった。その際、全幻獣を統べる王は深く愛した人間の女王に己の剣を渡し、彼女と彼女の子孫が危機に陥った時、自分の子孫が必ず助けに行くと誓った。そして三度目の乱世が近づこうとしている今、聖王の血を引く美しき剣士と、孤高の幻獣王が出逢い、物語は新たに動きはじめる
ASUKAコミックスDXということでご紹介するわけですが、まず始めに断っておきます。これ、BLなんです、はい。各所での評価を見る限り、「厳密にはBLじゃないよ」とか「BLテイスト」なんて意見もあるわけですが、少なからずそういったエッセンスが感じとれるという部分では完全に一致しており、そうなったらもう男から見たら「BL」に他ならないだろうなぁ、と。
さてお話なんですが、大昔の争いの末不可侵の誓約が交わされ、陽の人間界・陰の幻獣界の二つに分断された世界が舞台。二つの世界は、何もしない限り常に均衡が保たれているのですが、片方の世界が不安定な状態に陥ると、それに引っぱられるように両者の間のバランスが崩れ、途端に人間と幻獣が入り乱れるようになってしまいます。そしてここ最近、人間同士の戦乱によって両者のパワーバランスが崩れ、最近急に人間界に幻獣が現れる事が多くなりました。そんな中、某国にいるという幻獣を退治するために組まれたパーティーが。そこで、聖王の血を引くアーカンジェルと、幻獣王のウランボルグが出逢い、運命の歯車が動きはじめる事になります。

一応恋情みたいなニュアンスではあるのですが、ウランボルグの表彰があまりに真剣で真っ直ぐな瞳をしているので、それすらも超越した感情にすら思える時がある。
世界観を延々説明してもいかがなものかという感じなので、ここでまとめると、幻獣退治の依頼を進めているうちに、人間界に幻獣を送り込む謎の存在に遭遇し、その謎を解き明かすと同時に、両者のバランスを取り戻すというのが、大筋になります。ただそれはあくまでアーカンジェルとウランボルグの関係を引き立てる要素にすぎず、基本はそれぞれのキャラの過去と心情、そして人間関係について深く描き出していくという趣旨。ウランボルグは、誓約の名の下にアーカンジェルを運命の恋人とするのですが、愛されることなく育ってきたアーカンジェルはその想いを素直に受け入れる事が出来ません。道中の危機を仲間と共に切り抜けていく事で、だんだんと想い想われることに素直になっていくのですが、その際の描写をどう思うかが、この作品を楽しめるかどうかの鍵になります。
序盤からウランボルグの「愛している」が連発されるわけですが、それが男にはなかなか厳しいんじゃないかな、と。一応他のパーティーメンバーとの掛け合いもあるのですが、それがちゃんと描かれるのは2巻以降。そこまで行けば普通に読めないことはないのですが、1巻の壁がやや高いか。テイストとしては、RPGなので、そういったところに魅力を見出しても良いのですが、基本的にパーティーは最初から最強クラスだったりするので、そのことは予め踏まえておいた方がいいかも。またストーリーの道筋に関しては、単純ではないものの明快で、個人的には好印象。ただそういった措置も、あくまで二人の関係をより浮き立たせるためなのかと考えると、この二人に感情移入できない限りは、この作品を存分に楽しむのは難しいのかな、というふうに思いました。
【男性へのガイド】
→これは厳しいんじゃなかろうか。BL耐性ありで、RPG調のハイファンタジーがお好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆ 】
→いやちょっと私には厳しかったです。BL以外のところで見所を探そうと思ったのですが、それらも二人ありきの作りであり、そこがどうにもならんのであったら、もう無理なんだな、と。逆に言えばそれさえハマれば至高の物語を楽しむ事ができるわけで、各所での好評かも納得でございます。
作品DATA
■著者:津守時生/加藤絵理子
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKAコミックスDX
■掲載誌:ビーンズエース
■既刊5巻
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