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2009.08.31
作品紹介はこちら→宮坂香帆「僕達は知ってしまった」


07225728.jpg宮坂香帆「僕達は知ってしまった」(7)


ドキドキして 恥ずかしくて
でもちょっと 期待もあって
すごくすごくワクワクした気持ちになってたのに
なんでだろう なんで今は…
ときめかぬ?



■7巻発売ですよ~。
 ナツメの後押しもあり、着実に二人の距離は縮まっていく、ことりと雪斗。けれどどうしてだろう、なぜか妙な違和感は拭いきれない。雪斗の気持ちがわからなくて不安…松嶋さんの存在が不安…そして自分がどうするべきなのかわからなくてイライラ…。積もり積もった不安は、二人の関係に、思わぬ歪みをもたらす。さらにはヒカル(ドキメモキャラ)に瓜二つの雪斗の兄・雅弥がことりに急接近!?ますます目が離せない、ゲームオタクの地味女子の恋物語   !!

 ってな感じですかね。いつもはあらまし紹介するときは、裏表紙を参考にしているんですが(ネタバレして良い度合いも把握できるので)、今回はそれがないので、ちょっとヘンな感じになってしまいました。巻を重ねる毎に宮坂先生の遊び心が発揮されてきており、今回の裏表紙は、ことりの愛犬・ケンケンの擬人化キャラが、クサい台詞と共に描かれております。正直誰得な裏表紙なのですが、フリーダムさが感じられて個人的には好きです、良かったです。
 
 さて続刊レビューということなのですが、今回はこの作品の魅力について改めて考えてみたいと思います。あと長くなった割には対した事書けなかった上に、まとまってもいないので、知らない方は読みとばすに限りますよ。
 
 まず少女マンガには、ほぼ必ずヒロインのライバルになるキャラが登場するのですが、その代表的なタイプのひとつに、「ヒロインに対して明確な敵意を持ったライバル」というものがあります。正々堂々恋愛レースに参戦し、彼に選んでもらえるよう努力するのではなく、何故かその想いがヒロインを貶める方向に向かってしまうようなキャラ。こういうキャラがいると、ヒロインたちが何もしなくともかってに事件を起こしてくれるので、非常に話が動かしやすく、また悪党を成敗したような気持ちよさも得られるなどのメリットがあり、結構な確率で物語に登場してきます。個人的にはこの“小悪党キャラ”がどうも苦手で、そういうキャラの出てくるストーリーは今ひとつ好きになれなかったりします。性善説を唱えるわけではないですが、そこまで明確な悪意を持って行動する子はそんなにおらんのじゃなかろうか、と。いや実際にはいるのかもしれませんけど、男としてはダマされたままでいたいというか(元も子もないな…)。そういったキャラが出てきてもいいのですが、そういう汚い役回りをさせるのだから、最後はしっかりフォローしてあげてほしいというか。その辺「君の届け」のくるみちゃんなんか素敵だったと思います。
 
 
 さて、この「僕達は知ってしまった」も、これを地で行くベタな小悪党キャラ(原田,松嶋)が出てくる、どちらかというと苦手な要素のある作品なのですが、かなり楽しんで読ませていただいてます。それも巻を重ねる毎にそのワクワク感は上昇しているという。いや、不思議。個人的な好き嫌いは置いておいても、決して特徴的な恋物語を展開しているわけではないと思うのですよ。むしろベタど真ん中みたいな。それが読みやすさを生み出しているのかもしれませんが、それだけでここまで楽しめるかなぁ、と。で、ちょっと考えてみて出てきた個人的な答えが、以下の2点。


①シリアス路線から、よりコメディ寄りにシフトしてきた
 序盤からコメディ要素は埋め込まれていた(そもそもヒロインがゲームオタということ自体ネタの塊みたいなものだし)のですが、それが巻を重ねる毎に加速してきたように思います。というか、雪斗が気がつけば、良い意味で情けないアホキャラに。スタート時はお互い距離がありすぎて、面白い掛け合いがなかなかできなかったのですが、ここにきてうまいことズレる絶妙の距離感を保っており、型にハマった笑いを見せてくれるようになってきました。今後ふたりの距離は一層近づくと思うのですが、果たしてこの絶妙の噛み合なさは保てるのでしょうか。こういった、息の合った息の合わない掛け合いが、個人的には大好物。あと面白リアクションも序盤に比べて格段に増えましたよね。そういった部分がひとつ、この作品の面白さを引き立てているのかな、と。
 
僕達は知ってしまった
空振り。こういう笑いが巻を重ねる毎に多くなってきてます。この絶妙に噛み合ない感じが大好き。


②友達の存在
 恋愛描写は上手いけど、友情に関しては蔑ろになりがち…というのが、少女マンガでは結構多かったりします。最初は友情を描くつもりでも、話が進むうちに友人が恋愛レースに参戦し、気がつけば友情要素はどこかへ行ってしまったなんてこともままあったり。そんな中、この作品は、恋愛と友情の描き分けが非常にはっきりしています。雪斗には真崎涼介という幼なじみがおり、ことりにはナツメという存在が。普通であれば、独り身(であると思われる)の女の子が、ヒロインの恋愛相談(しかも彼氏はなかなかのイケメン)にのるって時点で、ヒロイン>友達のようなパワーバランスになってしまうわけですが、この二人の場合、ことりが地味女子で恋愛初心者であるのに対し、ナツメは恋愛経験豊富(そう)でかつモデルという後ろ盾があることで、絶妙にパワーバランスが保たれています。これからも二人の関係は崩れないんだろうなぁ、と。また雪斗と男友達たちとの関係も、基本常に対等(元々のキャラと、彼女がことりであるということが関係していると思う)で、見ていて非常に安心出来るというか。
 またこの作品の場合、そういった友達と一緒のシーンがとても多く描かれていて、そこもまた他の恋愛モノの作品とは一味違う良さを出しているのかな、と。しかも大抵そういうシーンが挟み込まれるときは、情けなさを出している場面で、それが親近感をさらに引き出している気もしたり。とにかく微笑ましいシーンが多いんですよね。


僕達は知ってしまった
この作品でのナツメの存在ってホントに大きいと思うんですよ。友情云々で話を盛り上げたと思ったら、今度はことりの恋愛をおもいっきり援護射撃してくれるわけで、まさに最高の登場人物です。


 あーなんかよくわからないまま書いてきたのですが、要するに色々なものがシンプルに組み合わさっていて、それが読みやすさや面白さに繋がっているんじゃないかな、と。わかりやすいライバルに、わかりやすいボケ、そして恋愛とセパレートされた友人関係…それが絶妙のバランスで組合わさっている。ま、これからどうなるかはわからないですけどね。ただこれだけははっきり言える。「僕達は知ってしまった」が本領を発揮するのは、ナツメと涼介が登場する3~4巻以降だ!!
 
…なんだこの締め。ちなみに7巻では後半スゴい展開になってます。新キャラも出てきましたし、後半どうなってくるんですかね~。楽しみです。


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