このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] 2009.08.31
07201461.jpg藤村真理「少女少年学級団」(1)


まだ愛とか恋とかよくわからない小学生たちが
もうすぐで
初恋の入り口に立つのです



■3巻発売しました。
 男の子みたいな見ための小学生、中谷遙は、青いランドセルを背負い、野球をこよなく愛する女の子。そんな彼女が転校した先は、男子と女子が敵対し、分裂したクラス。男だから女だから…そんなことはどうでもいいじゃん!と言いたいところだけど、そうは問屋が卸さない。男子のリーダー格・渡とは、野球チームもポジションも一緒で、いつも大げんか。それからそれから、甲子園出場経験のある渡の兄・健には、憧れにも似た淡い恋心を…!?思春期前後の少年少女たちの、何かと波乱アリな小学生ライフ、はじまりはじまり・・・

 思春期前後の小学生たちの日常を描いたストーリー。どうして小学生達を描いた話って、こうも素敵な作品が多いのでしょうか。志村貴子先生の「放浪息子」然り、御徒町鳩先生の「みどりのまきば」(→レビュー)然り…。彼女たちの手にかかると、小学生たちの何でもない日常が、急に色味を帯びて迫り、なんとも言えない心地よい感覚を味合わせてくれます。この藤村真理先生の「少女少年学級団」もそんな作品の一つ。“オトナ”というものを、ときに意識的に、そしてときに無意識的に受け取り成長していく子供たちの姿を、恋愛要素ちょっぴり多めでお届けします。
 
 ヒロインは、野球好きのボーイッシュな女の子・遥。彼女の夢は、プロ野球選手になること。そんな彼女のライバルは、同じクラスの男子・渡。はっきりした性格の遥と、生意気なところのある渡は、学校でも野球でも再三ぶつかりあいます。そんな二人の仲を取り持ってくれるのが、甲子園経験者で、遥かの憧れ、そして渡の兄である健。甲子園経験者ということで、遥や渡から憧れの眼差しでみられている健ですが、実は怪我によって野球の道を断念したという経緯を持っています。物語は、少年少女のキラキラした日常を描き出すと共に、彼らの純粋でまっすぐな姿から、健が自分自身の傷と向き合い、再生していくという要素も持ち合わせています。


少女少年学級団
憧れの存在・健が、遥のことをありのままに受け入れてくれるホームベース的存在になるが、彼もまた、自身に傷を抱え、悩みながら日々を送っている。


 この作品の特徴と言えば、恐らく大人がほとんど介入してこないことが挙げられるんじゃないでしょうか。前述の2作品では、何らかの形でストーリーに成人が絡んでくるのですが、この作品で小学生たちの道筋を示してくれるのは、高校生の二人(遥の姉・忍と、渡の兄・健)。小学生から見れば、高校生ってのは本当に大人です。でも現実ではそうじゃなくて、彼らもまだまだ不完全。健も小学生たちから色々な事を学び取り、成長していくという構造が生まれています。言うなれば、登場人物みんなが未完成なわけで、それ故に生まれる瑞々しさや輝きであるとか、成長を慈しむ感情みたいなものが、非常に心地良いというか。単純にこういう作品が好きってのもありますけど、同じ系統の中にもまた一味違った旨味みたいなものがあるのですよ、ということです。もちろんオススメ。


【男性へのガイド】
→恋愛色は強いものの、小学生の日常を描いた作品というラインは崩していないので、そういった作品が好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→☆4つぐらいが妥当かとも思ったのですが、個人的に好きなので、5つで。こういった話は、女性の作り手に一日の長があると思うのですが、男性でもいけないことはないと思います。でもこういうヒロインでこういう話が描けるのは、もう女性にしか無理。という勝手な意見も添えて。


作品DATA
■著者:藤村真理
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレット
■掲載誌:別冊マーガレット(平成19年11月号~連載中)
■既刊3巻

■購入する→Amazon/bk1

カテゴリ「別冊マーガレット」コメント (3)トラックバック(0)TOP▲
コメント

6巻まで全部持ってますv-237
でも、7巻は、いつ出るのでしょうv-236
早く出て欲しいですねv-87
From: ピクミン * 2010/08/07 22:06 * URL * [Edit] *  top↑
私も6巻まで持ってます(^0^。。。)///
早く7巻見たいです。。。
いつ頃発売されるのでしょうか??
From: サクラ * 2011/01/30 17:02 * URL * [Edit] *  top↑
v-238少女少年学級団大好きですv-238    
7巻買いましたv-221
やっぱり面白いですねv-35
遥ちょーLOVEですv-237v-238
From: ~名もなきお * 2011/05/19 15:15 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。