
まだ愛とか恋とかよくわからない小学生たちが
もうすぐで
初恋の入り口に立つのです
■3巻発売しました。
男の子みたいな見ための小学生、中谷遙は、青いランドセルを背負い、野球をこよなく愛する女の子。そんな彼女が転校した先は、男子と女子が敵対し、分裂したクラス。男だから女だから…そんなことはどうでもいいじゃん!と言いたいところだけど、そうは問屋が卸さない。男子のリーダー格・渡とは、野球チームもポジションも一緒で、いつも大げんか。それからそれから、甲子園出場経験のある渡の兄・健には、憧れにも似た淡い恋心を…!?思春期前後の少年少女たちの、何かと波乱アリな小学生ライフ、はじまりはじまり・・・
思春期前後の小学生たちの日常を描いたストーリー。どうして小学生達を描いた話って、こうも素敵な作品が多いのでしょうか。志村貴子先生の「放浪息子」然り、御徒町鳩先生の「みどりのまきば」(→レビュー)然り…。彼女たちの手にかかると、小学生たちの何でもない日常が、急に色味を帯びて迫り、なんとも言えない心地よい感覚を味合わせてくれます。この藤村真理先生の「少女少年学級団」もそんな作品の一つ。“オトナ”というものを、ときに意識的に、そしてときに無意識的に受け取り成長していく子供たちの姿を、恋愛要素ちょっぴり多めでお届けします。
ヒロインは、野球好きのボーイッシュな女の子・遥。彼女の夢は、プロ野球選手になること。そんな彼女のライバルは、同じクラスの男子・渡。はっきりした性格の遥と、生意気なところのある渡は、学校でも野球でも再三ぶつかりあいます。そんな二人の仲を取り持ってくれるのが、甲子園経験者で、遥かの憧れ、そして渡の兄である健。甲子園経験者ということで、遥や渡から憧れの眼差しでみられている健ですが、実は怪我によって野球の道を断念したという経緯を持っています。物語は、少年少女のキラキラした日常を描き出すと共に、彼らの純粋でまっすぐな姿から、健が自分自身の傷と向き合い、再生していくという要素も持ち合わせています。

憧れの存在・健が、遥のことをありのままに受け入れてくれるホームベース的存在になるが、彼もまた、自身に傷を抱え、悩みながら日々を送っている。
この作品の特徴と言えば、恐らく大人がほとんど介入してこないことが挙げられるんじゃないでしょうか。前述の2作品では、何らかの形でストーリーに成人が絡んでくるのですが、この作品で小学生たちの道筋を示してくれるのは、高校生の二人(遥の姉・忍と、渡の兄・健)。小学生から見れば、高校生ってのは本当に大人です。でも現実ではそうじゃなくて、彼らもまだまだ不完全。健も小学生たちから色々な事を学び取り、成長していくという構造が生まれています。言うなれば、登場人物みんなが未完成なわけで、それ故に生まれる瑞々しさや輝きであるとか、成長を慈しむ感情みたいなものが、非常に心地良いというか。単純にこういう作品が好きってのもありますけど、同じ系統の中にもまた一味違った旨味みたいなものがあるのですよ、ということです。もちろんオススメ。
【男性へのガイド】
→恋愛色は強いものの、小学生の日常を描いた作品というラインは崩していないので、そういった作品が好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→☆4つぐらいが妥当かとも思ったのですが、個人的に好きなので、5つで。こういった話は、女性の作り手に一日の長があると思うのですが、男性でもいけないことはないと思います。でもこういうヒロインでこういう話が描けるのは、もう女性にしか無理。という勝手な意見も添えて。
作品DATA
■著者:藤村真理
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレット
■掲載誌:別冊マーガレット(平成19年11月号~連載中)
■既刊3巻
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