このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [続刊レビュー] 2009.09.02
作品紹介はこちら→高梨みつば「紅色HERO」


07225551_20090902204617.jpg高梨みつば「紅色HERO」(16)



あたしの仕事は
偉大な姉を持つ
名センター神村蕾を止めることだ!



■16巻発売しました。15巻より多く刊行されている作品に関しては、基本的にレビューしない方針をとっているのですが、続刊レビューはいいかな、と。16巻はバレーシーン盛りだくさん。いよいよ盛り上がってまいりました!(もう16巻ですけど…)

 ようやく身辺も落ち着き、盤石の体勢で冬季大会を目指せる事になったのばら達だったが、直前になって思わぬ事実を知らされる。鬼監督・嶋の退職。実家の母親の体調が思わしくなく、つきっきりで面倒を見るために、故郷に戻るのだとか。そうなると、バレーの指導はおろか、教師を続ける事も難しい。これが事実上の、教師生活最後のチームということになる。「教師生活最後のはなむけに、絶対に嶋を春高に連れて行く!」のばら達の、春高への挑戦が始まった…!!

 当初は、桜坂さんの魅力について存分に語ってやろうかと思ったのですが、15~16巻は、とにかくカナコが素晴らしかった。ということで、今回はカナコと嶋の、素晴らしき師弟関係にクローズアップしてみたいと思います…
 
 
 中学時代ハイジャンプの記録保持者だった野田加奈子。陸上を辞め、どの運動部からの誘いも断っていた彼女が、気まぐれにバレー部に入ったのは、全国出場によって一躍校内で時の人になった祐信に会えるという理由から。祐信への想いは、のばらの真剣な想いを知ることですぐにしぼんでしまうのですが、バレーはそのまま続けます。とはいえ練習熱心でないカナコは、そのポテンシャルの割に、いまひとつ力を発揮できずにいました。

 そんなところにやってきたのが、鬼監督・嶋。彼女がもっとも指導に力を入れたのは、エースののばらでもなく、天才セッター・桜坂でもなく、練習嫌いで生意気なセンター・カナコでした。ハイジャンプ記録保持者で、そのポテンシャルは折り紙付き。しかし極度の気分屋で、少しでも上手くいかないと、すぐに投げ出してしまう問題児。そんなカナコに、嶋は人一倍厳しく当たります。
 

紅色1
長所もあるが、同時に短所も多い選手であった。その穴を潰すために、基礎からみっちりトレーニングを積む。基本的に口調の厳しい嶋だが、カナコにはより厳しい態度で臨む。それが=期待の表れ。


 何度も挫けそうになるも、根は負けずギライのカナコ。のばらとの張り合い・支えあいもあり、日々の厳しいしごきに耐え、急成長を遂げていきます。実力でいえば、のばらには遠く及ばないであろう彼女ですが、その姿勢は常に対等。ロッカーには、「のばらよりすげーアタッカーになる」という文字が書かれた紙が貼ってあります。幾度となくのばらの凄さを目の当たりにしてきた彼女が、それでもなお、のばらに並び、超えていこうという気持ちを保ち続けられるのは、彼女の図太い神経だけでなく、他でない、嶋の存在があったからと言えるでしょう。嶋のしごきによる成長の実感と、嶋に一目置かれているという自負(多分これは嶋が狙ってそういう雰囲気を出しているのだろうと思うのですが)があることで、ライバル関係のみだけでは到底続けることの出来ない張り合いを続けることができたのではないかな、と。たぶんのばらだけだったら、ここまで成長していないだろうし、そもそもここまでバレーを続けていなかったんじゃないかと思います。


紅色2
ぼろぼろになったシューズとサポーターが、努力の証。カナコが大会までの間、誰よりも頑張ったというのは、部員全員が認めるところ。


 最初は敵対していたものの、いつしか不思議な信頼関係で結ばれるようになった嶋とカナコ。これからどんどん上手くなっていく…そういう想いがあったであろう彼女にとって、嶋が教師を辞めるという知らせは、まさに晴天の霹靂でした。思わぬ知らせに、「無責任」と不満をぶちまけ、一層反抗的な態度をとるカナコ。嶋がいなくなるという不安感、辛さ、そして、辞めることを隠されていた怒り、不信感…様々な感情が、カナコをそういった態度にさせていました。しかしある日、嶋のデータノートを見ることで、嶋の気持ちを再確認。そして…


紅色3


 手のかかる選手の方が、後々愛着が湧くもの。スポーツものでは選手同士の関係ばかりが注目される作品というのがありますが、こういった師弟関係というのも、スポーツもののひとつの魅力。カナコは16巻で、嶋に恩返しをするように、次々とブロックを決めていきます。まだ大会は始まったばかりですが、これから一つの軸として、チームを支えていく存在になるはず。これからがますます楽しみだ~。ラストがどんな風になるかはわかりませんが、きっと号泣必死だろうなぁ…。恋愛締めではなく、嶋との別れで締めて欲しいと切に願う今日この頃。だってやっぱりこの作品は、バレーをしてこそ光るんだもの。しかも選手全員のドラマを、ちゃんとバレーの中で描いてくる辺り、何気に凄いですよ。だからこのまま、バレーメインで進んでください!それと桜坂さんの活躍の場を増やして欲しいです、はい。


■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「別冊マーガレット」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。