
それは
縁と巡り合いがもたらした
波乱のアイドル生活の幕開けだった
■2巻発売、完結しました。
上原小鳩、16歳。国籍は日本だが、ずっとアメリカで育ってきた。母の死をきっかけに日本にやってきたのだが、その理由は、生き別れの兄を探し出すため。そのヒントは、日本の芸能界にいるということと、体に火傷の痕があるということだけ。あまりの手がかりの少なさに、長期戦を覚悟して日本入り。さぁこれから動き出そうという中で、なぜか芸能事務所のオーディションに参加させられ、瞬く間に所属が決定。先輩の四条尊とコンビを組むことに。さらに研修生ということで、尊と同じ部屋に暮らすことになるのだが、小鳩にはある重大な秘密があり…!?
重大な秘密と言うのは、多分説明しないでもわかると思うのですが、小鳩が男ではなく女であるということ。所属することになった事務所は、いわゆるジャ○ーズをモデルとしたようなアイドル事務所で、いわば女人禁制の男の楽園。それが一度バレてしまえば、大問題に発展してしまいます。そんな彼女の秘密を知っているのは、相方でありルームメイトである、先輩の尊。アイドルとしての高い資質を持ちながらも、激しい好き嫌いと高いプライドが邪魔して、非常に扱いにくい存在として、関係者も手を焼いていました。小鳩が参加したオーディションは、そんな尊の相方を決めるためのオーディション。そこで選ばれた小鳩は、持ち前の前向きさと奔放さで、尊を翻弄。同時にアイドルとしての資質の高さも見せはじめます。

手のかかる後輩(=小鳩)をあてがうことで、尊もさすがに先輩らしさを発揮。ここまで「名コンビ」というフレーズが似あう2人組も、そうはおるまい。
日本に長期滞在しながら、芸能界にいる兄を探すということが目的の小鳩にとって、寮付きの芸能事務所への所属というのは、この上ない好条件。その兄候補も、おあつらえむきに小鳩のすぐ近くにいるという状況で、話はサクサク進む…と思いきや、上手い具合に横道に逸れさせたり、「小鳩、アイドルへの道!」みたいな路線を持ち出し、意外にも余裕のある作り。それなりの早さで物語は進行するものの、忙しさは感じさせず、爽快感だけ残し、非常に読みやすくなっています。
2巻で完結というわけなのですが、打ち切り…なんでしょうか?終わり方は何となく打ち切りでありがちな展開なのですが、無理をしている感もない(というか、これはこれですごく良いと思う)ので、そういうワケでもないのか。正しく言うのなら、「もっと伸びても良かった」という感じでしょうか。同じ白泉社で、みな掲載誌は異なりますが、芸能もので「スキップ・ビート!」(→レビュー)、男女逆転芸能もので「悩殺ジャンキー」(→レビュー)、男装もので「桜蘭高校ホスト部」(→レビュー)と、既視感のある設定である以上に、被った相手がみな主力級であったという不運(?)。これが結果としてこの作品を短命にしてしまったのではないかという穿った見方。何はともあれ先生の次回作に期待です。
【男性へのガイド】
→クセのない話運び&キャラ。読みやすいんじゃないでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→既視感のある内容も、全体的に爽快感のある内容で、同時に読みやすさも完備。締め方もなかなか良く、まずまず満足できる仕上がりになっているんじゃないでしょうか。個人的には結構お気に入り。
作品DATA
■著者:槻宮杏
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成20年3月号~平成21年7月号)
■全2巻
■価格:各400円+税
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