
私が教えてあげようか
それはハリボテの鳥だって
そしたらどこへだって
飛んでいける?
■読切りなど9編を収録。ではいつも通り、表題作をご紹介。
ある日、いつもの学校の中に、見慣れぬ制服を着る生徒が何人か混じっていることに気がついた羽田翔。どうやら近くにきているサーカス団員の少年少女たちが、ひと月だけ転入してきているらしい。もう彼らが転入してきてからだいぶ経つのに、翔がそのことに気がつかなかったのは、2組の南に夢中だから。ところがある日、サーカス団員の一人の少女と出会って…!?
作者の草間さかえ先生は、主にBLのフィールドで活躍なさっている作家さんで、flowersにて一般向けの作品を描いたものが、この度一冊のコミックスになって登場です。単行本リストを見ると、どこの出版社で固定というわけではなく、様々な場所で描かれているようですね。先生自身がキャラバン…なんてあんまり上手くないか。さてこちらの作品、実に9タイトルものお話が収録されています。一応全編”比良坂町シリーズ“ということで統一されており、内容としても繋がるお話もあるのですが、全部が全部そういうわけでもなく、判断が難しいところ。明確に”比良坂町シリーズ“だとわかるのは、喋る黒猫と時計店の店主がメインとなる、どこかホラーテイストなファンタジックなお話。表題作をはじめ、ファンタジーや”比良坂町“との関連性を感じさせないものも幾つか収録されており、シリーズとか短編集とかいうより、ひとつの作品集として捉えるのが良いのかも。軸となる”比良坂町シリーズ“に、それ以外の作品が所々に混ぜ込まれた、サンドイッチ状態になっています。

「本日はお日柄もよく」より。BL作家だからといって、男性の心情描写ばかりを得意としているわけではありません。女性キャラメインのお話もまた、非常に素敵な雰囲気となっております。
一般誌に移籍してくるBL作家さんの特徴として、「キャラクターの感情の機微を、非常に繊細に描き出す」ということを散々挙げてきたわけですが、この草間さかえ先生もご他聞に漏れず。特に、動揺や絶望など、揺れ動きの大きい感情の変化を切り取り描くのが、抜群に上手いです。ストーリーに関しては、余計な説明が一切されないので、多少わかりづらいところがあるかも。基本的に派手さはないですが、だからこそ、持ち味が活かせるってもんです(まぁ草間先生のBL作品読んだ事ないので、実際はどうなのかわからないんですが)。
軸は日常…かと思いきや、”比良坂町シリーズ“の核となる人物(黒猫と時計店店主)に関するお話は、ファンタジックというか、ホラー要素の強い一風変わったお話に。どちらが先生のメインフィールドなんだろうか…。人と人との関わりあいの中で、感情を描き出しているほうが、個人的には好みなのですが、こちらはこちらでなかなかの出来。これからもflowersで描くのかな。楽しみですね。またメガネ男子大盛りですので、メガネ男子フェチにはたまらん内容になっているかも。個人的にはメガネ大盛りすぎて、キャラの見分けがつかなかった…。
【男性へのガイド】
→様々なテイストの作品が収録されているので、一概には言えないのですが、読みにくいってことはまずないと思いますよ。同じ味ばかりの少女マンガに飽き飽きした方などにはうってつけかもしれません。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→全部が全部気に入ったってわけではないですが、そのいくつか気に入った作品たちの破壊力が強力でした。草間さかえ先生という漫画家さんは、一度チェックしておいて損はないと思います、はい。
作品DATA
■著者:草間さかえ
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックスα
■掲載誌:flowers(2008年1月号~2009年9月号)
■全1巻
■価格:400円+税
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