このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] 2009.09.16
07149580.jpg愛本みずほ「だいすき!!―ゆずの子育て日記」(1)


子育ては
手間がかかればかかるほど
子供をかわいく思えるんだから



■10巻発売、ついに二ケタにのりました。
 軽度の知的障害を持ち、支援施設に通っている柚子。ある日、仕事仲間である草介が亡くなったとの知らせが入り、家族と一緒に病院へ。草介の遺体を見て、柚子は取り乱し、泣きわめく。そのまま気を失い、その場にいた医者に介抱されるが、その時に柚子の妊娠が判明。父親は、亡くなった草介だという。突然の出来事にショックを受けた家族は、もちろん出産には大反対。しかし柚子と草介が、心から愛し合い授かった命であることを知り、困難は覚悟で出産を受諾。こんなに深い、親子の愛があります。困難に負けずに、自分らしく真っ直ぐにいきていく柚子の姿を描いた、感動ストーリー!

 香里奈さん主演でドラマ化もされました、軽度の知的障害を持つヒロインが出産し、困難にも負けず懸命に育児をしていくというお話でございます。私はドラマから入ったのですが、香里奈さんが意外にも役にハマっていたので驚いたことを覚えています。あと平岡祐太はイイ男。原作はドラマとは違い、柚子の家族は皆元気。お父さんも健在です。知的障害を持った上で、子育てしていく難しさ(スキルの問題もあるし、世間的な逆風もある)に、真っ正面から向き合い、努めて明るく前向きに頑張る家族と柚子の姿を描いていきます。問題提起という側面は薄く、あくまで物語を作っていく上での企画でしかないわけですが、その分描かれる感情や問題は、私たちにも通じる非常に身近な部分。どう考えるかではなく、何を感じたかが重要なのであります。
 

だいすき!!
何の知識もない上に、飲み込みの遅い柚子には、周囲の人間の手厚いサポートが不可欠。しかも納得するように教えていかなくてはいけないので、大変。


 困難にぶち当たりまくる柚子ですが、その性格は常に前向きで、非常に明るいです。当然泣いたりワガママ言ったりもするのですが、それを引きずらないところが素敵。全体的に作品が明るい雰囲気になっているのは、この柚子の明るい性格に依るところが大きいのでしょう。周囲の人達はみな親切で、全力で彼女をサポートするわけですが、それは決して出来すぎた話というわけではなく、柚子がこういう性格だからこそ、みんなサポートしてあげたくなるんじゃないのかなぁ、という気がしてなりません。また「親子の愛」がテーマとして描かれているのですが、これはなにも柚子とひまわりだけに限ったことではなく、柚子とその母親に関しても同じ。子育てを通じて柚子はまた成長し、それを母親が支えることで、さらに二人の間の愛が深まっていくのです、きっと。
 
 私は子育てしたことないですが、子持ちの友人などを見ていると、知的障害を持っていようとなかろうと、子育てには周囲の人間の協力が必要不可欠なんだなぁ、と強く感じます。「知的障害者の子育て漫画」みたいに思われているかもしれませんが、核として描かれているのは、実は子育てでいちばん大切なことなのかもしれません。お涙頂戴上等、再三になりますが、どう考えるかではなく、どう感じたかが重要なのですじゃ。


【男性へのガイド】
→ノリそのものは女性向け漫画特有のそれ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→なんだかんだで読み進めてしまうし、面白い。ドラマも漫画も楽しんで観ておいて、お薦めしないわけにもいかないでしょう。


作品DATA
■著者:愛本みずほ
■出版社:講談社
■レーベル:KC BE・LOVE
■掲載誌:BE・LOVE
■既刊10巻

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「BE・LOVE」コメント (3)トラックバック(0)TOP▲
コメント

サポートしてくれる優しい方々がいるからこそ
前向きになれるのです。
サポートしてくださる方々がいなくて
悩みしかないと明るくしてられないし落ち込んでゆくだけ
手を差し延べて優しくしてくださる方々がいれば
初めは無理でも前向きになれてゆくはず
周囲の気持ちと自分の気持ちの問題です。
ツライこと嫌なことばかり続いたら気持ちが滅入ったりしないのですか?
何があっても泣かずに悩まずに元気なのは変です。
知的障害があっても悩むと思います。だけど知能が4才くらいだとしたら悩んでたけとを忘れケロッと次に進むかもしれません
From: 違う! * 2010/05/20 16:48 * URL * [Edit] *  top↑
私の妹は結婚していて2人の子供がいます。
《2才と5才です》
私は軽度の知的障害ありと判断されていますが妹に頼まれ1人で妹の子供を預かることがあります。
子供2人ともを預かることもありましたが
だいたい下の子を預かることが多いです。
たまに上の子を預かったりもあります。
どちらか1人を預かることが多いです。
私は軽度の知的障害ありと判断されているのに1人で妹の子供の面倒を見てイイのですか!危なくないのですか!危なかったことは一度もありませんが軽度の知的障害ありというのに!
From: 違う! * 2010/05/20 16:56 * URL * [Edit] *  top↑
確かに、サポートがあるからこそ前向きでいられるということがあるかもしれませんね。
貴重なご意見ありがとうございました。
From: いづき * 2010/05/20 19:03 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。