
…憧れも 尊敬もとびこえて
生まれてしまった
もっともっと大きな
大好きの気持ち
■アニメ化も決定!9巻発売しました。
陰気な見ためのせいで、何もしていないのに怖がられ、時には謝られてしまう女の子・黒沼爽子。アダ名はその名前もあり、「貞子」。けれど内面は、どちらかというと明るく、常に誰かの役に立ったいと思っている親切屋さん。そんな爽子には、憧れの人がいる。同じクラスの爽やか男子で、男子からも女子からも人気の、風早翔太。誤解されがちな爽子にも、分け隔て無く接してくれる彼に、爽子は尊敬の念を抱く。今までクラスに馴染めなかったけれど、彼の言葉で、何かが変わる気がした。そして本当に、少しずつ毎日が変わり始めて…!?
もう今更って感じでしょうが、これが当ブログの「君に届け」初登場なので、通常通り作品紹介を致します。もしかしたら続刊レビューを別であげるかもしれません。まぁそれはそれ、ということで。さて、では内容を。ヒロインは、その陰気な見ためにより、「霊感少女」「貞子」などと恐れられている、実は内面いたって普通の女子・黒沼爽子。幼い頃から避けられがちだった彼女は、そういった扱いにも慣れ、今ではそれをごく当たり前のように受け入れています。それでも姿勢は常に「誰かの役に立ちたい」。それを行動に移すことで、さらに誤解されることもあるのですが、それでも善を尽くす彼女の姿に、思わず感動&笑いが。そんな彼女の前に現れるのが、爽やかボーイ・風早翔太。誰とも分け隔てなく接する彼は、男女問わず大人気。彼の回りには常に人の輪が出来ています。そんな風早くん、当然爽子にも積極的に、そしてごく普通に接してきます。彼の言葉が、彼の存在が、クラスと爽子との間にあった壁を、少しずつ溶かしていく。ダークな見ためとは裏腹に、史上最もピュアホワイツな内面を持つヒロインが、ある男の子との出会いによって、少しずつ変わっていく様子を、ゆっくり丁寧に描き出していきます。

風早くんは、最初昔風味のヒーローにしようと思っていたのだが、気がつけば正義感が強いものの、我が強く、割と短気でちょっと照れ屋という、意外とどこにでもいそうな普通の男の子像になったのだとか。
「君に届け」は、恋愛と友情の2本軸。しかもどちらもド直球ピュアなもんだから、もうたまらないね、こりゃ。誤解されがちな貞子のことを、無条件で全承認する風早くん。この関係性に、まず悶えないわけがない。しかも爽子は、その差し伸べられた手に甘える事無く(鈍感さゆえですが)、それをきっかけに自分の力で立ち上がろうとします。「風早くんが優しくしてくれた、嬉しい!」で完結するのではなく、そこからさらに自分で何かやろうとする、その気質が、関係性が、なんとも素敵じゃないですか。1対1で完結しない関係性が、この作品に広がりを持たせる要因になっているんじゃないでしょうか。この二人の性格って、ホントに絶妙ですよね。ま、それが結果として9巻のような状況を招いているわけですが…。
さらに友情の描き出しも、また良いです。今までも友達はいることにはいた爽子。しかし、そこまで親しい友達はいませんでした。そんな中できた、大切な大切な友達の、ちずとあやね。最初は興味本位による、爽子の面倒を見る保護者というか飼い主のような関係性だったわけですが、いつしかお互いのことを思い泣けるような仲にまでなります。恋愛方面も好きですが、私は何よりこの友情描写は好き。相手のことを最大限思い、真っ直ぐにぶつかるこの子たちの行動に、言葉に、何度泣きそうになったことか。基本的にやっていること、言っていることはベタなんですよね。でも、それをしっかり成り立たせてしまう、爽子のピュアさ加減。前作「CRAZY FOR YOU」でもなかなか感動的な友情を描いてくれたのですが、「君に届け」はその比じゃない。多分それは、ヒロインである爽子のピュアさが、そうさせているんじゃないかな、と。こう言うと誤解を呼びそうですが、キャラ勝ちだと思います、はい。
なんか紹介になってないな。短評を書いておきます。まず軸となるのは、実にオーソドックスなピュア(ラブ?)ストーリー。それを色モノヒロインで回しているというもの。誤解されがちな前向きヒロインに、全く嫌味のない爽やか男子・風早くん、そこに、個性豊かな仲間たちが華を添えます。恋愛のみがメインというわけではなく、言うなれば、様々な人間関係の中での、ヒロイン爽子の成長を描いていくお話。ヒロインがヒロインだけに、話の展開は実にゆっくり。ただその分、丁寧に心情が描き出されています。懸念材料は、風早くんを受け入れられるかということ。そこで躓いてしまったらおしまいですかねぇ。
【男性へのガイド】
→男性でも読める少女マンガとしてよく名前が挙がる作品ですが、とりわけ少女漫画の中でも「男性向け」というわけではないと思います。作りはど真ん中でオーソドックスな少女漫画のそれで、逆に言えば「出来の良い少女漫画は、基本的に男性でも楽しめる」ということなんじゃないかな、と。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→もちろんオススメですよ。それだけです、はい。
作品DATA
■著者:椎名軽穂
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成17年9月号~連載中)
■既刊9巻
■購入する→Amazon