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Tag [続刊レビュー] 2009.09.20
作品紹介はこちら→菅野文「オトメン」



otomen.jpg菅野文「オトメン(乙男)」(9)


言いたくないことがあるのなら
俺は聞かないよ橘   
でもいつか…
教えてくれよな…



■ドラマも好調だったのかな?というわけで9巻発売です。ペース早いですよね。

 相変わらず横道に逸れまくりのストーリー。いや、そもそもどの道が本道だったのかすらよくわからないのですが、多分飛鳥と都塚さんの恋模様で合ってるはず。さて、その二人についてなのですが、9巻を読んでいて、もうこれで完成型でもいいんじゃないかな、という気がしてきました。
 
 この作品のテーマは、言うまでもなく「オトメン」なのですが、それはすなわち、「男らしさ」や「女らしさ」といった既存の枠組みから脱却して、「らしさ」に縛られない「自分らしさ」というものを追いかけていくこと、その大切さを説いているのだと思います。そんな中、「男らしさ」や「女らしさ」という概念に縛られ、苦しみ続けた飛鳥。彼にとって、何にも縛られること無く、ただひたすらに「自分らしさ」を貫く都塚さんの姿は、誰よりも輝いて映ったに違いありません。そんな、とことん「自分の道」を行く都塚さんと、晴れてお付き合いすることになった飛鳥ですが、その関係性は恋人というよりも、友達。読者としては、若干もの足りないという感じでしょうか。充太もそう思ってるよね、きっと。
 
 でもそれって結局、我々が既存の「恋人らしさ」という枠に、ふたりをはめ込もうとしているだけなんじゃないかな、と。実はもう、これでゴールなのかもしれないというか。実際7巻では、都塚さんは屈託のない笑顔で…


オトメン
お付き合い、させていただいてます


 と言っていますし。少なくとも都塚さんは、現状で満足していて、これ以上を求める道理はないわけで。それにこれはこれで、「二人らしさ」が出ていて、実にイイんじゃないかなぁ、と。さらに9巻では、こんなツーショットも…


オトメン2
もう、完璧じゃないですか!!これでいいじゃないですか!!
 

  …と言いたいところですが、飛鳥は純正オトメン。しかも、少女マンガ属性ということで、乙女チックでロマンチックなトキメキ展開を望んでいるに違いありません。今は充太に促されてそういった考えを持ったりしている状態ですが、放っておいても求めるようになるはずなのよ、これが。しかし、飛鳥が自ら動いていくとは到底思えません。そうなると、変化が必要になるのは、都塚さんのほう。現状に満足している人を動かすってのは至難のワザで、そうなった場合、ルートとして考えられるのは、ライバル出現による不満・嫉妬のセン。ラストに登場したオータン女史が、本気であろうとなかろうと、なにか都塚さんの心に嵐を起こしてくれないかなぁ、と。でも不満や嫉妬って、相手に多少なりとも執着していることが前提だから、その辺考えると、都塚さんて何に関しても執着とか無さそうだよなぁ。じゃあ別のライン?何にせよ、次の巻あたりで動きが出てくれないと、いい加減追いかけ続けるのはしんどいかも。

 9巻の見所は2つ。反オトメンの刺客として送りこまれた春日の手によって、充太=幸花ジュエルの正体がバレそうに!?という展開からの、友情描写。そして、反オトメンの刺客として送りこまれた春日の手によって迎え入れられた、異端教師4人組のうちの一人、ぶりっ子教師オータンによる、女子力アップ作戦という名の波乱。っていうか、また色モノキャラが4人も増えるという…大丈夫かな。あ、笑い成分は据え置きですので、その辺はご安心を~♪


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