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Tag [続刊レビュー] 2009.09.22
作品紹介はこちら→*新作レビュー*モリエサトシ「ラブシック」


07227197.jpgモリエサトシ「ラブシック」(2)


ボクらはそれぞれの病のために
ぬぐえない孤独を背負い
いつだって
愛に
焦がれているのだ



■2巻発売。なんというか、面白いけどもなかなか後味のスッキリしない作品でございます。1巻ではハル、アキ&フユの抱える病が明らかになりましたが、2巻では、ナツの病が明らかに。1巻ですでに明らかでしたが、基本的に“病”は現実にはありえないファンタジックなものが多く、あくまでも彼らの内面を浮き出させるものとして設定されているようです。ナツの病もまたセンセーショナルな症状。体温が高くなると、全身に模様が浮き出てしまい、さらに触れた人にその模様が移ってしまうというもの。この病の示す構図は実に簡単で、「愛されるため」に生まれてきたはずなのに、病のために「愛されなくなってしまう」という、アイデンティティ…というか存在理由の破壊。受け入れてもらえない事への苦しみというこの構図は、遠からず他の3人にも当てはまり、その病を癒す薬となるのが、ヒロインである色の存在、ひいては色の愛情になります。己の病・傷を癒す薬=愛をに焦がれる…だからLove Sick。

 白磁(→レビュー)と違い、こちらは恋愛などの心理描写以外での展開に見所があるのかな、と思っていたのですが、本筋となるべき色の理事長への復讐に関しては、遅々として進まず。どちらかというとメインを占めるのは、4人と色との関わりあいに関してで、一歩間違えばハーレム万歳という作品になりかねないという状況。これに関しては「白磁」も同じで、あちらは単に悲劇追求のラブロマンスになりかねないという危険性(なのか?)を孕んでいます。基本的に明るい作風ではないので、そういった状況になっても、味わいが同系の作品と異なるので楽しいんですが。つまり何を言いたいかというと、4人の病が明らかになり、その薬が全て同じ(色の愛)だと分かった時点で、一つ広がりを見せるチャンスを失ったよね、という。で、雰囲気は違えど行き着く所は色の争奪戦ということで、個人的にはこちらだけに楽しみを見出す事は難しくなったかなぁ。いや、単体だったら良いんですけど、同じような源泉の感情を、4人がそれぞれ繰り返すのが、個人的に重くて堪えられないというかね。
 
 ということで、残る復讐路線に期待したいのですが、心情描写が非常に丁寧な4人に対し、ヒロインに関してはそこまで深い心情描写がなされていないというのが、現時点での状況。掴みきれないヒロイン…彼女こそ、読者からの愛を必要としているのよ!なんて勝手に思ったり。いや、もう愛されているのかな。とりあえず恋心の芽生えと共に、ヒロインの魅力も増幅してくると思われ、3巻以降に期待という感じでしょうか。とりあえず、4人のなかで一番好きなのはハル。同時に、一番恥ずかしいのもハル。あ~、好きすぎて困る。
 
 それとフユのデレがいい加減見たいです。3巻では若干出ましたが、もっと…もっと欲しい。ストーリーは確実に動いています。それを、めくるめく4人の感情の中でどれだけ目立たせていけるか。試金石の3巻という感じで、今回は締め。なんか愚痴多め?いや、期待してるからこそなんですけどね、ごめんなさい。
 

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