
「さっきはありがとう」
「さっきはごめん」
でもなんかどっちも
よう言わんかった
■5巻発売、完結しました。
父・桜花亭春福を筆頭に、しっかり者の早春、頼りないけど優しい春々、人懐っこく人気者の白春の弟子3人、三味線弾きの母など、珠子の家には落語に夢中な者ばかり。家では毎日落語談義に花を咲かせ、外ではもちろん各々落語のお仕事をこなす日々。寝ても覚めても落語落語…そんなみんなを見て、珠子は「何がそんなにオモロいの?」と首を傾げるばかり。人情溢れるなにわ落語一家の、笑いの絶えない毎日をあなたにお届け!
落語家の娘・珠子視点で送られる、なにわの落語家人情コメディーです。ジャンルとしてはファミリーものが近いですかね。ま、内弟子とかなので血の繋がりがあるわけではないのですが。ヒロインは、落語家・桜花亭春福のひとり娘である珠子。落語家の娘ではあるものの、基本的に跡継ぎは男であるため、彼女は落語の世界とは切り離されて育ってきました。落語一筋の父に、芸達者な母、そして一緒に生活する内弟子たち…彼らが楽しそうに落語の話をしている中に、彼女は入っていけません。だからといってネガティブな感情で支配されているというわけではなく、ただ現在まで無関心であった、と。そしてある程度成長し、物心(と言っても大学生だけど)がついてきた事で、徐々に彼らの世界に触れていくように…。落語に生きる人情溢れる人々の関わりあいを、コミカルに優しく映し出します。

ありきたりではあるものの、“絆”という言葉がよく似合う。
人を笑わせる職業を描いているからかわかりませんが、基本的に明るく温かさに溢れた雰囲気で、非常に読み心地の良い作品に仕上がっております。なにわの落語家ということで、大阪弁が良いアクセントに。こういった作品は、流れがゆっくりになりすぎるきらいがあるのですが、大阪弁+どこかせっかちな面々ということで、実に丁度良いテンポ。その分反動で大感動…みたいな展開にはなりませんが、人情ものはこれくらいで丁度良いよね、という感じ。好きな人は好きだろうなぁ。
ヒロインが落語家の娘でありながら、そこまで落語に詳しくないというのが一つのポイント。スタート地点としてまず、「落語家」ではなく「人間」としての彼らへの印象というものがあり、だからこそお仕事ものにならず、上手い具合に人情ホームコメディになる、と。落語家に関する知識も、読者と一緒に学んでいく事ができるんですよね。この視点はなんだかんだで上手いです。人数もいい感じ。誰一人としてぞんざいな扱いになっておらず、みなキャラがたっています。
【男性へのガイド】
→ちょっと賑やかな人情ものがお好きな方はぜひ。ストーリーの起伏には乏しいですが、味わいのある作品になっております。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→上手いし、誰もが楽しんで読める親しみやすさもあるんじゃないかと。面白いというか、いいよね、という感じのなんとも温かい作品です。
作品DATA
■著者:逢坂みえこ
■出版社:集英社
■レーベル:QUEEN'S COMICS
■掲載誌:コーラス(2006年1月号~)
■全5巻
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