作品紹介はこちら→椎名軽穂「君に届け」
椎名軽穂「君に届け」(9)
何を迷っていたのかな
…言いたいことが
たくさんあるの
■9巻について簡単にレビューしようかな、と。
お世話になっているサイト様でも多く感想が書かれているので、そちらもどうぞ
ケントの登場により、状況をかき回されまくった爽子たち。さぞ読者の皆さんは「ケントうざっ」っとお思いのことでしょう。もちろん私も「余計なことしやがって…」なんて思いました。でもケントのあの行動は、あくまで善意のもと行われているんですよね。だからこそ、タチが悪い。くるみちゃんは明確な悪意で、ケントは悪意以外による障害。この使い分けは上手いなぁ、と。
▶ケントについて
嫌われ役を一手に引き受けることになったケントですが、そもそもやろうとしていたことは「爽子をクラスに溶け込ませたい」というもので、行動のベクトルとしては、風早くんやチズ&あやねと同じ。しかし結果としてここまで両者に差が出たのは、風早くんが爽子のことを同列以上として見ていたのに対し、ケントが爽子の事を、同列以下と捉えていたからではないのかな、という気がします。この意識の差が、こういった事態を引き起こした、と。でも実生活では、この「学校カースト」を意識しないなんて無理だと思うんですよね。このシチュエーションだと邪魔ですが、リアルであったとしたら、決して責められるような行動じゃないと思うんですよ。唯一責められていいと思うのは、その軽率さぐらいかな、と。特にくるみに対し「じゃーオレが貞子ちゃんとつきあったら、くるみ的によくね?」なんて言ったシーンは、ビンタされて然るべきだと思ったのです、はい。
▶爽子からの告白でないと、意味がない
風早くんの決死の告白に対し、「(風早くんが)誤解されちゃう」と、要らぬ気遣いをしてそのメッセージを受けとることのなかった爽子。その原因は、言うまでもなくその鈍感さにあるわけですが、それはイコールで、彼女の自己評価の低さを表しています。この9巻、特に爽子が風早くんに告白に向かう過程というのは、単に「好きだ」と伝える以上に、同じ目線に自力で上がっていくという儀式的な要素が強く含まれており、これが成功した時点で、この作品の当初のテーマは達成されたことになるのではないかな、という気がします。だからこそ「風早くんの告白でOK」となるのではなく、あくまで「爽子が告白」という過程を踏まなければいけないワケで、そこに向かわせるために椎名先生はかなり苦心しているのだろうなぁ、と。
▶爽子の精神矯正のための、脇役たちの涙ぐましいサポート
「爽子からの告白」=「爽子の鈍感さの矯正」という目的を達成するため、9巻ではとにかく脇役たちが頑張った。自己評価の低さが根深い爽子ですから、そう簡単に考えを変えることは出来ません。一度言っただけでは足りず、複数人が背中を押すような形になりました。
どうだ、このラインナップ!こうまでされて、やっと動き出した爽子。特に序盤4人の言葉は、なかなか厳しいものがあるように思うのですが、それに関しては爽子はダメージを受けていません。この時点でだいぶ成長しているのかな。とりあえず最後に背中を押す役目を果たしたのが、ケントで良かったな、という気持ち。
まぁこれは爽子レベルでの自分への卑下の感情を持っているからなんでしょうが、こういったことは別に私たちでも充分に起こりえるよね。億病で、自分の位置を守りたいがために、要らぬ気遣いをしてしまって、結局ダメになっちゃう。相手へのヘタな気遣いは、鈍感さの裏返しであって、そういった状況から脱却するには、これぐらいの精神矯正が必要なのよ、と。こういうことを言ってくれる友人がいれば幸せですが、そうでない場合はなかなか厳しいだろうなぁ。
てかラストのこの切り方はズルい…別マ買いたくてしょうがないじゃないですか(笑)集英社の商売上手っぷりに思わず拍手をしちゃいそうになりました。
■購入する→Amazon
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bk1

何を迷っていたのかな
…言いたいことが
たくさんあるの
■9巻について簡単にレビューしようかな、と。
お世話になっているサイト様でも多く感想が書かれているので、そちらもどうぞ
ケントの登場により、状況をかき回されまくった爽子たち。さぞ読者の皆さんは「ケントうざっ」っとお思いのことでしょう。もちろん私も「余計なことしやがって…」なんて思いました。でもケントのあの行動は、あくまで善意のもと行われているんですよね。だからこそ、タチが悪い。くるみちゃんは明確な悪意で、ケントは悪意以外による障害。この使い分けは上手いなぁ、と。
▶ケントについて
嫌われ役を一手に引き受けることになったケントですが、そもそもやろうとしていたことは「爽子をクラスに溶け込ませたい」というもので、行動のベクトルとしては、風早くんやチズ&あやねと同じ。しかし結果としてここまで両者に差が出たのは、風早くんが爽子のことを同列以上として見ていたのに対し、ケントが爽子の事を、同列以下と捉えていたからではないのかな、という気がします。この意識の差が、こういった事態を引き起こした、と。でも実生活では、この「学校カースト」を意識しないなんて無理だと思うんですよね。このシチュエーションだと邪魔ですが、リアルであったとしたら、決して責められるような行動じゃないと思うんですよ。唯一責められていいと思うのは、その軽率さぐらいかな、と。特にくるみに対し「じゃーオレが貞子ちゃんとつきあったら、くるみ的によくね?」なんて言ったシーンは、ビンタされて然るべきだと思ったのです、はい。
▶爽子からの告白でないと、意味がない
風早くんの決死の告白に対し、「(風早くんが)誤解されちゃう」と、要らぬ気遣いをしてそのメッセージを受けとることのなかった爽子。その原因は、言うまでもなくその鈍感さにあるわけですが、それはイコールで、彼女の自己評価の低さを表しています。この9巻、特に爽子が風早くんに告白に向かう過程というのは、単に「好きだ」と伝える以上に、同じ目線に自力で上がっていくという儀式的な要素が強く含まれており、これが成功した時点で、この作品の当初のテーマは達成されたことになるのではないかな、という気がします。だからこそ「風早くんの告白でOK」となるのではなく、あくまで「爽子が告白」という過程を踏まなければいけないワケで、そこに向かわせるために椎名先生はかなり苦心しているのだろうなぁ、と。
▶爽子の精神矯正のための、脇役たちの涙ぐましいサポート
「爽子からの告白」=「爽子の鈍感さの矯正」という目的を達成するため、9巻ではとにかく脇役たちが頑張った。自己評価の低さが根深い爽子ですから、そう簡単に考えを変えることは出来ません。一度言っただけでは足りず、複数人が背中を押すような形になりました。
ちず「鈍さに慣れるな!!」
あやね「爽子もあたしたちも風早も、違いなんて何もないんだよ……爽子自身が違いを感じければね」
くるみ「鈍感だからでしょ!!」
龍「多分 あんた 言葉足らず」
ピン「翔太なんかお前が思ってるよーな立派な人間じゃねーから!!」
ケント「今 貞子ちゃんを暗い顔にさせるのも、泣かせるのも、笑わせられるのも…風早なんでしょ?応援するよ、頑張んなよ」
あやね「爽子もあたしたちも風早も、違いなんて何もないんだよ……爽子自身が違いを感じければね」
くるみ「鈍感だからでしょ!!」
龍「多分 あんた 言葉足らず」
ピン「翔太なんかお前が思ってるよーな立派な人間じゃねーから!!」
ケント「今 貞子ちゃんを暗い顔にさせるのも、泣かせるのも、笑わせられるのも…風早なんでしょ?応援するよ、頑張んなよ」
どうだ、このラインナップ!こうまでされて、やっと動き出した爽子。特に序盤4人の言葉は、なかなか厳しいものがあるように思うのですが、それに関しては爽子はダメージを受けていません。この時点でだいぶ成長しているのかな。とりあえず最後に背中を押す役目を果たしたのが、ケントで良かったな、という気持ち。
まぁこれは爽子レベルでの自分への卑下の感情を持っているからなんでしょうが、こういったことは別に私たちでも充分に起こりえるよね。億病で、自分の位置を守りたいがために、要らぬ気遣いをしてしまって、結局ダメになっちゃう。相手へのヘタな気遣いは、鈍感さの裏返しであって、そういった状況から脱却するには、これぐらいの精神矯正が必要なのよ、と。こういうことを言ってくれる友人がいれば幸せですが、そうでない場合はなかなか厳しいだろうなぁ。
てかラストのこの切り方はズルい…別マ買いたくてしょうがないじゃないですか(笑)集英社の商売上手っぷりに思わず拍手をしちゃいそうになりました。
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