このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.09.26
07227362.jpg青木琴美「カノジョは嘘を愛しすぎてる」(1)


でも僕は
世界平和よりも
大きな愛よりも
這いつくばるような小さな歌を
まだ作っていたかった



■1~2巻同時発売です。
 チャート1位を獲得した、気鋭のバンド「クリュードプレイ」。ボーカルの瞬を筆頭に、そのビジュアルの良さと、サウンドのセンスの良さで人気急上昇中。そんなバンドの曲を作っているのが、アキ。デビュー前まではバンドでベースをしていたが、デビューが決まると同時に脱退。現在は裏方に徹している。アキに関するさまざまな噂が飛び交う中、彼はひたすら孤独に曲を作り続ける。そんな中、彼は一人の少女に出会う。クリュードプレイに憧れる女子高生・リコ。ほんの気まぐれで声をかけただけだった、けれど、この出会いが運命を変えた   
 
 裏表紙にあらまし紹介のない作品の場合、説明が難しくて困る。というわけで、青木琴美先生のCheese!移籍後の新作が堂々の登場でございます。「僕は妹に恋をする」、そしてスピンオフの「僕の初恋をキミに捧ぐ」を終え、さらに移籍を挟んでの新作ということで、青木先生にとってはこれが試金石といっても過言ではありません。そんな先生が選んだのは、音楽の世界でした。派手に活躍するクリュードプレイの元ベーシストで、作詞・作曲者のアキ。あくまでも小さな世界を歌いたいという一心で、表舞台には出ずに、裏から幼なじみのバンドメンバーを支えます。音楽の才能は超一流。そんな彼に目を付ける輩も当然おり、彼は大物プロデューサーの管理のもと、トップアーティストである茉莉という女性の曲も作っています。その彼女にアキは密かに想いを抱いているのですが、彼女は大物プロデューサーの女であり、その願いは叶いません。なんとなく鬱鬱とした毎日を送る中、街中で出会ったのが、普通の女子高生・リコ。なんとなく声をかけた流れで、そのまま付き合うことに。音楽家・アキではなく、普通の人間として付き合っていこうとするものの、リコもまた音楽の才に恵まれた少女であり、この出会いがさらに彼の運命を翻弄していくことになります。


カノジョは嘘を愛しすぎてる
今回も悩ましき青年が主人公。そのスタンスは一貫してますね。その中でどれだけ幅を見せられるか。


 少女マンガでありながら、描き出すのは悲運を背負った男子の悩ましき人生。過去を振り返る形式で物語が進むのも「僕の初恋をキミに捧ぐ」と一緒で、その辺は実に熟れていて読み手を惹き付けます。「僕は妹に恋をする」や「僕の初恋をキミに捧ぐ」と違い、恋愛プラス、ミュージックシーンでの生き様という部分が絡んでくるので、物語のレベルとしては一段階上か。落としどころは分からないものの、序盤から伏線が複数しかけられており、かなり読み応えはありそう。ややミーハーかな、とは思ったものの、決して安っぽいストーリーにはなっていません。なんだかんだで面白いです。

 少コミで音楽ものだと最近では、「ひとりぼっちはさみしくて」(→レビュー)、Cheese!だと「ラブ&ノイズ」(→レビュー)などがありますが、それに比べるとやっぱり物語は濃厚。設定に足るだけのストーリーが展開されています。問題は、これをどうやって落とすかというところ。前作の「僕の初恋をキミに捧ぐ」は、けっして褒められるようなラスト(というか、そこまでの過程が)ではなかったのですが、今回は果たして。あと全然関係ないですが、萌えポイントの少ない青木作品において、今回一番萌えてしまったのが、先生の自画像。妙にツボに…


青木琴美
青木先生自画像。こんな絵描けるなんて、カワイイに決まってる。


【男性へのガイド】
→青木琴美作品が男性に向くとは思えないんですが…。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→青木琴美先生の作品はどちらかというと苦手なのですが、これはオススメせざるを得ないです。なんて言うか、魅せ方を心得ている。「NANA」と比べたらかわいそうですが、それでも充分面白いです。


作品DATA
■著者:青木琴美
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheeese!(2009年5月~連載中)
■既刊2巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「Cheese!」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
コメント

青木先生、おばさんですよw
ファンブックに写真載ってますもん
帯裏の『年の差LOVE?!』が今一だったけど、
この作品意外といけるかも
From: 名無しさん * 2010/08/19 00:25 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。