
でも僕は
世界平和よりも
大きな愛よりも
這いつくばるような小さな歌を
まだ作っていたかった
■1~2巻同時発売です。
チャート1位を獲得した、気鋭のバンド「クリュードプレイ」。ボーカルの瞬を筆頭に、そのビジュアルの良さと、サウンドのセンスの良さで人気急上昇中。そんなバンドの曲を作っているのが、アキ。デビュー前まではバンドでベースをしていたが、デビューが決まると同時に脱退。現在は裏方に徹している。アキに関するさまざまな噂が飛び交う中、彼はひたすら孤独に曲を作り続ける。そんな中、彼は一人の少女に出会う。クリュードプレイに憧れる女子高生・リコ。ほんの気まぐれで声をかけただけだった、けれど、この出会いが運命を変えた
裏表紙にあらまし紹介のない作品の場合、説明が難しくて困る。というわけで、青木琴美先生のCheese!移籍後の新作が堂々の登場でございます。「僕は妹に恋をする」、そしてスピンオフの「僕の初恋をキミに捧ぐ」を終え、さらに移籍を挟んでの新作ということで、青木先生にとってはこれが試金石といっても過言ではありません。そんな先生が選んだのは、音楽の世界でした。派手に活躍するクリュードプレイの元ベーシストで、作詞・作曲者のアキ。あくまでも小さな世界を歌いたいという一心で、表舞台には出ずに、裏から幼なじみのバンドメンバーを支えます。音楽の才能は超一流。そんな彼に目を付ける輩も当然おり、彼は大物プロデューサーの管理のもと、トップアーティストである茉莉という女性の曲も作っています。その彼女にアキは密かに想いを抱いているのですが、彼女は大物プロデューサーの女であり、その願いは叶いません。なんとなく鬱鬱とした毎日を送る中、街中で出会ったのが、普通の女子高生・リコ。なんとなく声をかけた流れで、そのまま付き合うことに。音楽家・アキではなく、普通の人間として付き合っていこうとするものの、リコもまた音楽の才に恵まれた少女であり、この出会いがさらに彼の運命を翻弄していくことになります。

今回も悩ましき青年が主人公。そのスタンスは一貫してますね。その中でどれだけ幅を見せられるか。
少女マンガでありながら、描き出すのは悲運を背負った男子の悩ましき人生。過去を振り返る形式で物語が進むのも「僕の初恋をキミに捧ぐ」と一緒で、その辺は実に熟れていて読み手を惹き付けます。「僕は妹に恋をする」や「僕の初恋をキミに捧ぐ」と違い、恋愛プラス、ミュージックシーンでの生き様という部分が絡んでくるので、物語のレベルとしては一段階上か。落としどころは分からないものの、序盤から伏線が複数しかけられており、かなり読み応えはありそう。ややミーハーかな、とは思ったものの、決して安っぽいストーリーにはなっていません。なんだかんだで面白いです。
少コミで音楽ものだと最近では、「ひとりぼっちはさみしくて」(→レビュー)、Cheese!だと「ラブ&ノイズ」(→レビュー)などがありますが、それに比べるとやっぱり物語は濃厚。設定に足るだけのストーリーが展開されています。問題は、これをどうやって落とすかというところ。前作の「僕の初恋をキミに捧ぐ」は、けっして褒められるようなラスト(というか、そこまでの過程が)ではなかったのですが、今回は果たして。あと全然関係ないですが、萌えポイントの少ない青木作品において、今回一番萌えてしまったのが、先生の自画像。妙にツボに…

青木先生自画像。こんな絵描けるなんて、カワイイに決まってる。
【男性へのガイド】
→青木琴美作品が男性に向くとは思えないんですが…。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→青木琴美先生の作品はどちらかというと苦手なのですが、これはオススメせざるを得ないです。なんて言うか、魅せ方を心得ている。「NANA」と比べたらかわいそうですが、それでも充分面白いです。
作品DATA
■著者:青木琴美
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheeese!(2009年5月~連載中)
■既刊2巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon