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2009.09.29
07203845.jpg群青「橙星」(1)



私はあなたを好きになることに決めました
お母さんと同じやさしい緑色の瞳をもつあなたを



■3巻発売、完結しました。
 ここは「朔の国」。遠い昔、強大な力を持つ四人の魔女が封じられたと言われる幻の国。「四つ星」と言われるその魔女たちの墓を見つけたものは、どんな願いも叶えてもらえる…その伝承を信じ、中には外の世界からも命を懸けて「四つ星」を探しにこの国を目指す者もいるという。四つ星を封じこの国を統べる王様の宝物庫から逃げ出した少女・橙は、ある場所で、長きに渡り眠り続けた少年型のロボット・松葉と出会い、共に四つ星の魔女探しを始めるが…?

 完結しました。なんというか、取りようによっては難解なストーリーだったとしか。ま、とりあえずそれは置いておいて、作品の紹介を。物語の主人公となるのは2人。まずは、王様の宝物庫から逃げ出し、生命を持つ玩具・プランツペットの3匹と四つ星探しの旅をしている少女・橙。しわがれ声で、嬉しいと周囲に花を咲かせるという不思議な力を持った少女で、なぜ宝物庫に捉えられていたかも、なぜ四つ星を探すのかも秘密のままという状態。そんな彼女がある場所で、長きに渡り眠り続けている少年型ロボット・松葉に出会い、彼を目覚めさせます。製作者と同じ緑の瞳を持つ彼女に、松葉は「好きになることに決めた」と、なぜか一緒に旅をすることに。物好きの放浪人・南天のトラックに乗り、3人と3匹は四つ星探しの旅に出ます。


橙星
花を咲かせるという能力は、一見ファンシーな物語を想起させるが、ストーリー自体は決して明るくなく、この能力はいわば「おやすみプンプン」のキャラ描写のような効果があるのかも。


 テーマ…は何なのでしょうね。多分物語全体としての一貫したテーマというのは“願い”で、その願いはそれぞれに違う、と。それゆえに、幾重もの物語が重なりを持ち、結果として複雑な物語の様相を呈すのかな。表紙はもの凄くほんわかしていますが、登場人物の全てが、哀しき宿命や過去をもっており、ストーリーはやや重めです。だからこそ彼らの持つ“願い”はより強く輝きを放ち、物語に深みを持たせます。純粋に願いを追い求める者、旅の中で願いを見出す者、願いを胸の奥底にしまい込んでしまった者、そしてただひらすらに答えを待つ者。おとぎ話のようなハイファンタジーの中に、そういったスタンスの違いを落とし込みつつ、物語を展開、完結させました。なんだか漠然とした説明になってしまいましたが、難しいんですよね、うん。一部「エウレカセブン」っぽいかも、いや違うか?ホオヅキがアネモネっぽいんですよね。
 
 ここからは3巻の感想。とりあえず2巻終わりの状況から完結に持っていった努力は素直に評価したいです。正直3巻完結ということを聞いて不安だったのですが、いやいや、最後はしっかりある程度納得する形に持ってきました。ただひとつ残念だったのは、ラスト付近のバトルシーン。松葉の能力を考えると、そういった展開になることは予想できたのですが、ちょっと入り乱れすぎたのではないかな、という印象。描き分けが出来れば良かったのですが、バトルシーンはとにかく分かりにくかったというか、見にくかったです。序盤~中盤複雑にいったのだから、最後はシンプルに…とはいかないか。とはいえ最後は非常に気持ちの良い終わり方でした。なんだかんだで満足してるのかな、自分。


【男性へのガイド】
→男女はあまり関係ない気もしますが、こういうお話はやっぱり女性のほうがハマりやすいのかな。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→好きだけど、オススメにするにはちょっと…という感じ。1タイトル集中で追いかけるような読者にはうってつけではあるものの、複数タイトルを追いかけてるような人だと、ちょっと忘れちゃうし面倒くさいってなるかも。


作品DATA
■著者:群青
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(平成20年1月号~平成21年8月号)
■全3巻
■価格:各552円+税

■購入する→Amazonbk1

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