このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2009.10.08
32317608.jpg綾瀬マナ「がっかり観光地と呪いの投網」


本当に
人間は難しい生き物だね



■ここは「幽霊が見える」不思議スポット_かつかり村。その噂を聞きつけ、幽霊見たさにオカルト好きの観光客が訪れるが、来た人はみな「がっかり」して帰ってしまうという。その原因は、幽霊の見え方にある。怖いイメージとはほど遠く、みな姿がハッキリとしており、普通の人間と区別がつかない。それに加え、死んだことで様々な枷から解き放たれた彼らは、実に陽気。要するに、恐怖感ゼロなのだ。そんな「がっかり観光地」の観光センターで働く、真面目な性格の是光。観光地としてなんとか飛躍させたいものの、陽気できままな幽霊と所長に振り回され、今日もぐったり!?

 綾瀬マナ先生のデビュー作になります。舞台は幽霊がハッキリ見える「ガッカリ観光地」・かつかり村。恐いもの見たさで訪れる観光客たちは、そのあまりにハッキリとした姿と、ケセラセラな性格の幽霊たちにガッカリして帰っていくという状況。そんなかつかり村の観光センターで働くのが、きまじめな性格の是光さん。落ちに落ちた観光地としての評判を取り戻すため、日々奮闘中。ところがなかなか結果が出ません。というのも、最大の売りである幽霊たちは、みな勝手気ままで協力してくれないし、なによりセンターの所長がとことん呑気。そんな気ままな所長&幽霊に振り回される是光さんの様子を、にぎやかな雰囲気で描いていきます。


がっかり観光地
これだけ日常に溶け込んでいるため、区別はつかない。明るい性格なら幽霊…みたいな認識でも、決して間違いではない。


 表紙が非常に色鮮やかで、書店に並んでいてかなり目を引きました。購入しようか迷っていたのですが、表紙を見て即座に購入を決定。キャラの描き方なんかはびっけ先生っぽいですかね。さて内容なのですが、田舎の素朴な空気感をどこかに残しつつも、非常に個性的なキャラ達が好き放題に暴れ回るというかなり賑やかなものになっています。基本のラインはコメディですかね。明日発売になる岩本ナオ先生の「雨無村役場産業課兼観光係」を、もうちょっとビーズログ的にした感じ。

 最終的には「人と人の繋がり」みたいなところに落としてきます。ただそこに行く過程では、とくに捻った所もなく、ちょっとあっさりしすぎな印象も。ストレートに表現するなら、そこに行くまでになにか捻った方が面白いのですが、完全には遂行できなかったのかな、という感じ。でも新人さんですし、これからいくらでも工夫はできるのか。それにこのストレートさが逆に読みやすさを引き出している気もします。舞台が田舎だったからなのか、ありがちなドタバタコメディとは一線を画す印象。新人云々関係なく、結構楽しめました。次はどんなお話を描いてくるのか楽しみですね。表紙を見てテンションが上がり、中身を読んでガッカリ…という作品が多いのですが、この作品は決して「がっかり」することはありませんでした。


【男性へのガイド】
→男性キャラメインなあたりは、やっぱり女性こそが楽しめるのかな、と。ただお話自体はかなり素朴なところに落とすので、ストーリー的な読みやすさはあると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→インパクトには欠けたものの、物語としてしっかり形にしてきたあたりはさすが。楽しみな新人さんです。


作品DATA
■著者:綾瀬マナ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOGコミックス
■掲載誌:B's-LOG(2009年4月号~7月号)
■全1巻
■価格:620円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「B's LOG」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。