作品紹介はこちら→*新作レビュー* 西炯子「娚の一生」
西炯子「娚の一生」(2)
君の心のまん中に抜けへん固いトゲがある
それが何かは問題やない
ぼくはそれが抜けるのを待つ
けど
ぼくには君ほどたくさん時間はない
■なんだかんだで同居をすることになった海江田とつぐみ。親戚の前で堂々と「告白」をされて、つぐみの気持ちは揺れに揺れる。海江田は強くつぐみとの結婚を望むが、つぐみは彼の気持ちを素直に受け取れない。それでも少しずつ心を開いて…と思った所に、海江田を慕う秘書・西園寺さんが来襲。さらには見知らぬ子供まで…!?
今年の上半期新作オススメリストで2位に推した作品です。2巻になっても素晴らしい。もうね、最初に言っとくよ、コレ読まない人は損してるよ!なんて言ってみたものの、結構読み手を選びそうでもあるんだよなぁ…。強くお薦めするべきか迷うんだけど、でも面白いんだもの。
さて、1巻では海江田とつぐみ、1対1の状況から関係を構築していくというのがメインでした。こうすることで、各々の心情を深く静かに浮かび上がらせることができたわけですが、2巻では打って変わって、複数人との関わり合いの中から、2人の関係を描き出していきます。その先陣を切るのが、海江田に想いを寄せる美人秘書・西園寺。生粋のお嬢様で苦労知らずである彼女は、海江田に振り向いてもらおうと、つぐみにライバル心を燃やしながら積極果敢にアプローチを仕掛けます。守るものなど何もない、若さに溢れる恋。すでに50を過ぎた海江田に、女としては行き遅れになりつつあるつぐみとは、いわば対照的なキャラです。そんな彼女の“邪魔”に奮起したのは、つぐみではなく海江田。基本的には、海江田につぐみがひっぱられる(振り回される)という流れ。この関係性はこれから先も変化することはなさそうですね。でもちょっとやんちゃな初老の男性って、ちょっと萌えませんか?同時に自分を丸ごと包み込んでくれる包容力もあるわけで、素晴らしいですよね。

結果として2巻のメインになった、少年との日々。ここだけ抜き出すとほのぼの日常ものみたいですが、そこまで緩く温かいだけの関係ではない。各々思う所があり、その関係はほのかに緊張感を漂わせる。
さて、2巻の目玉とも言えるのは、西園寺さんではなく、なぜかつぐみの家に置き去りにされた5歳の少年の登場。海江田ともつぐみとも縁があるわけではなく、単に置き去りにされた子供という超展開。あまりに突然の展開に最初は驚いたものの(つぐみも、私も)、どうするわけにもいかず、親が見つかるまで預かることに。海江田と、つぐみと、少年。つぐみも早くに結婚していれば、このぐらいの子供がいてもおかしくなかったわけで、少年と過ごす日々を通して、家族というもの、結婚というものについて考えふけるようになります。ここで突然の疑似家族展開。しかもしっかりとその関係を描くものだから、ありえない展開でも自然と納得してしまうという。こういう話の運び方もあるのね、と感心。この状況が許されてしまうのは、舞台が田舎だからなんでしょうか。とにかく不思議な面白さがありました。
ラスト近くになると、つぐみも海江田に心を許しはじめます。完全に…ってわけじゃないですが。話の性質を考えるに、つぐみは「気持ちの整理がつき次第」、そして海江田は「状況の整理がつき次第」、終わりを迎えられるという感じですかね。だとしたら、長くてもあと2~3巻、上手く進めば次で終わりなんてことも全然ありえそう。この「ちょうどいい」感じが素晴らしい。3巻はどんな展開?とにかく楽しみでしょうがないです。

お互いを縛るものはそれぞれ違う。
帯には「恋に悩める女性たちに捧げます!!」なんて書いてありますが、つぐみを通して見えるものは、決して恋だけに限定されたものじゃなく、女としての一つの生き方みたいな部分も多分に含まれているのではないのかな、と思います(私男だけど)。その受け皿として、海江田さんがいる。その表面は、決して滑らかでやさしいものではないけれど、それがひどく心地よい。これ男性も、楽しめると思うんだけど、どうだろう。
■購入する→Amazon
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bk1

君の心のまん中に抜けへん固いトゲがある
それが何かは問題やない
ぼくはそれが抜けるのを待つ
けど
ぼくには君ほどたくさん時間はない
■なんだかんだで同居をすることになった海江田とつぐみ。親戚の前で堂々と「告白」をされて、つぐみの気持ちは揺れに揺れる。海江田は強くつぐみとの結婚を望むが、つぐみは彼の気持ちを素直に受け取れない。それでも少しずつ心を開いて…と思った所に、海江田を慕う秘書・西園寺さんが来襲。さらには見知らぬ子供まで…!?
今年の上半期新作オススメリストで2位に推した作品です。2巻になっても素晴らしい。もうね、最初に言っとくよ、コレ読まない人は損してるよ!なんて言ってみたものの、結構読み手を選びそうでもあるんだよなぁ…。強くお薦めするべきか迷うんだけど、でも面白いんだもの。
さて、1巻では海江田とつぐみ、1対1の状況から関係を構築していくというのがメインでした。こうすることで、各々の心情を深く静かに浮かび上がらせることができたわけですが、2巻では打って変わって、複数人との関わり合いの中から、2人の関係を描き出していきます。その先陣を切るのが、海江田に想いを寄せる美人秘書・西園寺。生粋のお嬢様で苦労知らずである彼女は、海江田に振り向いてもらおうと、つぐみにライバル心を燃やしながら積極果敢にアプローチを仕掛けます。守るものなど何もない、若さに溢れる恋。すでに50を過ぎた海江田に、女としては行き遅れになりつつあるつぐみとは、いわば対照的なキャラです。そんな彼女の“邪魔”に奮起したのは、つぐみではなく海江田。基本的には、海江田につぐみがひっぱられる(振り回される)という流れ。この関係性はこれから先も変化することはなさそうですね。でもちょっとやんちゃな初老の男性って、ちょっと萌えませんか?同時に自分を丸ごと包み込んでくれる包容力もあるわけで、素晴らしいですよね。

結果として2巻のメインになった、少年との日々。ここだけ抜き出すとほのぼの日常ものみたいですが、そこまで緩く温かいだけの関係ではない。各々思う所があり、その関係はほのかに緊張感を漂わせる。
さて、2巻の目玉とも言えるのは、西園寺さんではなく、なぜかつぐみの家に置き去りにされた5歳の少年の登場。海江田ともつぐみとも縁があるわけではなく、単に置き去りにされた子供という超展開。あまりに突然の展開に最初は驚いたものの(つぐみも、私も)、どうするわけにもいかず、親が見つかるまで預かることに。海江田と、つぐみと、少年。つぐみも早くに結婚していれば、このぐらいの子供がいてもおかしくなかったわけで、少年と過ごす日々を通して、家族というもの、結婚というものについて考えふけるようになります。ここで突然の疑似家族展開。しかもしっかりとその関係を描くものだから、ありえない展開でも自然と納得してしまうという。こういう話の運び方もあるのね、と感心。この状況が許されてしまうのは、舞台が田舎だからなんでしょうか。とにかく不思議な面白さがありました。
ラスト近くになると、つぐみも海江田に心を許しはじめます。完全に…ってわけじゃないですが。話の性質を考えるに、つぐみは「気持ちの整理がつき次第」、そして海江田は「状況の整理がつき次第」、終わりを迎えられるという感じですかね。だとしたら、長くてもあと2~3巻、上手く進めば次で終わりなんてことも全然ありえそう。この「ちょうどいい」感じが素晴らしい。3巻はどんな展開?とにかく楽しみでしょうがないです。

お互いを縛るものはそれぞれ違う。
帯には「恋に悩める女性たちに捧げます!!」なんて書いてありますが、つぐみを通して見えるものは、決して恋だけに限定されたものじゃなく、女としての一つの生き方みたいな部分も多分に含まれているのではないのかな、と思います(私男だけど)。その受け皿として、海江田さんがいる。その表面は、決して滑らかでやさしいものではないけれど、それがひどく心地よい。これ男性も、楽しめると思うんだけど、どうだろう。
■購入する→Amazon