作品紹介はこちら→*新作レビュー* ろびこ「となりの怪物くん」
2巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」2巻
ろびこ「となりの怪物くん」(3)
「答えは決まっているのに、期待させるだけさせるなんて
いちばんひどいことでしょう?」
「いいよ
そんなもん
俺が変えてやる」
■3巻発売!
ハルへの恋心をどうしていいのかわからず、逆に勉強最優先にしてその気持ちを封印した雫。一方のハルは、彼に密かに想いを寄せる大島さんの言葉を聞いて、ハッキリと雫への恋心を自覚する。あれれ、気がつけば、状況は反転?なかなか噛み合ない、2人の恋のベクトル。それでも少しずつ変化の兆しも…?そして訪れる、文化祭。またここでも一悶着起こる予感が…
衝撃の出会いから早9か月、気がつけば3巻ですか。もうね、大好きです。上半期新作ベスト1に選んだ、いや、選ばさせていただいた以上「オトコでも~」はこの作品を全力でプッシュし続けますよ!
さて、あらまし紹介にもあったように、気がつけば状況が逆になっているという、なんとも不思議な展開に。2巻では雫からの一方通行だった恋心は、3巻ではハルからの一方通行になってしまいました。ただ、「好きなのかわからない」というハルに対し、雫の場合は「好きだけど怖いから封じてしまおう」というベクトルですから、正確には逆とは言えないのか。でも状況だけ見れば、逆ですよね、うん。とりあえずヒロインである雫の気持ち次第なわけですが、コレに関連して、同じレギュラー女子キャラたちのそれぞれの内面の描かれ方に明確な差異があり、面白いと思ったので、今回はそれについて書いてみたいと思います。
~三者三様のスタンス~
このお話の女性レギュラーは3人。彼女たちに共通しているのは、友達がいないということ。その原因は様々であるものの、その事実だけは揺らぎません。そんな彼女たちが高校に入り、友達が出来、さらには好きな人ができる子もいた。そうすると、今まではなかった「他者とどう対峙していくか」という問題に直面することになります。その問題に対する3人の反応について…
▶雫
雫の場合、一番の相手となるのがハル。友達すら作らなかった彼女が、ハルという怪物と出会い友達になり、果ては恋までしてしまった。初めて経験する“人付き合い”というものに、彼女は戸惑いつつも目一杯考えて、自分なりの立ち振る舞いを選択していきます。彼女の場合、選択した行動は「今までの状態を堅守する」ことでした。最初は考えなしに「好きだ」などと言ってしまう彼女でしたが、やがて自分の心の変化に対応しきれずに、打って変わってその恋心を圧し殺すようになります。今まで勉強一筋でやってきた彼女にとっては、勉強・成績こそがアイデンティティ。失敗することもなく、成功体験のみが積み重ねられてきたもの(=勉強)の優先順位を落として、全くの未知の領域である恋というものにシフトしていくというのは、頭で考えがちな彼女にとっては想像以上に難しいことだったのだと思います。まぁ気持ちより理性が勝ったとも取ることができますが、なんとも彼女らしい選択ではありませんか。

あくまで自分の問題として解決を計ろうとする。ってこのコマの雫はちょっとかわいくないですね。鼻血だしたり食べこぼしてるとこなんか、最高にカワイイんですけど。
▶あさ子
彼女の最優先事項は恋ではなく友情。その類稀なルックスの良さから、言いよってくる男は後を絶たず。しかしそれが仇となり、同性からは嫌われてしまうという状況でした。しかしあさ子にもついに春が。高校に入り、雫とハルの隣という居場所を見つけるのです。そんな彼女は、自分の行動を意識する事無なく、ただただ素直に他者との関わりを求めるという立ち位置。彼女はとにかく他者との関係性=友情に飢えているんですよね。しかも「ああいったことがしたい…」という欲求が蓄積されていて、それが押さえきれずに噴出してしまう。相手のことなどお構いなしの、巻き込み型の欲求表現が多いです。それが、相手のことを考えた上で自分の行動の仕方を考える…となれば一転気配り上手になるのですが、頑固でアホな彼女には、まだまだそこまでのレベルに達するには時間がかかりそう。自分はそのままに、ただただ相手からの承認を求める姿は、どこか幼い子供を見ているようで、なんとも可愛い。個人的に一番好きなのは彼女ですね。デフォで敬語なところとか、たまらなくないですか?

自分ではどうすることもできない問題。あさ子の場合、気は相手に向いていることが多い。
▶大島さん
大島さんの場合。大島さんは、ハルに恋すると同時に、友達がいないことも悩み。そんな彼女は、ハルとの関わりによって、少しずつ自分を変えていこうと心に決めます。意識的に自分の感情をコントロールしようとする部分は雫と同じですが、雫が気持ちを圧し殺したのに対し、大島さんはどちらかというと積極的に出していく面が強い印象を受けます。そうやって自分の立ち位置を計ることで、他者との関係性を築いていこうという。とはいえそうそう簡単に変化できるものでもないですから、そのいつも必死な感じがとってもかわいいですよね。

おっとこれは失言。この作品でも一番の名言です。
▶まとめられるか…
3人の立ち位置は、例えば志向でいえば、雫は自分に向いた保守志向で、あさ子は他人に向いた変化志向、そして大島さんは自分に向いた変化志向という感じでしょうか。ハル争奪戦では、圧倒的優位にある雫が、ハルとの関係を調整しにかかり、一方断然不利の大島さんが気持ちを伝えようと奮闘するという状況が作られ、きっかけ次第で一波乱起こりそうな予感も。兎にも角にも、3人がそれぞれ違ったスタンスで道を進んでいることが、この作品の大きな魅力の一つになっていることは間違いありません。今日は取りあげなかったけど、ハルもね(ササヤンはわからんけど)。
「人生思うようにいかない事ばかりだ!」(松岡修造風)
人一倍不器用だからこそ、ぶつかる壁は多い彼らですが、だからこそ、どうしたって見守ってあげたくなるじゃないですか。やっぱりウチのブログ的2009年新作第1位は、この作品で揺るがない。そこのアナタ、まだ読んでないなら、是非手に取ってみてください。損はさせません。
~3巻の内容についても少しは触れないとね~
ちなみに3巻は、文化祭がメイン。今までちょい役だったキャラが、ここにきてちらほら存在感を放つようになってきています。その筆頭がヤマケン。あっという間にメインキャラになってしまいました。もしかして雫の事…という気もしなくはないですが、人一倍素直じゃないこいつが果たしてどこまでハルに対抗できるのやら…。ハルとヤマケンの対比も面白そうですね。またバッティングセンターのみっちゃん(グラサン)も、あさ子となんだかイイ感じに。とはいえ歳の差からかみっちゃんにその気は感じられず、またあさ子も男嫌いの気があるっぽいので、一筋縄ではいかないだろうなぁ…。しかもなんか影のありそうな反応だったし…。一応友情に関しては一段落した感じなので、これから進むのは雫の恋路(争奪戦?)、そんでもってあさ子の恋物語ってところなのかな。何にせよ楽しみ。とりあえずヤマケンの登場で、ササヤンの影が薄くならないことだけを祈っております。
■購入する→Amazon
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bk1
2巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」2巻

「答えは決まっているのに、期待させるだけさせるなんて
いちばんひどいことでしょう?」
「いいよ
そんなもん
俺が変えてやる」
■3巻発売!
ハルへの恋心をどうしていいのかわからず、逆に勉強最優先にしてその気持ちを封印した雫。一方のハルは、彼に密かに想いを寄せる大島さんの言葉を聞いて、ハッキリと雫への恋心を自覚する。あれれ、気がつけば、状況は反転?なかなか噛み合ない、2人の恋のベクトル。それでも少しずつ変化の兆しも…?そして訪れる、文化祭。またここでも一悶着起こる予感が…
衝撃の出会いから早9か月、気がつけば3巻ですか。もうね、大好きです。上半期新作ベスト1に選んだ、いや、選ばさせていただいた以上「オトコでも~」はこの作品を全力でプッシュし続けますよ!
さて、あらまし紹介にもあったように、気がつけば状況が逆になっているという、なんとも不思議な展開に。2巻では雫からの一方通行だった恋心は、3巻ではハルからの一方通行になってしまいました。ただ、「好きなのかわからない」というハルに対し、雫の場合は「好きだけど怖いから封じてしまおう」というベクトルですから、正確には逆とは言えないのか。でも状況だけ見れば、逆ですよね、うん。とりあえずヒロインである雫の気持ち次第なわけですが、コレに関連して、同じレギュラー女子キャラたちのそれぞれの内面の描かれ方に明確な差異があり、面白いと思ったので、今回はそれについて書いてみたいと思います。
~三者三様のスタンス~
このお話の女性レギュラーは3人。彼女たちに共通しているのは、友達がいないということ。その原因は様々であるものの、その事実だけは揺らぎません。そんな彼女たちが高校に入り、友達が出来、さらには好きな人ができる子もいた。そうすると、今まではなかった「他者とどう対峙していくか」という問題に直面することになります。その問題に対する3人の反応について…
▶雫
雫の場合、一番の相手となるのがハル。友達すら作らなかった彼女が、ハルという怪物と出会い友達になり、果ては恋までしてしまった。初めて経験する“人付き合い”というものに、彼女は戸惑いつつも目一杯考えて、自分なりの立ち振る舞いを選択していきます。彼女の場合、選択した行動は「今までの状態を堅守する」ことでした。最初は考えなしに「好きだ」などと言ってしまう彼女でしたが、やがて自分の心の変化に対応しきれずに、打って変わってその恋心を圧し殺すようになります。今まで勉強一筋でやってきた彼女にとっては、勉強・成績こそがアイデンティティ。失敗することもなく、成功体験のみが積み重ねられてきたもの(=勉強)の優先順位を落として、全くの未知の領域である恋というものにシフトしていくというのは、頭で考えがちな彼女にとっては想像以上に難しいことだったのだと思います。まぁ気持ちより理性が勝ったとも取ることができますが、なんとも彼女らしい選択ではありませんか。

あくまで自分の問題として解決を計ろうとする。ってこのコマの雫はちょっとかわいくないですね。鼻血だしたり食べこぼしてるとこなんか、最高にカワイイんですけど。
▶あさ子
彼女の最優先事項は恋ではなく友情。その類稀なルックスの良さから、言いよってくる男は後を絶たず。しかしそれが仇となり、同性からは嫌われてしまうという状況でした。しかしあさ子にもついに春が。高校に入り、雫とハルの隣という居場所を見つけるのです。そんな彼女は、自分の行動を意識する事無なく、ただただ素直に他者との関わりを求めるという立ち位置。彼女はとにかく他者との関係性=友情に飢えているんですよね。しかも「ああいったことがしたい…」という欲求が蓄積されていて、それが押さえきれずに噴出してしまう。相手のことなどお構いなしの、巻き込み型の欲求表現が多いです。それが、相手のことを考えた上で自分の行動の仕方を考える…となれば一転気配り上手になるのですが、頑固でアホな彼女には、まだまだそこまでのレベルに達するには時間がかかりそう。自分はそのままに、ただただ相手からの承認を求める姿は、どこか幼い子供を見ているようで、なんとも可愛い。個人的に一番好きなのは彼女ですね。デフォで敬語なところとか、たまらなくないですか?

自分ではどうすることもできない問題。あさ子の場合、気は相手に向いていることが多い。
▶大島さん
大島さんの場合。大島さんは、ハルに恋すると同時に、友達がいないことも悩み。そんな彼女は、ハルとの関わりによって、少しずつ自分を変えていこうと心に決めます。意識的に自分の感情をコントロールしようとする部分は雫と同じですが、雫が気持ちを圧し殺したのに対し、大島さんはどちらかというと積極的に出していく面が強い印象を受けます。そうやって自分の立ち位置を計ることで、他者との関係性を築いていこうという。とはいえそうそう簡単に変化できるものでもないですから、そのいつも必死な感じがとってもかわいいですよね。

おっとこれは失言。この作品でも一番の名言です。
▶まとめられるか…
3人の立ち位置は、例えば志向でいえば、雫は自分に向いた保守志向で、あさ子は他人に向いた変化志向、そして大島さんは自分に向いた変化志向という感じでしょうか。ハル争奪戦では、圧倒的優位にある雫が、ハルとの関係を調整しにかかり、一方断然不利の大島さんが気持ちを伝えようと奮闘するという状況が作られ、きっかけ次第で一波乱起こりそうな予感も。兎にも角にも、3人がそれぞれ違ったスタンスで道を進んでいることが、この作品の大きな魅力の一つになっていることは間違いありません。今日は取りあげなかったけど、ハルもね(ササヤンはわからんけど)。
「人生思うようにいかない事ばかりだ!」(松岡修造風)
人一倍不器用だからこそ、ぶつかる壁は多い彼らですが、だからこそ、どうしたって見守ってあげたくなるじゃないですか。やっぱりウチのブログ的2009年新作第1位は、この作品で揺るがない。そこのアナタ、まだ読んでないなら、是非手に取ってみてください。損はさせません。
~3巻の内容についても少しは触れないとね~
ちなみに3巻は、文化祭がメイン。今までちょい役だったキャラが、ここにきてちらほら存在感を放つようになってきています。その筆頭がヤマケン。あっという間にメインキャラになってしまいました。もしかして雫の事…という気もしなくはないですが、人一倍素直じゃないこいつが果たしてどこまでハルに対抗できるのやら…。ハルとヤマケンの対比も面白そうですね。またバッティングセンターのみっちゃん(グラサン)も、あさ子となんだかイイ感じに。とはいえ歳の差からかみっちゃんにその気は感じられず、またあさ子も男嫌いの気があるっぽいので、一筋縄ではいかないだろうなぁ…。しかもなんか影のありそうな反応だったし…。一応友情に関しては一段落した感じなので、これから進むのは雫の恋路(争奪戦?)、そんでもってあさ子の恋物語ってところなのかな。何にせよ楽しみ。とりあえずヤマケンの登場で、ササヤンの影が薄くならないことだけを祈っております。
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