
…期待が
期待がふくらんで
はじけそうだ
■秘密の恋をする女の子たちを描いた、オムニバスシリーズ。ということで、第1話をご紹介いたしましょう。
高校3年、秋。受験へ向かって毎日が加速する、そんな中、なんとも奇妙な秘密の習慣を続ける2人の男女がいた。授業をサボって教師と生徒の昼下がりの情事を覗く、主犯のマコと、その教師に想いを寄せる秀才の吉井。「こんなアホなことして青春が終わるなんて…」「もっと青春というものを謳歌しておきたかった…」そう思った2人は、それぞれが思い残したことを、一つ一つ形だけでも経験しておこうと動き出す。帰り道にアイスを食べる、お弁当を作って交換する、手をつなぐ、そして…
現在「となりの怪物くん」(→レビュー)を絶賛連載中のろびこ先生の、「秘密の恋」をテーマにした恋愛オムニバスシリーズです。それぞれの話に関連性はなく、独立しているので、読みきり集という区分けでもいいのかな。1巻と2巻、あわせて5話が収録されているのですが、どれもろびこ先生らしく普通のテイストとは一味違った物語となっています。主人公はみな高校生。当たり前ですが現状にどこか不満を持っている少女たちがヒロインとなっています。

1話目「タイムリミット」。時間が迫っているという切迫感と、それとは裏腹に上がってこない気分、さらに肝心なことを「賭け」という外部要因に託してしまう弱さとか、どれもがやけにリアル。物語に入り込まざるを得なかったです、ハイ。
「秘密の恋」がテーマになっているのですが、1巻と2巻では「秘密」のテイストが若干異なります。1話目は、あらまし紹介にもあるように、とある場所で一緒に授業をさぼり、教師と生徒の情事を覗くという秘密を共有しています。また2話目では、レンタルビデオ屋にケータイを忘れたことがきっかけで、夜毎に公衆電話から電話をかけて、会話を楽しむという関係(秘密は、取りにいけないと言いつつ実は毎日店に通っているというもの)。そして3話目は、恋のジンクスを成就させるための作業を一緒に行うという秘密を共有します。それに対して4話目は、教師と生徒の恋愛というわかりやすい秘密。そして5話目も、血は繋がってはいないものの、姉弟で想いあってしまうという禁断の恋がテーマ。1~3話目は、秘密そのものが楽しさやときめきをもたらすポジティブな要素として使われているのに対し、4~5話目の秘密は、どちらかというとネガティブな、いわば「枷」として存在しています。どちらが優れてるとは言わないものの、やっぱり共有する秘密は楽しいほうが個人的には好き。またスタートがそういった方向性だったので、4・5話目には若干の違和感を感じたというのが正直なところ。でも面白いですよ、はい。
そういう意味で、2巻で最も「ひみこい」的だったのは、4話目でも5話目でもなく、同時収録されている「ふたりのカクレガ」なのかもしれません。もう“カクレガ”ってワードだけで、ワクワク感がアップですよ。ストーリー自体はB級恋愛映画のようなベタな流れなのですが、ややズレたキャラが織り成す独特のリズム感がなんとも心地よく、しっかりとろびこ色になっております。うん、ラストがこの話でよかった。
【男性へのガイド】
→女の子のほうが好むであろうストーリーが多いです。ただ甘さ控えめなので、他の作者さんの作品に比べると読みやすいかな。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ろびこ先生は面白いです、好きです。骨組みから変えることもあれば、ベタな骨格の話を肉付けで個性的にすることもできる、この自在性。上質読みきり集として、ひとつ。
作品DATA
■著者:ろびこ
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:デザート(平成20年2月号~8月号)
■全2巻
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