中村世子「ニブンノワン!王子」(1)
あぁ どうしましょう
今頃お姫様の気持ちが分かりました
大好きです 王子様■王子様が選ぶのは、キレイでカワイイお姫様。キレイでもカワイクもない私は、もし仮に王子様がいたとしても、選ばれることはないのだろうな…そう思っていた平凡な女子高生・月子の目の前に現れたのは、ビジュアル系バンドのメンバーのような風貌の青年。花嫁を探しに、異世界からやって来たのだと言う彼は、半人半犬というフシギ体質の王子様。彼のブレスレットを拾い、あげく紛失させてしまったばっかりに、月子はその王子様・ジンの婚約者になってしまう!あまりに現実離れした出来事に戸惑い、頑にジンを拒む月子だったが、やがて彼の誠実さに、彼女の心は溶かされて…!?
異世界からやってきた王子様の婚約者に選ばれてしまうヒロイン。しかし彼女は、王子様なんか信じない頑な心の持ち主で、さらに王子は半人半犬という特異体質の持ち主だった…という内容のラブファンタジーです。序盤の展開の早さ(出会い→婚約者探ししてるけど、探すのに必要なブレスレットが見つからない→なくしたのは月子だから、見つかるまでウチで暮らしてくださいな)は、花ゆめというよりも、むしろなかよしっぽさを感じます。
満天国の王子・ジンは、「異世界にてブレスレットを最初に拾い、腕にはめた者と結婚する」という習わしによって、地球は日本へやってきます。そんな中、最初にブレスレットを拾うのが月子なのですが、あろうことか彼女はブレスレットをはめる事無くどこかへ紛失してしまいます。その責任を取るために月子は一緒にブレスレットを探すのですが、その過程でお互い信頼しあうようになり、やがて婚約者にされてしまいます。結局ブレスレットは出てくるのですが、月子の姉の不注意で、そのブレスレットを飼い犬の首にはめてしまいます。そのため、「人間以外にブレスレットをつけてしまった場合は、しばらく国に帰ってはならない」という満天国の習わしによって、ジンは帰国不可能に。そのためジンは、月子の姉の計らいによって、彼女たちの家でしばしの間一緒に暮らすようになります。

自己評価が低いヒロイン・月子。コンプレックスごと、ジンは彼女を受け止め、また月子も、彼との触れ合いを通して、お互いの持つコンプレックスを融解していく。この関係がなんとも言えない。
ファンタジックな要素をふんだんに盛り込んだ、現代版シンデレラストーリーです。単に王子様に選ばれて嬉しいというお話ではなく、王子・ジンとヒロイン・月子双方にコンプレックスを用意し、その克服の過程を同時に描いていきます。ヒロイン・月子は、優しくて可愛くてモテモテの姉に対し、地味で意固地な自分にコンプレックスを抱いています。また王子・ジンも、半人半犬(満天国の国民は犬型だが、王族は人型)であるということにコンプレックスに苦しめられています。花ゆめレーベルは前向きな性格のヒロインが多いのですが、ここまでネガ…というかクヨクヨするヒロインは、少し珍しい気がします。それが高屋奈月レベルまで行くと、重すぎてどうにもならないのですが、こちらはテンポの良いコメディが基礎となっているので、いい塩梅に楽しむことができます。またジンが常にイケメン青年の姿をしているのではなく、ややブサのワンコになるあたりも、耽美な方向に流れて行きそうな雰囲気を、上手い具合に緩和しているのかも。
コンプレックスのせいで、王子になりきれない王子と、姫になりきれないヒロイン。そんな不器用な二人が、どこまでも愛くるしい。恐らく読切りスタートの作品。1話目にしてカップル成立、紛失したブレスレットも近くにあるなど、よほど人気が出ない限りあと1~2巻で完結という感じでしょうか。その辺も考慮して、オススメでいこうかな。こういうヒロインは、個人的に大好き。なんとも微笑ましいラブロマンスです。
【男性へのガイド】→シンデレラストーリーですが、上手い具合にくだけているので、男性にもそれなりに読めるつくりになっていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】→ストーリー自体は凡庸も、キャラ設定を上手に使い、しっかりと読める作品に仕上げている。こういうヒロインは個人的に大好き。不器用な二人の行く末を、最後まで見届けてあげたいと思いました。
作品DATA■著者:中村世子
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:ザ花とゆめ(4月1日号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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