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Tag [名作ライブラリ] 2009.10.21
07085951.jpg羽柴麻央「月と太陽が出逢う日」


無邪気に天使の話をする明生は
かわいいと思う
でも
明生が天使の話をする度思い知らされる
あたしは明生がすきなんだって



■読切り3編を収録。では表題作をご紹介。
 小学生の時から転校ばかりだったちはるは、今日から始まる高校生活に、なんの期待もしていない…いや、していなかった。この街に引っ越して早々出会い、ずっと気になっていた「5丁目のパン屋の青木ちゃん」が、同じクラスにいたのだ。いつも笑顔で楽しそうなあおきちゃんと、いつも無表情でクールなちはる。何の期待もしていなかった学校生活が、彼との出会いによって、少しずつ輝きはじめて…!?

 先週末に実家に帰っていたので、何かちょい昔の作品をレビューしようかと思ったのですが、長編作品は難しいのよね。ということで、数少ない1巻完結作品から、羽柴麻央先生の読切り集をチョイス。まぁそんな昔の作品ではないけれども…。羽柴先生といえば、「イロドリミドリ」(→レビュー)や「私日和」(→レビュー)など、恋愛だけに留まらず、友情や兄弟愛など幅広い感情を瑞々しく描き出し、上質の読切り作品を送り込んでいる作家さん。この「月と太陽が出逢う日」は、先生の2001年の作品で、3編すべてが、望み薄の恋を抱えている女子高生がヒロインとなっています。


月と太陽が出逢う日
どこまでも瑞々しく、切ない。


 表題作「月と太陽が出逢う日」は、転校の繰り返しによってどこか醒めた性格のヒロインが、入学先の高校で、まるで正反対の性格の気になる男の子に再会し、高校生活を楽しむようになるというお話。ただその男の子には好きな人がいて、ヒロインは表情には出さないものの、絶望にくれます。続く「告白物語」は、中学からずっと想い続けた相手に告白しようとデートに誘うものの、そこで相手から「友達に告白されそうになったら逃げる」とい衝撃の一言を聞いて怖じ気づいてしまうというお話。ラストの「アネモネ」は、好きな相手が自分の親友とつき合っていたものの、突然別れたと聞いたものだから、自分の気持ちとは裏腹に、おせっかいにも復縁に走ってしまうというもの。どのヒロインも絶望や諦めといったラインに立つのですが、その心情の描写が、今も昔も変わらず上手い。モノローグをここぞというときに組み込み、切なさを増幅させます。
 
 どのお話もラストはしっかりハッピーエンド。今の羽柴先生ならば、ハッピーエンド以外の結末も用意しそうなものですが、これはこれで作者さん自身の変化を感じられて良い。変化といえば、絵柄も若干変化してます。羽柴先生の絵って独特なので、そんなに変化していない印象があったのですが、比べるとやっぱり変化しているものなのですね。それとAmazon!お前作品名間違ってんぞ!最近ウカれてんじゃねーのか?チャラチャラしてんじゃねーのか?質実剛健!!なんて言いつつ、私も誤字脱字が多いので、他人の振り見てなんとやらってことですよね、はは…。


【男性へのガイド】
→恋愛シフトでかつハッピーエンドと、男性が好む要素はどうだろうか。ただ切なさ成分も多めですので、そういったお話が好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→「告白物語」が一番好き。他の2つも面白いのですが、ちょっと都合良すぎる気もするなぁ、と。多分今の作品を比べちゃってるんでしょうね、無意識に。いや、オススメにはしませんが、十分面白い作品集だと思いますよ。


作品DATA
■著者:羽柴麻央
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:デラックスマーガレット(平成13年7月号),別冊マーガレット(平成13年4月号),別マスペシャル(平成13年お正月増刊)
■全1巻
■価格:390円+税

■購入する→Amazonbk1

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