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Tag [新作レビュー] 2009.10.23
07228820.jpg小島美帆子「Peach Sisters」(1)


   あたしは あたしだもん
   自分に
正直に生きる



■普通の女子高生・俚緒の妹・結衣は、女性ファッション誌「ピーチティーン」の人気モデルをしている。可愛くて人気の妹は、姉の俚緒にとっても自慢の存在。ちょっとワガママな結衣の要求も、自慢の妹の頼みだからといつも呑んできた。けれど、隣にイケメン兄弟が引っ越して来たことで、その関係が崩れ去ることになる。デートの約束を取り付けてもらおうと妹の結衣は頼んだのだが、俚緒はあえなく断られてしまい、それを結衣が強く叱責したことで、俚緒の不満が噴出。史上最凶の姉妹バトルが勃発してしまい…!?

 人気ファッション誌の舞台裏で繰り広げられる、姉妹の壮絶バトルを描いた作品でございます。ヒロインは、人気モデルを妹に持つ普通の女子高生・俚緒。昔からモデルに憧れていて、オーディションを受ける際に妹を誘ったところ、妹のみが合格。以来モデルの夢を諦め、妹を通して憧れを追いかけようとします。そんな妹・結衣は、そんな姉の気持ちを知ってか、いつもワガママな要求を姉にして、困らせています。「買い物に行って来て」などは日常茶飯事、果ては好みのイケメンを見つけては、姉にデートの誘いを代行してもらうなど、お姫様状態。そんな彼女が次に目をつけたイケメンが、広島から隣に越して来た桜井兄弟。愛嬌があって言いたいことはずばっと言う弟・星と、優しく落ち着いた雰囲気の兄・光。4人はすぐに仲良くなるものの、いざ俚緒が結衣の代わりにデートを申し込むと、双方からNOの返事をもらってしまいます。そのことが原因となりお互いの不満が噴出、今までになかったほどの険悪な関係に陥ってしまいます。


PeachSisters.jpg
幼さは残っているものの、ヒロインにふさわしい真っ直ぐさも持っている。


 そんな2人を見て、隣のイケメンの兄のほう・光は「俚緒もモデルになって対抗すれば」というアドバイスをします。それに感化された俚緒は再びモデルを目指し、妹と同じ雑誌のオーディションに見事合格。姉妹喧嘩の舞台は、ファッション誌でのモデル活動に移っていきます。
 
 険悪姉妹バトルなのですが、それを助長しているのがイケメン兄弟の兄のほう・光。一見親切で優しい青年を装っているものの、その内面は歪んでおり、水面下で近くの人を困らせた上で助け舟を出し、感謝されることに快感を覚えるという変態さん。喧嘩をする2人の間に入り、双方を応援しているように見せかけ、その実巧妙に関係がギクシャクするように仕掛けています。そんな兄に対し、弟は田舎で育った純白少年を絵に描いたようなイノセンスさを持っています。こちらはそれぞれの関係を考慮するなんてことは出来ず、思ったことを言うという明快な性格。ゆくゆくはこの4人で恋愛関係云々なんてことになるのでしょうが、現時点で素敵な性格を持っているのが弟の星だけと、前途多難な気も。

 なんというか悪意成分が多いですね、少女漫画にしては。ただどういった狙いでのバトルなのかが明確にはわからないので、設定の割に印象に残らなかったというのが正直なところ。一条ゆかりの「プライド」をスケールダウンさせた感じ?お仕事ものとしてバトルを展開したいのか、男女関係をメインに据えて展開したいのか…うーん、どっちなのだろう。最終的にどういう方向に行くのかはわからないですが、1巻了読時点での印象は、「青年誌のお仕事(出世)もの」。当たり前と言えば当たり前ですが、少女漫画的な爽やかさは一切ないです。


【男性へのガイド】
→女のバトルというか、女子のバトル。その違いを踏まえた上で、大丈夫という方は。
【私的お薦め度:☆☆   】
→結局何をしたいのかがよくわからないというか。雰囲気がいいわけでもないですし。ただこれをどうやってまとめるのかは、スゴく気になります。


作品DATA
■著者:小島美帆子
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成21年4月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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