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Tag [続刊レビュー] 2009.10.24
作品紹介はこちら→いくえみ綾「潔く柔く」


07228822.jpgいくえみ綾「潔く柔く」(11)


罪悪感は
どうやったらなくなるの?



■11巻発売です。
 ハルタとの過去を、古屋と百加から禄に話されてしまったカンナ。そのことを百加から聞き、なぜ禄は何も知らないフリをして自分と話していたのか、どこか釈然としない想いを抱えることになる。そして再び禄から誘われ、飲みにいったカンナは、禄から思わぬ過去を聞かされ…

 そろそろラストに近づいていますかね。10巻からのテーマは、カンナの心の奥底に残る“しこり”について。その正体を明かし、融解する役目を結果として請け負うことになったのは、もう一人の主人公である(と思っている)禄でした。お互いに“近しい者の死”という過去を背負っており、そうとは知らずに自然と近づいてしまった二人。12巻ではいよいよお互いの過去を知り合い、カンナの心にある“しこり”に近づいていきます。
 

~しこりの正体~
 禄の発する言葉がいちいち心にささるカンナでしたが、一番心に刺さり、最終的には自分までも使うようになったフレーズがひとつあります。それが“罪悪感”という言葉。
 

 『罪悪感でいっぱいって顔だね
  そいつのこと好きになってやれなかったから、後悔してるんだろ?』


 後悔、罪悪感。あの夏あの日、ハルタへ言えなかった言葉が、頭の中をぐるぐる回り、カンナを苦しめます。
 
 
 『うん 走ろう 2人で どこまでも』


 「好きになってやれなかった」でも「好きといってやれなかった」でも、正解。どちらにせよ、迎えた結果は同じでした。以来、罪悪感を明確に意識しながら日々を過ごすことになるのですが、同じような過去を持ちながら、飄々と生きているように見せる禄に、カンナは今までとは違う興味を持つようになります。


~ラストへ向けて、舞台は整いつつある?~
 これから先はネタバレになるので言えないのですが、同じような過去を抱えながら、一歩先を行く禄に、カンナは希望の光を見たんじゃないでしょうか。でも素直に行けないのは、ツンデレということで(笑)最終的にはこの2人がくっついてお終いなのでしょうが…というか、禄じゃなきゃカンナは救えないと思う。とはいえそこまでいくにはまだまだ様々な障壁が(心の面でね)。12巻では、ラストへ向けての舞台を整えるように、今までの登場人物たちが大集合してきます。その様子を見てカンナは思わず…
 
 (何 この 同窓会状態)
 
 なんて台詞を(笑)そうですか、朝美まで登場させますか…。あと小峰清正がものすごく普通の青年になっていて驚き。むっちゃサラリーマンじゃないですか。それと一恵とはまだ続いてたんですね。この2人は暗くなりがちなこの作品の中にあって、唯一と言っていいほど、明るさを与えてくれる存在なので、大好き。独特のエネルギーみたいなものを持っていますよね。さて一番の見所となりそうなのが、朝見との関係について。うーん、お互いに会わないままってのが一番だと思ってたのですが、ここにきて大きな壁を…。それが結果的に禄とカンナの仲を深める方向に働いたりすればうれしいのですが、そこまで上手く事は運ばないだろうしなぁ。どうなることやら。

 なんだかまとまりのない感想になってしまいましたが、いいのです。最後になれば、しっかりと物語が完成しているであろうし、こちらの感想も完結したときにしっかり…できればいいですけど…。


■作者他作品レビュー
いくえみ綾「いとしのニーナ」



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